約2世紀にわたって科学界から姿を消していた「ブルーベリー」の近縁種が、インド北東部の森で見つかりました。1836年を最後に記録が途絶えていた希少植物「ワッカニウム・ピリフェルム」(Vaccinium piliferum)です。
確認されたのは、わずか16株。絶滅した可能性すら指摘されていた幻の植物の復活に、植物学界が注目しています。
約188年間、消息不明だった野生のブルーベリー
今回発見されたワッカニウム・ピリフェルムはツツジ科の植物で、ブルーベリーやクランベリーの野生近縁種。教育・環境開発協会(SEED)やCSIR北東科学技術研究所(CSIR NEIST)などの研究チームが、アルナーチャル・プラデーシュ州チャンラン県ヴィジョイナガルの密林で確認しました。
この研究成果は、2026年5月18日付けの国際植物ジャーナル『Feddes Repertorium』に掲載されています。
この植物が初めて記録されたのは1836年。英国の植物学者ウィリアム・グリフィスが、現在のアルナーチャル・プラデーシュ州にあたるミシュミ・ヒルズで採集しました。1850年にはメガラヤ州カーシー・ヒルズでも採集されましたが、それ以降、科学的記録は途絶えていました。
今回、再発見された場所は、ノア・ディヒング川支流付近、標高1150〜1280メートルの森林地帯。この植物は、高さ4.5メートルほどまで成長するつる性低木で、樹木に絡みつきながら育ちます。淡い緑色の鐘形の花を咲かせ、果実は青白いワックスをまとった濃紫色。見た目はブルーベリーそのものです。
確認されたのは、わずか16株
今回の調査で確認されたのは、約2平方キロメートルに点在する16株だけ。その多くは互いに離れて生育しており、個体群はきわめて脆弱な状態にあります。
国際自然保護連合(IUCN)は、すでにこの種を絶滅危惧種に分類。研究チームは全個体のGPS座標を記録し、今後の保全につなげる方針です。
アルナーチャル・プラデーシュ州のチョウナ・メイン副首席大臣は、この発見を「州の自然史における画期的な出来事」と評価しました。豊かな生物多様性を示すと同時に、ヒマラヤの脆弱な生態系を守る必要性を改めて浮き彫りにした形です。
このまま十分な保護策が講じられなければ、詳しい研究が進む前に、姿を消してしまうおそれもあります。
未来のブルーベリーを変える鍵になる可能性も
この発見が注目される理由は、珍しい植物が見つかったというだけではありません。
ワッカニウム・ピリフェルムは、野生種ならではの高い環境適応能力を持つ可能性があります。将来的には、気候変動や病害虫に強いブルーベリー品種の開発を支える貴重な遺伝資源として期待されています。研究者たちは今後、この植物が持つ薬用成分や栄養特性、耐性遺伝子などの詳細な分析を進める予定です。
もし適切な保全と研究が進めば、農業や食料生産の未来を支える重要なヒントになるかもしれません。一方で、対策が遅れれば、このわずか16株の個体群が再び歴史の中に消えてしまう可能性もあります。
約188年の沈黙を破って姿を現した幻のブルーベリー。東ヒマラヤの深い森には、まだ誰にも見つかっていない次の発見が眠っているのかもしれません。
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