ねとらぼ

あまりに華麗なスルーっぷり。でも、すごく「愛され」ているんです。

そして終点へ…… 「湯玉駅」に到着 やっぱりここにも不思議が

 では、いよいよ県道270号の終点まで行きましょう。

 宇賀本郷駅を華麗にスルーした県道270号は、国道191号に隠れたまま進みます。宇賀本郷駅から300メートルほど進むと、ちょっと紛らわしい字面である「県道260号」が表れ、左方へ分岐しますが、県道270号はやっぱり国道191号に隠れたまま直進します。

県道260号との分岐点
左折する「菊川/大河内温泉」方面が県道260号(起点)となる交差点。県道270号と字面が近くてちょっと紛らわしい(笑)

 ここから約300メートル、県道270号はようやく国道191号との重用区間から離れて姿を見せます。先ほどの県道260号との分岐点は信号付きの比較的立派な交差点でしたが、ここは信号もなく、ただの脇道です。この扱いの差は何なんだ……。

右側の脇道が県道270号
長い間国道に隠れていた県道270号は「脇道」へ曲がって姿を見せる
踏切があります
山陰本線の踏切をわたり……
隣には山陰本線。その向こうに国道191号の標識が見える
線路の右側を並走し……
ちょうど隣を山陰本線の観光列車「○○のはなし」が通過しました
ちょうど山陰本線を走る観光列車「○○のはなし」が通過!
この坂を登ればもうすぐです
小山を超えると……。ちなみに山陰本線はトンネルをくぐっている
坂のてっぺん付近はこのような感じ
あれれ、住宅街?
下っていくと住宅街に
やっぱり住宅街に来てしまったようだ
ちょうど30km/h制限が終了する地点
いい感じで日も傾いてきた。きょうはいい天気だったなとたそがれていたら……
左に進路を変えて駅に向かいます
いきなり左に「湯玉駅」!

 ついに県道270号の終点「湯玉駅」に到着しました。おつかれさまでした。

湯玉駅には薬局が併設されている
湯玉駅には薬局が同居している
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なぜ県道270号の終点は「湯玉駅」なのか

 あらためて、県道270号の終点はなぜこの「湯玉駅」なのでしょう。

 県道270号が指定されたのは1958年10月1日。宇賀本郷駅はその直前の1958年7月19日にできました。ルートの計画段階では宇賀本郷駅は恐らくまだ存在していなかったことになります。一方の湯玉駅は1925年にできた歴史のある駅で、既に主要な駅として使われていました。

湯玉駅のホーム
2面2線、列車すれ違いもできる比較的大きな湯玉駅

 小さな宇賀本郷駅に対して、湯玉駅のホームは2面2線で列車交換もできる比較的大きな駅です。待合室には「長門市/京都方面のりば」の看板もありました。2022年現在、湯玉駅から京都駅へ直通する列車はありませんが、ここから京都方面へ行くのに重宝されたと思われる当時の賑わいを感じさせます。

湯玉駅の待合室
湯玉駅の待合室に掲示されていた、昔の「京都方面行き」の文字

 このことから、県道270号はやっぱり「湯玉駅へのアクセス」を目的につくられた道なのでしょう。でも、この他にもいくつか不思議項目があります。

 県道270号と直接つながっているのは湯玉駅の長門市方面ホームに続く海側の駅舎です。反対側の小串・下関方面ホームに隣接する山側の駅舎は県道270号より前の1953年に制定された国道191号に面しています。別にここが終点でもいいのに、県道270号はなぜ直前でわざわざ海側へ分岐したのでしょうね。

下関方面ホームへと繋がる地下通路には、列車の案内が
下関方面ホームへとつながる地下通路にあった「列車到着案内」もレトロでいい
国道191号からアクセスできる、小串・下関方面の駅舎
国道191号からアクセスできる、湯玉駅小串・下関方面の駅舎。長門市・京都方面のホームとは地下通路でつながっていて徒歩で行き来できる

 もう1つ、県道270号の起点はなぜ国道435号だったのでしょう。県道270号の延長は約12キロです。生活道路としての役割は別にして、湯玉駅付近の国道191号から分離した県道だとすれば延長は1キロ程度で済みます。停車場線と付けられる県道は、一般的に駅と最寄りの国道を結んでいることが多いです。停車場線と名付けるならば国道191号を起点とする方が自然なのですが、どうなのでしょうね。

 なぜ宇賀本郷駅をスルーしてひと駅ぶん線路と並行するのか、なぜ起点があんなに遠いのところなのか。もしこんなルートでなければ、この道に興味を抱き、訪れなかったかもしれません。

 鉄道移動が活況だった60年も前の不思議なルート設定の謎に思いを馳せながら、わたしはこの道を後にしました。

ちょうど単行のディーゼルカーが来ました
ちょうど単行の列車も来ました。皆さんも山口県道270号、楽しんでみてはいかがですか?

少年B



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