実体化した初音ミクにおさわりしてきた ミクの声で演奏できる「歌うキーボード ポケット・ミク」

初音ミクに歌ってもらうためにはパソコンが必要だ、というのは4月2日までの話。4月3日からは、ポケット・ミクが一番手軽に使え、価格的にも手に入れやすい、歌う初音ミクとなる。

» 2014年03月03日 11時13分 公開
[松尾公也,ねとらぼ]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
画像

 明治大学米沢記念図書館で現在行われている「初音ミク実体化への情熱展」に登場した新たな「実体化」は「歌うキーボード ポケット・ミク」だった。学研「大人の科学」の新製品として4月3日に発売されるこの製品、「歌う初音ミク」としては初めてのハードウェア化、つまり実体化なので、まさにこの場での展示にふさわしい。というわけで、さっそくおさわり、いや、試奏してきた。

 ポケット・ミクは、ヤマハのVOCALOIDチップ「NSX-1」を搭載した、ハガキ大の小さな楽器。スタイラス(タッチペン)で鍵盤を押すと、あらかじめ決められた歌詞をメロディーに乗せ、初音ミクの声で歌うことができる。

 米沢記念図書館に訪れたポケット・ミクは2台。今回はわずか3時間の滞在だったが、開発プロジェクトの両輪となって活躍したミュージシャンのPolymoogさんと、独特なインタフェースを持つ楽器「ウダー」開発者としても知られる宇田道信さんに、詳しい話を聞くことができた。

画像

鍵盤とリボンを自由に行き来し、歌ったりしゃべったりできる

 会場にポケット・ミクさんは2体、1つは初音ミクのイラスト入り、もう片方はない。この違いは、イラストのシールを貼ってあるか否か。そのシールはパッケージに含まれているので、自分で貼るのだそうだ。これは、トータルデザインを担当したキャプテンミライさんのアイデア。自分でイラストを描ける人は直接ペイントしてもいいかもしれない。

画像
画像

 筆者は昨年11月のMake Faireで披露された「歌うキーボード」のプロトタイプを実際に試してみたのだが、そのときから長足の進化を遂げたようだ。まず、レスポンスがぜんぜん違う。Make Faireのときには操作はできるものの、反応はちょっと微妙で、演奏はコツがいる感じだったが、現在のバージョンは十分リアルタイムでの演奏に追従できる。なんらかの改良が行われているようだ。「さしすせそ」の発音は、VOCALOIDでは母音の前の子音部分が長く、鍵盤を押してから発音されるまでタイムラグがあるものだが、ポケット・ミクではそこが実用になる範囲に収まっている。ひょっとしたら、素のままのNSX-1チップではないのかもしれない。

画像

 鍵盤も大きく変わっている。ピアノのような白鍵と黒鍵の絵が描かれたパネルにタッチペンで触れると「あー」とか「うー」とかミクの歌声が出てくるのだが、その鍵盤の線が途中で切れている。いったん押したペンをそのままスライドさせて上のほうにもっていき、そこから左右にずらしていくと、音程が上下に変化するのだ。最初にドの音をタッチして、それを2オクターブ上のドまでもっていって、さらにビブラートで揺らすなんてこともできる。

 「ああああああ〜〜〜〜〜」とハイウェイ・スターのイントロでイアン・ギランがやるようなことを、ミクさんでできるのだ。これだけで買おうという人もいるのではないか。

 シンセサイザーでは、押せば正しい音程を出せる鍵盤と、無段階で音程を変化させることができるリボンコントローラと、2つを併用するミュージシャンも多いが、ポケット・ミクは、1つのパネルでその2つを行き来できるというところがとてもユニークなのだ。

画像

 リボンコントローラは、歌うだけではなく、初音ミクに話をしてもらうときにとても便利だ。人がおしゃべりをするときにはきちんとした音程で発音しているわけではないので、VOCALOIDにおしゃべりさせる、いわゆるトークロイド向けに使い出がある。

 でも、トークロイドやるのなら、「歌詞」を書き換えられなきゃいけないでしょ? プリセットされている「あいうえお」とか「ドレミファ」とか「さくらさくら」「蛍の光」「いろはにほへと」じゃ会話できないよ、との疑問がわいてくるはずだが、ポケット・ミクには解決策が用意されている。プリセット歌詞をWebアプリで書き換えられるのだ。

 昨年のプロトタイプについて学研「大人の科学」の西村俊之編集長は「1曲分くらいは入れられるようにしたい。演奏しやすいように分割できるといいかも」と話していたが、製品版では1ブロックあたり64文字、それを15ブロックアサインできるということなので、演奏で困ることはないのではないだろうか。PCやMacのブラウザで動作するWebアプリで歌詞を設定し、その設定ファイルをポケット・ミクに搭載されているUSB経由で取り込めるという仕組みだ。

 NSX-1チップを搭載した製品は、ポケット・ミク以外にもう1つある。「eVY1 shield」という、自分でアプリを作ったり、いろんなものに組み込んだりする、開発者をターゲットにしたものだ。これには、チップを提供しているヤマハがさまざまなアプリを作ることができる仕組みを提供しており、実際にいくつかのWebアプリが動いている。

 同様のことが、このポケット・ミクでも可能になったりするのだろうか?

