地方鉄道や海外で、どこかで見たことのあるちょっと懐かしい電車が走っていることがあります。

JRの場合は国鉄時代に作られた車両もまだ活躍しています。都市部の路線で使わなくなった車両を地方の路線で使うなど、同じグループ会社の中でやりくりするのは分かります。一方、地方私鉄はどうでしょう。こちらは、首都圏や関西圏の大手私鉄で使わなくなった車両を譲り受けて走らせることが多いです。
コストの都合で新車の導入が難しいローカル私鉄にとって、まだ十分に走れる大手私鉄からの譲渡車両はとても重要です。でも置き換えで不要になった中古車両ならばなんでもいいわけでもありません。路線の規格や設備に合い、まだまだ使える、長持ちするできのよい車両でなければなりません。
そこで不思議なほどに全国各地で使われているのが「東急の中古電車」です。元東急の電車はなぜ地方私鉄に人気なのでしょう。

1つは「ちょうど良いサイズ」であること。東急電鉄は一部の路線を除いて軌間(線路の幅)が1067ミリで、日本で最も一般的な幅です。「長さ」もそうです。よくある大手私鉄の長さ20メートル級車両に対して、東急にはちょっと短い18メートル車が残っています。
車両の長さによって建築限界も変わります。20メートル車を走らせるにはホームや車庫などの設備工事なども必要……ならばコストが余計にかさみます。地方私鉄にとって、これまで運用してきたサイズの車両があるのが「ちょうど良い」ということになります。
また、都市圏の10両編成や8両編成で使っていた車両を地方鉄道の2〜3両編成程度で使おうとすると、先頭車が足りなくなってしまいます。
地方路線譲渡の実績が多い東急は、中間車を先頭車に仕立て直す「先頭車化改造」もお手の物。さらに、都心では数少ない3両編成が走る東急池上線で使われていた車両ならば、ほぼそのまま走れます。この池上線で使われていた車両の再就職率は高いです。

そして「長持ちする/まだ使える車両」であることもやっぱり重要です。東急は早くからステンレス車体の車両を導入。塗装や腐食対策などの状態維持にかかるコストを軽減できるメリットがあると説明します。
「車齢50歳を超えた電車の再就職」も珍しくありません。例えば、1960年代に作られ、前述した東急池上線で活躍した「東急7700系」が、岐阜県の養老鉄道に譲渡されて2019年4月に営業運行を開始しました。長持ちする頑丈な車体であることと合わせて、東急時代に台車や電気系統が更新済みであったことが決め手になりました。養老鉄道は「まだ30年は使う(!)」としています。まだ現役バリバリなのですね!
使いやすいサイズで、古くてもしっかり手をかけて使われてきた電車であり、そして譲渡改造のノウハウもあるのが地方私鉄で活躍する東急車の人気の秘訣。
よく見てみると、あなたの身近なところでも「東急車」が走っているかもしれません。また、東急沿線住まいの方は地方へ出掛けて「あ!」とうれしい再開があるかもしれません。こういった出会いも楽しいものですよね。


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