びんちょうタンから、小さな幸せをおすそ分けしてもらいました:「びんちょうタン しあわせ暦」レビュー(1/2 ページ)
カルトな人気を博しているキャラクター“びんちょうタン”がついにゲーム化。その独特の世界を楽しめる本作は、新たな癒し系ソフトと言えなくもなさそうだ。というわけで、古き良き日本っぽい雰囲気を楽しんでみました。
そもそもびんちょうタンとは何なのだ?
数年前からコアな人気を博しているキャラクター“びんちょうタン”が、このたびついにゲーム化された。TVアニメ化もされた作品だが、個人的にはまだまだ知名度は低いと思われる。そこで、まずは“びんちょうタン”について解説していこう。
そもそもびんちょうタンとは、ゲームメーカー・アルケミストの公式サイトで生まれたマスコットキャラクターだ。高級炭として有名な備長炭を擬人化したその外観は、かわいい白装束の女の子が、頭に備長炭をくくりつけているというもの。当初は、ミネラルウォーターの中に入って水をおいしくしたり、炊飯ジャーに入ってご飯を美味しく炊きあげたりと、備長炭らしい仕事をこなしていたのである。
その後、気がつけばストーリーや生い立ちといった設定も作成され、どんどん人気が高まっていった。付随するように、新たな仲間である“ちくタン”や“クヌギたん”といった、炭に関する擬人化キャラクターの仲間が次々と生み出され、確固たる作品へと進化していったのだ。
外見はいわゆる“萌えキャラ”であるが、和歌山県のみなべ川森林組合のマスコットキャラクターに採用されるなど、結構大きな話題を呼んだ。その後も人気は続き、2006年には待望のアニメ化が実現し、そしてこのたびゲーム化と相成ったのである。
びんちょうタンは、なぜにこんなに人気を博したのだろうか。筆者としては、そのかわいらしさとは裏腹に、とんでもなくツライ生活をおくっている設定だと思うのだ。
まず、びんちょうタンには家族がいない。ひっそりとした山の中の一軒家で、1人で暮らしているのだ。日々、山を下りて町で仕事を行い、お米をもらって生活しているのである。仕事をこなして家に帰る途中、転んでお米をこぼしてしまったり、町のおもちゃ屋で大好きな“プカシュー”(作品中で大人気のアニメキャラクター。びんちょうタンも大好き)のぬいぐるみを眺めたりして、日々を暮らしている。なんというか、母性本能をくすぐる設定やストーリーがてんこ盛りなのだ。本作のファンは、びんちょうタンが幸せに暮らしていくことを願ってやまないのである。
というわけで、やっと本題。本作は、そんなびんちょうタンの生活をかいま見れるゲームなのだ。
プレーヤーの立場は足長おじさん?
本作は、びんちょうタンの暮らしを1年間眺めるゲームだ。ゲーム中に登場する他のキャラクターと仲良くなり、多数用意されたエンディングを見ることが、ひとまずの目標であろう。
本作の大きな特徴は、びんちょうタンが勝手に行動するということだ。プレーヤーは“足長おじさん”的な立場からびんちょうタンの生活を見守ることとなる。ゲーム中は、カーソルで画面内のポイントをクリックしてびんちょうタンに興味を向けさせ、さまざまなイベントを発生させていく仕組みだ。
なお、ゲーム中には“あしながポイント”というポイントが設定されており、クリックするときに1ポイントずつ消費されていく。何もないところを選んでもポイントは減るため、無駄な行動はできるだけ避けたいところだが、ポイントを入手できるチャンスは山のようにあるため、さほど神経質になる必要はないだろう。
1日は、朝とそれ以降の2つのパートに大きく分けられる。起床時間は午前6時だが、びんちょうタンはまだ寝ているため、びんちょうタンをクリックして目覚めさせるのだ。目覚めたびんちょうタンは居間へ移動するので、今度は水桶をクリックすると、びんちょうタンは歯を磨くのだ。お米が入った一升瓶をクリックすれば、ご飯を炊いて朝食を食べる……という具合で、画面上にあるポイントをクリックしてゲームを進めていくのだ。ちなみにゲームはリアルタイムで進行するため、何も操作しなければ、どんどん時間が経過していき、場合によってはご飯を食べ損なうこともある。
朝のパートに限ったことではないが、本作の一番の見所は、歯を磨いたりご飯を食べたりといったアクションのかわいさであろう。3Dゲームがすっかり主流を占める昨今のゲーム市場だが、本作はすべてドット絵で描かれているため、原作の雰囲気そのままで動きまくるびんちょうタンを楽しめるのだ。アニメパターンも豊富で、かつアクションが非常に膨大なため、びんちょうタンファンであれば、生活を見ているだけで楽しい。
例えばご飯を食べるところ。囲炉裏の横のポイントをクリックすると、びんちょうタンは囲炉裏に炭をくべて火をおこす。その後、部屋の奥にあるお米の入った一升瓶を手にし、瓶の中に棒を突き刺してご飯を精米し、囲炉裏に鍋をくべてご飯を炊く。炊きあがったら、幸せそうにご飯をほおばる……というように、一連の流れがかなり細かいアニメーションで再現されているのだ。ご飯を食べることにかなりこだわっているのは、ファンとしてはうれしい部分だ。
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