「東方見文録」弾幕系じゃない方の“東方”:ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(1/3 ページ)
連載第83回は「東方見文録」。ナツメのファミコン参入第1弾でしたが、カルトな展開のアドベンチャーゲームとして、翌年発売の「アイドル八犬伝」と並び称される存在でした。エンディングも衝撃的。
時を操る機械を操る程度の能力
13世紀。中国・元へ行き、フビライ・ハーンに仕えたマルコ・ポーロが、その行程で経験し見聞きしたことを、ルスティケロという作家が記した「東方見聞録」。
この「東方見聞録」に影響を受けて、マルコ・ポーロに弟子入りし、“黄金の国ジパング”へ行って金儲けしようと考えた男がいる。彼の名は「東方見文録」。「東方見」が苗字で、「文録」が名前である。
文録は、東南アジア大学歴史工学部旅行学科の4回生。卒業旅行と称して、自ら発明したタイムマシンを使い、西暦1275年のベニス(ベネチア)へ向かうことにした。目的はマルコ・ポーロに会うこと。そして“黄金の国ジパング”へ行き、代官山に日本一の雑貨屋を出すための資金を稼ぐことだ。
しかしいざタイムトリップしてみると、転送された先は、マルコが乗っていた船の中。しかもマルコと父ニコロの目の前に突然出現してしまう。びっくりしたニコロは腰が抜けて、背が縮んでしまい、旅を続けることができなくなった。そこでやむを得ず、文録をマルコに同行させ、ともに元国に向かわせるのであった……。
ナツメが1988年に発売した「東方見文録」は、こんなオープニングからスタートする。主人公の名前も変だし、学部・学科も何それと思うし、タイムマシンを発明する資金でお店の1軒や2軒出せるだろうし、マルコの前に出たら文録の外見も口調もいきなり変わっちゃうし、腰が抜けて背が縮むってのも謎だし、ニコロがそんな得体の知れない奴をあっさりマルコと同行させる心理もわからないし。……ツッコミどころがありすぎる。
あと、ネットで調べるまで気づかなかったけど、実際にマルコ一行がベネチアを出たのは1271年。1275年には既に元国に着いていたはずだが。
ちなみに「東方見聞録」には、ジパングに“黄金でできた宮殿”があると書かれているが、これはどうやら中尊寺金色堂のことらしい。この当時にはまだ、京都の金閣寺や、津名の1億円の金塊や、宇多津のゴールドタワーはなかった。
マルコは大変な者とコンビを組まされました
文録とマルコは、アークルという町にやってきた。なじみのない名前だけど、実はマルコ・ポーロが本当に訪れた町(イスラエルのアッコのことか?)。この時期はローマ法王が空位で、新法王が決まるまでアークルで待つことも、エルサレムで聖なる油を手に入れることも、どうやら史実らしい。
ただし、このゲームに出てくるアークルはなかなかカオス。ベールで顔を覆った謎の女性に紹介されて、彼女の経営する宿に泊まる文録とマルコ。しかし彼女の正体は、ヒゲの濃いオカマだった! しかも部屋に入った2人を、マジックミラー越しにこっそりのぞいていたのだ!
そんな宿に泊まって何事もないはずはなく、夜が明けると文録の荷物がそっくり盗まれていた。窓の鉄格子が少し広げられ、床に大きな足跡が残っていたので、文録は“犯人は小柄で大足”と大胆に推理。町でまさにそういう体型の人物を見かけ、問答無用で殴りかかる。だが彼は犯人ではなく、しかも後にローマ法王となる神父デオパルト(テオバルド)であった(ちなみに実在の人物)。
文録とマルコはデオパルトの許しを得て、エルサレムにある聖墳墓教会で、ランプを灯す聖なる油を受け取ろうとする。ここにも邪魔が入るが、神の怒り(詳しくは書かないし書けない)で撃退し、無事に聖なる油を入手。ローマ法王となったデオパルト改めグレゴリー10世から、フビライへの親書を受け取る。これにて第1章終了。
ちなみに、アークルとエルサレムの間にある砂漠は、このゲームいちばんの難所かもしれない。道筋のヒントも目印もまったくなく、運が悪いと延々と抜けられないのだ。この砂漠はもしかしたら、初期のPC用アドベンチャーゲーム「惑星メフィウス」(T&Eソフト)へのオマージュなのかもしれない。まあ「惑星メフィウス」の砂漠のつらさは、こんなもんじゃないけれど。
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