スペインのアンダルシア州セビリアで開催される復活祭「聖週間(セマナ・サンタ)」。1月27日に2024年の公式ポスターが発表されると、描かれたキリストの姿が「女性的」かつ「性的」であるとして批判が殺到しています。作者で世界的に活躍する地元出身のアーティスト、サルスティアーノ・ガルシアはインタビューに答え、これらの批判的な意見を真正面から切り捨て反論しています。

スペインでは重要な宗教行事=セマナ・サンタ
いわばスペイン版のイースターとしてキリストの受難・死・復活を祝福するセマナ・サンタは、スペイン全土で行われており、アンダルシア州では特に盛ん。祭りが開かれる1週間は学校や会社も休みになり、観光客にも人気の行事です。
2024年の公式ポスターには、赤い背景に、紐と白い布を腰に巻いたキリストが描かれたサルスティアーノの作品が起用。美しく神秘的な顔立ちに、右胸の下と左手に小さな傷があり、わずかに身体を傾けながら左手の人差し指で右胸の傷を指しているように見える構図で、キリストの復活した姿が描かれています。このポスターは市内中に貼られる予定でしたが、SNSでは発表と同時に批判が殺到し、撤回を求める声までがあがる事態となっています。
批判と擁護が寄せられた公式ポスター
批判の中には「キリストの受難と、輝かしい復活に対する侮辱だ」「宗教を性的なものにしている」「例えばこのポスターを妻の家族に見せるのは恥ずかしいと思う。作品や個人の資質に触れたくはないが、こんなものを受け入れた責任者の名前を知りたい」「恥ずべきことだし、私たちのセマナ・サンタに対する気持ちへ敬意が感じられない」などと何世紀もの歴史を持つ宗教的な行事にふさわしくないとするものが多数。
また、「何で僕のママがポスターに?」「化粧をしているようにみえる」など、男性であるキリストがとても女性的に描かれているとの主張も。「セビリアのLGBTプライドパレードのポスター、素晴らしいと思うよ。今度はセマナ・サンタのポスターが見たいな。本物のね」とまるでプライドパレードのために描かれたようであるとするものも多く見られました。
一方、この絵を擁護する人たちからは、現代的な表現との反論が。「これは美しく価値あるキリスト像で、敬意に満ちている。彼は偏見に満ちたスペインにまだ多くの課題があることを教えているのだ」「復活したキリストに“男性的”という属性をつけていることがまだ私たちが洞窟の時代にいるということ」「どの時代でも、それぞれの時代に合わせたキリストが描かれてきた。これが僕たちの時代なんだよ」「どのような人物であったか、あるいは存在したかどうか誰にもわからない人物について、デジタルでどう表現するか言い争うとはね」など、絵の美しさをたたえ感銘を受けたという声や、キリストの姿がこうあるべきと誰かが決めることはできないといった意見が聞かれました。
しかし批判する声の中には、「全くもって無礼で否定的。そしてそのイメージを祝福し肯定しているのは、信者ではない人たちなんだよ」など、この問題は敬虔(けいけん)なクリスチャンによって語られるべきであると反論する声もあがっています。
アーティスト本人は芸術が政治利用されていると不快感

これらの強い批判に対し、スペインの「ABC de Sevilla」紙のインタビューに答えた作者のサルスティアーノは「驚いた」と率直な感想をコメント。「私の作品は優しくエレガントで美しいので、好意的なものはあるだろうと予想していた」と喜ばれこそすれ非難は全く予想していなかったと述べました。
また、普段は自身の作品には好意的な感想が寄せられることが多く、今回の作品についても誰もが一度は足を運ぶ教会や美術館で見られるような何世紀も前の絵画に描かれているものと同じ要素しか描かれていないとのこと。「私の作品にネガティブな批判をしたり、性的なものを見たりする人には、もう少し芸術的教養が必要だ」と批判を一蹴しました。
しかし同紙のオンライン読者を対象にアンケート調査を行ったところ、87%の読者がこの絵の表現はセマナ・サンタにふさわしくないと回答する結果に。サルスティアーノはこの結果に「この絵は、スピリチュアリティ、愛、尊敬のメッセージ」とし、「今回の論争で私が驚いたのは、芸術作品が政治化され、この党派に属するとか、この性的な風潮に属してるとかいわれていることだ。まるで私の絵が左翼的であるかのように。ばかげている」と芸術への視点がずれていると指摘しています。
さらにインタビュワーが「まるでゲイ・プライド・デーのポスターのよう」といわれていることに対し感想を聞くと、「気にならないし、面白くもなかった。社会は政治化され、同性愛はある政党と政党のあいだで戦争の武器のように使われている」「私の(描いた)キリストの姿勢も裸体も、何世紀も前の芸術作品で描かれているもの。(作品でキリストが身に着けている)布は十分に貞節だ」と古典的な構図や題材を扱ったものであり、また芸術を自分たちの主張を強調するための道具にするべきではないとしました。
今回「女性的」と多くの人が批判したキリストの顔は、サルスティアーノの27歳の息子オラシオをモデルに描いたもの。「オラシオは男らしくハンサムでスポーツマンで、SNSではいろんなことをいわれる。彼はヘテロセクシュアルだが、もしホモセクシュアルだとしても同じようにすばらしいだろう」と語り、オラシオがこの絵を初めて目にしたときは、「彼は私の目を見つめて目を潤ませ、長い間抱きしめてくれた」と感動的な時を過ごしたことを明かしました。
また、自身に2024年のセマナ・サンタ公式ポスターの依頼が来た理由について、「サルスティアーノの名によって、ポスターを国際的なものにしたかったのだろう」とし、「私が望んだ形ではないにせよ、それは達成されたようだ」と皮肉を込めてコメントしています。
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