 Polymoogさんは、「現時点ではまだ話せないが、いろんな仕掛けを用意している」と言う。Polymoogさんが協力した、大人の科学版アナログシンセサイザー「SX-150」では、改造してもらうためのさまざまな情報を提供し、ガジェット楽器隆盛のきっかけを作った。3月7日まで待つと、ニコニコ技術部が騒ぎ出すような、おもしろい展開になるかもしれない。

 ポケット・ミクは、eVY1と同様に、USBを経由したMIDIキーボードなどによる演奏が可能であると考えられる。ステージで演奏されるための、いろんな工夫がされるのではないだろうか。

「ミクじゃなきゃだめなんです」

画像

 昨年11月のプロトタイプでは、「歌うキーボード(仮)」は、ヤマハの純正VOCALOIDである「VY1」が載っていた。NSX-1のVOCALOID機能であるeVocaloidは、VY1が標準なのだ。それが初音ミクになったという衝撃は大きかった。初音ミク関連商品は、ゲーム、フィギュア、お菓子、音楽CD、画集、ラノベとさまざまだが、実際に歌うことができる製品は、PC用のソフトウェア「初音ミク」しかない。

 初音ミクに歌ってもらうためにはパソコンが必要だ、というのは4月2日までの話。4月3日からは、ポケット・ミクが一番手軽に使え、価格的にも手に入れやすい、歌う初音ミクとなる。

 実際、歌うキーボードがVY1のままになる可能性もあった。そこを「ミクじゃなきゃだめなんです」と強固に主張したのは、意外なことに宇田さんだったという。そこからクリプトン・フューチャー・メディアとの交渉、VY1ベースの「歌うキーボード(仮)」から「歌うキーボード ポケット・ミク」となったのだ。ミククラスターのみんなは宇田さんに感謝するように。

 このポケット・ミクが一般向けに初めて公開された「初音ミク実体化への情熱展」は、歌うキーボード以外にもさまざまな「実体化」が展示されている。どんどん新しいものが追加されているので、何度も訪れる価値がある。例えば、初音ミクが弾く「あの楽器」を実体化したものは最初は「春日モデル」1台のみだったが、別の「あの楽器」が増えているし、美しさで定評のある「キオ式ミク」のMODELA削り出しモデルも「祭壇」に並べられている。

 ポケット・ミクで「声」が加わることにより、初音ミク実体化への情熱はさらに高まりそうだ。今回は短時間だったが、量産品を使った米沢図書館でのポケミク展示は、発売が近づいてからになる予定だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/19/news005.jpg 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  2. /nl/articles/2405/18/news066.jpg 「なぜ今になって……」 TikTokで“15年前”の曲が大流行 すでに解散の人気バンド…… ファン驚き 「戸惑いが隠せない」
  3. /nl/articles/2405/18/news004.jpg 「現場を知らなすぎ」 政府広報が投稿「令和の給食」写真に批判続出…… 識者が指摘した“学校給食の問題点”
  4. /nl/articles/2405/19/news014.jpg ソファに座る息子を見ると……→“まさかのもの”を食べる姿が585万表示 ママ絶叫の光景に「あああ!!」「バイタリティがすごい」
  5. /nl/articles/2405/19/news058.jpg 本田真凜、ショートパンツのスウェット姿に注目の声 「かわいいー!」「スタイルよすぎる」
  6. /nl/articles/2405/16/news066.jpg 伝説のスポーツカーが朽ちている……!? ある田舎の風景を描いた精巧なジオラマに「リアルすぎる」「ホンモノかと」驚きの声
  7. /nl/articles/2405/19/news036.jpg 「ウンコ食い」という毒魚に刺され“骨に激痛”→その40時間後…… ゾッとする経過報告に「えげつない」「何かの病気になりそう」
  8. /nl/articles/2405/19/news019.jpg 車両置き場から何かの鳴き声→探しても見つからずフォークリフトの中をのぞいたら…… まさかの正体に「困ったもんだ(笑)」「ここはマズイ」
  9. /nl/articles/2405/21/news018.jpg 側溝の泥に埋もれて瀕死の子猫→救助されて1年後…… 涙あふれるビフォーアフターに「良かった……良かったです」「奇跡ってある」と182万表示
  10. /nl/articles/2405/18/news068.jpg 『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博がXで怒り 立て続く“誤配”で「三度目です」「次はもう知らん」
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評