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「酷道(こくどう)」をご存じでしょうか。道幅が狭かったり、路面が舗装されていなかったり、そもそも通行止めだったり……。一般的な国道(国が政令で指定した主要道路)というイメージからはかけ離れた国道のことを愛情と敬意を込めて示す言葉です。それと同様に、そんな状態の県道(都道府県が管理する道路)にも愛称があります。「険道(けんどう)」と呼ばれます。

これまで険道ファンの筆者は「地図に載っていない県道」「普通車が通るのさえ困難な幅1.7メートル制限の県道」「平均勾配13.4%、鳥居のある激坂県道」などの険道を紹介してきましたが、愛すべき険道はまだまだたくさんあります。
今回はとっても不思議な、でもとても愛されている山口の県道「山口県道270号田耕湯玉停車場線(以下、県道270号)」を愛でていきます。
(写真は全て助手席から、あるいはクルマを降りた上で、望遠レンズを使うなどして安全を確かめた状態で撮影を行っています)
ちょっと不思議なルートをたどる謎険道「山口県道270号」 山口名物「オレンジ色のガードレール」を愛でながら確かめる
県道270号の正式名称は「山口県道270号田耕湯玉停車場線」です。停車場線とは「鉄道の駅へ向かう道」であることを示します。県道270号以外にも各都道府県に多くの停車場線と付く県道が存在します。
しかし、県道270号はその中でも少し変わった停車場線なのです。
県道270号は、下関市豊北町の田耕から下関市豊浦町の宇賀(うか)へ至ります。ルートの先に確かにJR山陰本線の「宇賀本郷駅」があります。地図を見ても、まさに宇賀本郷駅へ向かっているようなルートです。しかしそこが終点ではありません。華麗にスルーします(!)。山口県道270号は、宇賀本郷駅付近で国道と重用する区間(実質は国道191号線)に入り、もうひと駅先へ進んだJR山陰本線の湯玉駅が終点になります。
同じJR山陰本線で先に着く宇賀本郷駅が終点でいいのでは……と思ってしまいます。「田耕宇賀本郷停車場線」にならなかったのはなぜなのでしょう。
資料を見ているだけでは分からない不思議、謎がある山口県道270号、一体どんな道なのでしょうか。

県道270号の起点は、山口県下関市豊北町大字田耕にある無名の交差点。国道435号から分岐します。標識には「宇賀」方面とあります。

いきなり気になるところがありませんか? そう、ガードレールがオレンジ色です。普通は白、でも山口県ではオレンジ色が一般的なのだそうです。県外ではなかなか見ない色なのでびっくりですよね。
調べたところ、1963年の山口国体をきっかけに、当時の知事が「ガードレールを萩市の特産品で県花でもある“夏みかんの色”に変えよう」と発案し、定着したのだそうです。山口県では県道と県が管理する国道に約1200キロのガードレールが設置されているそうですが(2014年時点)、その大部分はオレンジ色だとのことです。
余談ですが、そんな夏みかんが特産品の萩市では、1993年に当時の市長が「黄色系は注意を喚起する色。町並みにふさわしくない」として、ガードレールを「ダークブラウン」にしてしまったのだそうです。なぜブラウン……? 今回は字数の都合で深追いしませんが、ガードレールの色1つ取っても面白そうなエピソードがありました。
県道に入るとすぐ、安楽寺前に県道を示す標識、通称「ヘキサ」もきちんと立っていました。


しばらく進んでいくと、太田川を橋で越えます。太田川は途中まで県道270号と並行して流れる河川です。この後も何度も交差しながら進みます。
おや、再びガードレールの色に注目です。直進する県道のガードレールはオレンジ色ですが、左に分かれる道は一般的な白色です。

これは道路の管理者が違うためです。前述した通り、オレンジ色のガードレールは県が管理する県道および一部の国道で使われます。一方の白ガードレールの道は管理者が別であることが分かります。道路趣味者からすると、たどるルートがひと目で分かるので便利です(笑)。
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