
(C)2019 リムコロ/KADOKAWA/世話やきキツネの仙狐さん製作委員会
癒やされたい。肯定されたい。「世話やきキツネの仙狐さん」(原作/アニメ)は、ブラック企業に勤める男性が、神使の狐に何もかも全て癒やされていく、人間全肯定アニメ。優しい空間が覆いかぶさってくる、ある意味現代日本を象徴するような作品です。

シロ様が甘やかされに来てあげたわ!

なんちゅーセリフだ(2巻)
休む間もなく働く社畜の中野と、彼を甘やかすためにやってきた仙狐さんの日々の中に飛び込んできたのは、仙狐さんの知り合いのシロでした。
彼女はパワーワードがとても多い。傑作の1つが上記のコマにある「シロ様が甘やかされに来てあげたわ!」だと思います。一度聞いただけでは、どういう意味合いなのかさっぱりわからん。
5話でも彼女は「シロの頭を撫でさせてあげるわ!!」と発言。今までは中野を癒やすために仙狐さんが抱擁してあげるパターンが多かったのですが、真逆です。自分を抱擁させてあげるのが、シロ。
甘えてるだけじゃねーか! と言われたらまあそうなんですが、めちゃくちゃ幸せな顔を見せる相手って癒やし度が半端じゃない。息子や娘、あるいは家族の動物なんかを考えるとわかるはず。愛されるよりも愛したい、撫でられるよりも撫でたい。

うらやましい……!(2巻)
「人間背もたれ なでなで機能付き」というパワーワードも登場。これは仙狐さんはまずやらない。むしろ仙狐さんは「ひざまくらしてあげる方」です。
なにげにこれすごいことです。子供が特にそうですが、信頼している相手じゃなかったら抱っこされて頭撫でられたりなんてしません。甘えているように見えると同時に「あなたのことを信頼しますよ」という表現にもなっています。
信頼されたら、心はどんどん満たされるものです。シロは素直に喜んでくれるから、わがままを言われる側も、与える喜びが身体を駆け巡ります。

まるでっていうかほぼ家族(2巻)
今まで休み無く働き、家では泥のように眠っていた中野。生きる余裕がありませんでした。今、部屋には自分を優しく支えてくれる仙狐さんがおり、自分に甘えてくるシロがいる。どこからどうみても、夫婦と子供です。
……やばい、もし社畜がこんな状況に包まれたら、幸福の過剰摂取でそのまま成仏してしまいそう。

大人げない中野(シロのほうが年上だけど)(2巻)
シロのもう1つの魅力は、いい具合に中野のケンカ友達になってくれるところです。優しすぎる真面目な中野が、思い切り怒りをぶつけられるって、実はすごいストレス解消。仙狐さんだと勝負を譲ってしまいそうなので、シロの存在の大きさが目立ちます。


お隣さん可愛すぎ問題
もう一人のお疲れ気味キャラクターとして登場するのが、お隣りに住んでいる高円寺安子。大学生の漫画家。一人暮らしでいっぱいいっぱいな彼女のもとにも、仙狐さんはやってきます。甘やかします。

ちゃんと信じてるのえらい(2巻)
仙狐さんが言う「成人済み」「中野と夫婦」という言葉を信じようとしている高円寺。外に出る時は耳と尻尾を隠すようにしたはずの仙狐さん、高円寺の家ではむき出しであるにもかかわらず、信じようとしてくれます。
「たまに本物の狐娘なのではないかと思うが まあ漫画でもあるまい」という判断。「コスプレをしているお隣さんの奥さん」と、高円寺は飲み込んでいます。幼い外見は「合法ロリ(成人済みだけれども見た目が子供に見える女性のこと)」というオタク用語で、納得している様子。
高円寺が仙狐さんの正体に踏み込まないのは、「彼女が悪い人ではない」という確信だけで十分だからです。おいしいご飯を作ってくれて、かわいくて、部屋を片付けてくれて、かわいくて、かわいい。だったら真実かどうかなんて、どちらでもいいのでは?

メイド服が嫌いな男はいない(高円寺談)(2巻)
御礼として高円寺が提案したのは、メイド服のコスプレ。
「たまにはコスプレの趣向を変えれば 旦那さんも喜びますよ!!」
仙狐さんの正体には踏み込んでいませんが、夫婦関係にはなぜか踏み込む高円寺。メイド服仙狐さんを見たかった下心丸出しですが、まごうかたなき感謝の表現のようです一応。
この仙狐さんwithメイド服、バランスが絶妙によい。狐耳仙狐さんとメイド服が邪魔しあっておらず、うまく双方を引き立てています。パフェの上にいちごを乗せたかのごとく。メイド服のスカートが長いのもとても素晴らしい。上から下まで上品。桜の髪飾りがほのかに和風でアクセントになっている。だけど運んでいるのは日本茶とお盆というギャップもよい。センスがよい。

刺激もいいけどいつも通りがいい(2巻)
中野もメイド服は好きだったので(和装メイド派らしいけど)、高円寺の計画はある意味正解だったようです。ただし、疲れ果てて帰ってくる彼が求めていたのは、ドキドキよりもいつも通りの落ち着きでした。これは転じてみれば仙狐さんがいるのは特別ではなく、いつも通りになったということ。
幸せは人それぞれ。刺激を感じ続けたい人もいるかもしれない。けれども中野が欲しいのは、何でもない安らぎ。静かに何もかも受け止めてくれる仙狐さんは、割れ鍋にとじ蓋。あとモフマニアの彼の欲求を、仙狐さんが満たしてくれているのはでかい。

わかりみが深い(2巻)
中野は社会人なら共感できるところが多い人物。同時に美少女好きなら共感度高いのが高円寺。「人妻じゃなきゃ襲ってたわ…」「私も幼女と…可愛い奥さんと暮らしたいなあ」。わかる、わかるよ。襲うのはアウトだが、言いたいことは理解できるよ。
仙狐さんがいる生活を、高円寺と同じような顔でうらやみながら、来週の7話まで待機しようと思います。


(たまごまご)
<前回までのお話>
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