この夏、昭和の鉄道ファンに胸アツすぎる注目の列車がえちごトキめき鉄道に誕生。なぜ胸アツなのか、それは「ここもあそこも国鉄時代と同じ」だからです……。え? どういうこと?
快速列車の「間合い運用」まで国鉄急行に通じる演出だった
「えちごトキめき鉄道」って面白い名前ですよね。

ワタシは当初「キラキラネームだな」と揶揄(やゆ)しましたけれど、今ではすっかり定着しています。愛称は「トキてつ」。新潟県の県鳥で絶滅危惧種の「トキ」にちなんでいます。本社は新潟県上越市の直江津駅。ここから長野県方面に向かう路線が「妙高はねうまライン」、富山県方面に向かう路線が「日本海ひすいライン」です。
この2つの路線は、もともとJR東日本の信越本線とJR西日本の北陸本線でした。北陸新幹線が長野〜金沢間を延伸開業したときにJRから経営分離され、新潟県などが出資する第三セクター鉄道になりました。地元の人々の通勤や通学のために残された鉄道です。
しかし、かつて収入源だった特急列車は一部を残して新幹線に移ったため、基本的に赤字経営です。そこで、観光客に乗ってもらおうというわけで、まず観光列車「えちごトキめきリゾート雪月花」の運行を開始しました。

そして今年(2021年)、“もっと手軽に楽しめる”をコンセプトに「観光急行」をはじめました。観光急行は「日本海ひすいライン」の直江津〜糸魚川間と、直江津〜市振間を1往復ずつ。合わせて2往復の運行です。
このほかに、妙高はねうまラインでは「観光急行」と同じ車両を使って直江津〜妙高高原間を「快速列車」として運行します。こちらは急行料金が不要です。妙高高原発直江津行きは9時44分発車。東京圏に住んでいる人は、東京6時16分発の北陸新幹線「かがやき」で長野へ、そこからしなの鉄道に乗り継ぐと当日出発でも間に合います。


このように、急行電車や特急電車が“アルバイト的”に他の路線で運行する運用を「間合い運用」といいます。車両不足だった国鉄が少ない車両を活用する施策でした。つまり妙高はねうまラインの快速列車は「懐かしの間合い運用」の再現でもあるのです。
何から何まで懐かしの国鉄急行に通じる演出ですね。


次回(最終回)は、トキてつの「急行」とは実は「急いで行かない」意味だった……!? 「は!? なぜだ?」と思ってしまう独特なダイヤのワケと魅力をおまけ写真たくさんでお届けします。お楽しみに。
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杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。ITmedia ビジネスオンラインで「週刊鉄道経済」連載。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。日本鉄道全路線の完乗率は100%(2021年4月時点)

