アルゼンチンから里帰り「昭和の赤い丸ノ内線」が公開 東京メトロ、「本線でまた走らせたい」(1/2 ページ)

東京メトロが復元をほぼ完了。丸ノ内線500形、地球の裏側からお帰りなさい(厳選写真100点)。

» 2017年11月27日 17時00分 公開
[岩城俊介ねとらぼ]

 東京地下鉄(東京メトロ)は11月27日、復元がほぼ完了した「丸ノ内線旧500形」の車両を報道公開しました。

photo 復元された「丸ノ内線500形」

 500形は丸ノ内線の引退後、アルゼンチンのブエノスアイレス地下鉄へ譲渡。アルゼンチンで約20年活躍したのち、日本に里帰りし、復元補修工事が行われていました(関連記事)

photo 復元された3両のうち、771号車は「アルゼンチン地下鉄仕様」としました。行き先や内部の路線案内などがブエノスアイレス地下鉄のものとなっています

 丸ノ内線500形は、丸ノ内線(池袋−御茶ノ水間)開通時の車両「300形」(1954年)の改良型として、新宿までの延伸とともに1957年(昭和32年)に登場した車両です。当時としては珍しく、全鋼製の車体に鮮やかな赤(スカーレットミディアム色)で塗装され、窓下に白帯とサインウェーブを組み合わせたしゃれた車両デザインを採用しました。この500形車両は合計で234両が製造され、1996年に引退。後継の「02系」に引き継がれるまでの約40年、丸ノ内線の顔として親しまれました。

photo 当時の500形と後楽園駅の様子(写真:東京メトロ)

 引退後、一部車両が「アルゼンチンのブエノスアイレス地下鉄」に譲渡されました。

 実は500形車両は引退後、展示保存用の車両を除いて全て解体される予定でした。しかし、解体を請け負っていたメトロ車両が1992年に鉄道雑誌へ譲渡案内を出したところ、ブエノスアイレス地下鉄が名乗りを上げたのでした。車両更新のタイミングであり、価格を抑えられる中古車両の購入を希望していたこと。そして、レールの幅や集電方法(第三軌条)などが一致していたことなどが幸いし、500形車両は日本の裏側にあるアルゼンチンで第二の人生(車生)を過ごせることになりました。ブエノスアイレス地下鉄には1994年から1996年に掛けて、500形および前身の300形、後継の900形の計131両が譲渡され、2017年現在も一部の車両が活躍しているそうです。

photo アルゼンチンで活躍する500形(写真:東京メトロ)

 それから約20年。アルゼンチンで活躍していた500形も老朽化が進み、そろそろ車両寿命を迎えることになります。ブエノスアイレス地下鉄が2014年頃から随時引退させるという報が届きました。

 日本では、車両機器のハイテク化が進み、車両はコンピュータ管理によって正確に運行されるように進化しました。一方の500形はほとんどが「機械式」。「接点磨き」のような手作業も必要とする、車両整備の原点となる整備技術を発展させてきた車両です。

 「電子制御は正確な半面、複雑なので、どうやって動き、どのように止まるのかが分かりにくくなっています。一方で500形は昔ながらの機械式。電車の基礎構造を正しく理解し、さらにその技術を次の世代へ伝承していくことが重要です。これが今後の車両保守教育につながり、ひいてはお客さまへのさらなる安全・安心の提供につながります。鉄道技術の発展に貢献した価値のある車両といえる500形を保存し、復元する目的はここにあります」(東京メトロ 車両担当常務取締役の留岡正男氏)と、東京メトロは500形を引き取ることを決定。2016年7月、アルゼンチンで第二の人生(車生)を送った500形車両4両を日本に里帰りさせ、余生のために「復元」されることになりました。

photo ブエノスアイレス地下鉄の引退後、里帰り前の500形(写真:東京メトロ)

