「LA-MULANA(ラ・ムラーナ)」というゲームのこと、1人のゲームライターの人生のこと「LA-MULANA 2」レビュー(1/3 ページ)

「LA-MULANA」と出会っていなかったら、多分今こうしてここにいることはなかったかもしれない、という話。

» 2018年08月17日 11時00分 公開
[池谷勇人ねとらぼ]

 少し前に「#人生を変えたゲーム」というハッシュタグが流行っていたので、便乗して僕の「人生を変えたゲーム」の話をしたい。

 といっても、マリオとかドラクエ、FFみたいなメジャーな作品ではなくて、恐らくこの記事を読む人の多くは名前すら聞いたことがないと思う(知ってる人は多分かなりのゲーム通)。

 ゲームの名前はLA-MULANA(ラ・ムラーナ)という。僕にとっては「ゲームライターをやめるきっかけになったゲーム」であり、同時に「もう一度ゲームを好きにさせてくれたゲーム」でもある。


LA-MULANALA-MULANA 「LA-MULANA(ラ・ムラーナ)」Wiiウェア版公式サイトより

LA-MULANA Wiiウェア以外に、現在はPC、PS Vitaでも発売中(画像はSteam版

ライター:池谷勇人(てっけん)

プロフィール

ゲームとネットと銭湯が大好きなねとらぼ副編集長。まだ幼稚園にあがる前、父親につれていってもらったゲームセンターでゲームの楽しさに目覚め、大学在学中に雑誌「ゲーム批評」でライターデビュー。卒業後はゲーム業界紙の編集者を経てフリーのゲームライターに。2012年からねとらぼの中の人。




どん底で出会った「LA-MULANA」

 僕がこのゲームを知ったのは、Wiiウェア版(2011年6月発売)が出る少し前のこと。当時僕はフリーのゲームライターで、ガジェット通信編集長の宮原俊介さん(元ショックウェーブ出身で、個人ゲーム開発者に顔が広い)が、「池谷さんに紹介したいゲーム開発者がいるんです」と紹介してくれたのが「LA-MULANA」作者との最初の出会いだった。

 2011年といえば、ちょうど海外ではMinecraftが大ブームになっていて、インディーゲームという存在がにわかに注目を集めていたころ。ただ、その波はまだ日本にまでは届いておらず、今のように国産のインディーゲームや開発者が脚光を浴びるのはもう少し先のことになる。


LA-MULANA 世界的なインディーゲームブームの火付け役となった「Minecraft

 で、そのころ僕はというと、長年続けていたゲームライター稼業にだいぶ行き詰まりを感じていて、真剣に将来について考えていた時期だった。このころ国内ゲーム業界はスマホゲーム勃興前夜のような状態で、単純にどこも景気が悪く、必然的に自分の仕事も減りつつあった。ただ、それより大きかったのは、自分にとって「ゲームが面白いと思えなくなった」ということだった。

 これは自分でもまったく予想していなかったことで、これまで「ゲームこそ最高の娯楽で、その魅力を少しでも多くの人に伝えたい」という熱意をよりどころにして生きてきたのに、それがポッキリ折れてしまった。とにかく、ゲームは面白くないし、純粋に仕事も減ってきていたし、ついでに彼女にも振られてヘコみまくっていたし、わりとストレートにどん底な時期だったと思う。

 そんな時に出会ったのが「LA-MULANA」だった。



MSX好きの一念が世界を動かした

 主人公は考古学者の「ルエミーザ博士」。ゲームは博士が“全ての文明の始まり”であるとされる巨大遺跡「ラ・ムラーナ」にたどり着いたところからスタートする。


LA-MULANA スタート地点は遺跡の外にある村から。「ダンジョンの外から始まるダンジョン探索ゲームは名作」という説(Steam版販売ページより)

