ヒューマノイドと人間、異なる2つの存在が共生する世界を描くSF漫画『AIの遺電子』。作者である山田胡瓜(やまだきゅうり)さんに、「2018年に漫画を描くということ」をテーマに話を聞きました。
「自分の作品を読者に届けるためにできること」を語ってもらった前回に続いて、今回は「出版社や編集者の役割」について。個人がWeb上で簡単に作品を発表できるようになった今、漫画家が出版社に期待することとは?

「これからは出版社や編集者がいらなくなる」は本当か?
――AmazonのKDPや「note」などの個人向け有料課金プラットフォームが広まったことで、漫画家が作品の発表から販売まで、全工程を自身で行えるようになったという考え方があります。出版社や編集者の必要性についてはどう思われますか?
胡:
編集者の役割として一般によく言われるのは、作品を(作者とは異なる)他人の目で冷静に見る、売れる形にしていくための助言をしていくというもの。こうした力を借りてヒットする作家はたくさんいると思うので、編集者の存在は今後も必要だと思います。
ただ、出版社に務めている編集者みんなにこの能力があるのかというと疑問がありますね。変な編集者についていくより、自分で好きなものを売ったほうがもうかる人もいるんじゃないでしょうか。今はそれができる時代なので、いまいちだと思ったらKDPでも何でも使って作品を発表してみるといいと思います。
電子書籍を自分で販売するには、多少のITリテラシーが必要ですが、最近はマンガ制作ソフトにKindleフォーマットやEPUBの出力機能が用意されていたりもしますし、やる気さえあれば簡単に販売できるんです。
僕もWeb連載した漫画をKDPで販売した経験がありますが、けっこう売れて、こういう方法で漫画を届けるのもありだなと思っています。発売して2年半ぐらい経ちますが今でも月100冊とか売れますし、なんかの拍子にどかっと売れたりして、Amazonの「読者への到達力」みたいなものを感じています。
ただ、自分の作品の場合はWeb連載で周知されたからこそ売れた気もしています。電子出版する場合、こういう戦略を自分で立てないといけません。そのあたりはハードルが高いと感じます。「作品を読者に届けるために策を練ってくれる人」が自分以外にもいると、心強いなと思いますね。
――やはり「届け方」の部分ですか。
ネットを使ったセルフプロデュースが得意で、自分で全部やれる作家さんもいるけど、面白い漫画を描くこととそれを届けるための能力は別物なので。
ごちゃごちゃ考えずに、漫画を作ることに集中するほうが漫画家としてはやりやすい。なので、「届け方は任せた!」っていえるようなパートナーがいれば、それに越したことはない。昔は編集者しかいなかったんだけど、今はAmazonのレコメンドとか、ネット上のシステム自体がその能力を多少ながらも持ち始めていて、しょぼい編集者や出版社よりもそっちのほうが信頼できるんじゃないか、というのが最近の個人的な印象です。
ただ、大きな出版社の展開力や能力のある編集者の手腕は今も昔も変わらずあると思います。漫画家には色んなアプローチが用意されていて、良い時代だと思いますよ。
(つづく)
ためし読み「AIの遺電子」第43話 人間の証明



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