 「しかし、こりゃまた、すごい汚れようだ……」

 若手メンバーを中心に発足した復元プロジェクトチームは、里帰りした500形の荒れた姿に度肝を抜かし、こう嘆いたといいます。まず、どっぷりと描かれた落書きを落とすのに苦労したそうです。現役時代の500形を知るベテラン社員(中野車両管理所技術課長の増沢氏)の指導のもと、若手メンバーが2016年9月に修復作業を開始。2017年3月から新木場車両基地へ移して車体の本格補修作業を行い、2017年8月からの中野車両基地での最終補修作業を経て、2017年11月に外観を忠実に復元した「一次補修」が完了。今回の公開に至りました。

photo 塗装前の様子(写真:東京メトロ)
photo 技術伝承とともに、何より「好き」であることを理由に30代までの若手が集まった500形復元プロジェクトチーム


 今後、東京メトロは500形を「自走が可能な状態」にまで復元させる計画で、可能ならば「本線走行も実現できれば」とのことです。また、イベントなどで一般公開も予定されます(関連記事)。「本線の走行はあくまで希望です。乗り越えるべき高いハードルがいくつもあります。しかし、その意気込みで復元し、技術と歴史を伝承していくつもりです」(東京メトロの留岡氏)と力を込めます。長い鉄道の歴史のロマンを感じられるこの500形、また本線を走る姿を見てみたいものです。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2409/09/news105.jpg 合宿前の兄たち、0歳末っ子と離れたくなくて…… メロメロな“別れの光景”に「あーもうなんて尊い」「幸せ」430万再生突破
  2. /nl/articles/2409/13/news140.jpg 「マフラーの音が自慢」 平野紫耀の“イケメン弟”、“1400万円の高級外車”お披露目にダウンタウンら「ウソやろ!?」「カッコイイなぁ」
  3. /nl/articles/2409/12/news174.jpg ホロライブ・天音かなた、“まさかのやらかし”でゲームを開始できず配信を終了してしまい視聴者爆笑 「伝説の配信」「終わったw」
  4. /nl/articles/2409/13/news158.jpg 「資さんうどん」関東第1号店は千葉に 2024年冬オープン 東京1号店は2025年に
  5. /nl/articles/2409/12/news004.jpg 雑草だらけの庭が“たった1台の草刈り機”で…… “見事な変化”に7000万再生 「よくやった」「まさにプロ」
  6. /nl/articles/2409/13/news194.jpg 「浮ついた気持ちあった」 “30万人が視聴”有名ストリーマー、セクシー女優との“不倫疑惑”を弁明
  7. /nl/articles/2409/13/news079.jpg 「脳がおかしくなった」 新宿駅を出る→“まさかの光景”に思わず三度見 「意味わからん」「田舎者にはマジでダンジョン」
  8. /nl/articles/2409/12/news180.jpg 「このレベルは見たことない」 阪神甲子園球場がゲリラ豪雨で試合中止 驚きの光景に「エグすぎでしょ」「野球どころじゃなかった」
  9. /nl/articles/2409/07/news027.jpg “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  10. /nl/articles/2409/12/news020.jpg メルカリで300円の紙モノセットを購入してみたら…… 驚きの中身に「とても素敵」「破格ですね」
先週の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  3. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  4. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声
  5. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  6. 猛毒ガエルをしゃぶった30分後、口がとんでもないことに…… 直視できない異常症状に「死なないで」「この人が苦しむってよっぽど」
  7. 33歳の「西郷どん」二神光さん、バイク転倒事故での急逝に衝撃 1年前の共演者は“願い”明かし「叶わないなんて」
  8. 「コレ入れると草が生えない」 外構工事のプロがやっている“究極の雑草対策”に注目
  9. 「へー知らんかった」 わずか7年で“消えた駅” 東京メトロが明かす“知れば納得の歴史” 「だからあんなに……」
  10. 秋葉原のトレカ店が“買い占め被害” 近隣店とその常連客が共謀し“全口購入の人員確保” 「大変遺憾で残念な限り」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」