 ゲーム内容は「遺跡探検考古学アクションゲーム」。広大な遺跡の内部を探索し、敵と戦ったりアイテムを手に入れたりしながら最深部に秘められた謎を解き明かすのが目的だ。地上で準備を整え、村の長老からアドバイスを受けつつ遺跡の門をくぐると、僕は最初のフィールド「導きの門」へと足を踏み入れた。


LA-MULANA 遺跡の入り口エリアにあたる「導きの門」(Steam版販売ページより)

 後に知ったのだが、このゲーム、MSX(※1)の「魔城伝説II ガリウスの迷宮(※2)」というゲームが元になっている。Wiiウェア版ではグラフィックが一新されて面影が薄くなっているが、もともとリリースされていたPC版(2005年)は、グラフィックも音楽も完全にMSXそのものだった。

※1:1980年台に発売されたホビーパソコンの一種
※2:1987年発売。広大な城の中を探索し進んでいく、今にして思えばメトロイドヴァニアの先駆けのような作品。しばしばMSX最高傑作の1つに数えられる


ファンによるオリジナル版との比較動画

LA-MULANALA-MULANA こちらがオリジナル版のグラフィック(動画より)

 開発スタッフは、リーダーのならむら(楢村匠)と、敵まわりと効果音・一部楽曲担当のサミエル(鮫島朋龍)、メインプログラム担当のduplex(蛯原隆行)の3人。それぞれ年齢も、職業も違っていたし、住む場所も岡山・兵庫・熊本とバラバラだったが、3人にはある共通点があった。

 その共通点とは「MSXがとにかく大好き」ということ。3人は当時ならむらが運営していたMSXファンサイトを通じて出会い、やがて意気投合。「自分たちが大好きだったMSXのゲームが、もしあのまま進化を続けていたら」という思いから、「GR3 PROJECT」としてチームを組み、チャットや掲示板でやりとりしながら“現代のPCで動くMSXゲーム”を趣味で開発しはじめる。こうして第1作「GR3(※)」が2001年に完成し、「LA-MULANA」はそのプロジェクトの第2弾として企画されたものだった。

※カプセルを取ってパワーアップしていく横スクロールシューティング。元ネタはもちろんKONAMIのアレ(ゴーファーじゃない方)


LA-MULANALA-MULANA 最初にリリースされた「GR3」(ユーザーによるプレイ動画より)

 ちなみにタイトルの「LA-MULANA」はリーダーの“ならむら”の逆読みで、同じく主人公のルエミーザは“サミエル”、村の長老ゼレプド(Xelpud)は“duplex”がそれぞれ元になっている。開発者の名前をひっくり返すのも、あのころのゲームでしばしば見られた文化の1つだった(※)。

※有名なのだと「ダライアス」のマヤリークとかワ・ガセハとか

 で、当初日本では相当なMSXマニアの間でしか知られていなかった「LA-MULANA」だが、これがあるとき海外ゲーマーの目にとまり、「やべえゲームがある」とちょっとした騒ぎになった。当時は日本語版しかなかったが、勝手に英訳する有志まで現れ、コアな海外ゲーマーを中心に「LA-MULANA」は“日本発のクレイジーなインディーゲーム”として人気を広げていく。同時期の国産インディーゲームに「洞窟物語」(2004年)があったが、「洞窟物語」が太陽なら「LA-MULANA」は月のような存在で、この2作品が日本のインディーゲーム界に及ぼした影響はものすごく大きかったと思う。


LA-MULANA 「LA-MULANA」と同時期のインディーゲーム「洞窟物語」(PLAYISM版サイトより)

 長々と背景を語ってきたが、こうした動きを経て「じゃあ家庭用(Wiiウェア)で出そう」となったのが、僕が今遊んでいるWiiウェア版「LA-MULANA」というわけだ。今では家庭用ハードでインディーゲームが遊べるのはごく普通のことだが、このころはまだかなり珍しいケースだった。


Wiiウェア版オフィシャルトレーラー


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