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6月24日、「KADOKAWA」の定時株主総会が開かれます。香港のアクティビストファンド、オアシス・マネジメントが提出した、夏野剛社長の解任を求める株主提案の賛否が問われる場です。議決権行使助言会社のISSとグラス・ルイスがそろって解任に「賛成」を推奨しており、海外投資家の票がどう動くかは予断を許しません。
日本を代表するコンテンツ企業のトップ人事が、物言う株主の手で覆るかもしれない――。実はわたし自身、長年このKADOKAWAというメディア企業に書き手として育てられてきた一人です(くわしい立ち位置は記事の末尾で述べます)。だからこそ、複雑な思いもあります。
なぜこんな状況になったのか、最近の動きだけでは見えてきません。順を追って見ていきましょう。
ライター:まつもとあつし

中学生のときに『王立宇宙軍 オネアミスの翼』をみてしまい、そこからアニメにのめり込む。そのまま大人になり、IT・出版・広告・アニメの会社などを経て、現在はジャーナリストとして取材・執筆をしながら、大学でアニメを中心としたメディア・コンテンツの教育・研究に取り組んでいる。ゲーム、特にJRPGやマンガも大好き。時間が足りない。
公式サイト:http://atsushi-matsumoto.jp/
X:@a_matsumoto
安定しなかった資本構成と、ソニーの「救済」
いまの混乱の根にあるのは、KADOKAWAの資本構成の不安定さです。近年、同社株は外資による買い増しの標的となり続けてきました。為替の影響もあって時価総額に対して割安と見なされやすい――その構造が、外資を中心とした投資家の食指を動かしてきたのです。
2024年11月、ソニーがKADOKAWAの買収協議に入ったと報じられると、株価はストップ高と急騰しました。「エルデンリング」のフロム・ソフトウェアを傘下に持つKADOKAWAは、「鬼滅の刃」の成功も背景にIP獲得を急ぐソニーにとっても「宝の山」でした。
もっとも、買収や経営統合は観測報道にとどまり、2024年12月に両社が発表したのは資本業務提携でした。
ソニーが約500億円を追加出資して約10%を握る筆頭株主となり、取締役を一人派遣する――外資買収からの「救済」と「緩やかな連携」の形です(注1)。完全な統合に踏み込まなかった背景には、独占禁止法上の論点やKADOKAWA側の独立性をめぐる事情があったと見られます。加えて、後述する教育事業のように、ソニーとシナジーの見えにくい領域の扱いも影響したと考えられます。この点はわたしのITmedia連載「アニメノミライ」で、数土直志氏も指摘していました(注2)。
なお、ソニーのIP拡張の動きはKADOKAWAだけにとどまりません。2025年7月にはバンダイナムコHDの株式約2.5%を約680億円で取得し、業務提携を結んでいます(注3)。アニメ・マンガIPを軸に有力IPホルダーを緩やかに束ねる「IPアライアンス」のなかで、KADOKAWAはその一角という位置づけになっていました。
(注1)ソニーグループとの資本業務提携(ソニーが約500億円を追加出資し約10%を保有する筆頭株主に、取締役1名を派遣)── ソニー/KADOKAWA 2024年12月19日発表(第三者割当の払込は2025年1月7日)。
(注2)まつもとあつし「巨大エンタメ企業に潜んでいた“死角”――ソニーのKADOKAWA買収は外資牽制の一手になるか」(ITmedia「アニメノミライ」、2024年11月29日/数土直志氏との対談)。
(注3)ソニーによるバンダイナムコホールディングスへの出資(株式約2.5%=1,600万株を約680億円で取得し、戦略的業務提携)── ソニー 2025年7月24日発表。
アクティビスト・オアシスの登場と、株主総会の行方
そして2026年、ソニーに代わって筆頭株主に躍り出たのが、冒頭のオアシス・マネジメントです。600億円あまりを投じて急速に買い増し、保有比率は約13.8%に到達(注4)。間髪を入れず、6月24日の株主総会に向けて夏野社長の解任を求める株主提案を突きつけました。
記事執筆時点の株主構成を整理しておきます。
| 主な株主 | 議決権比率 | 備考 |
|---|---|---|
| オアシス・マネジメント | 約13.8% | 2026年6月時点。3月に筆頭株主化。 |
| ソニーグループ | 約10.0% | 2025年1月の資本業務提携で取得。 |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.23% | 信託口(年金・投信など)。 |
| ゴールドマン・サックス・インターナショナル | 9.83% | |
| 韓国証券預託院(サムスン名義/カカオ系とみられる) | 8.51% | |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.25% | 信託口。 |
| 川上量生(取締役) | 4.08% | 個人。 |
ソニーと信託口を除けば、ゴールドマン・サックス、カカオ系とされる韓国筋まで、外資系の名が上位に並びます。割安なIPの宝庫に内外の資金が流れ込んだ帰結が、オアシスの筆頭株主化でした。
オアシスの主張は手厳しいものです。EPS(1株あたり純利益)は夏野氏就任前の77円台から33円台へ半減し、ROEも大きく落ち込んだ。「質より量」の戦略が出版IP創出を弱め、フロム・ソフトウェアからの価値流出も続いている。動画工房ののれんは1年で全額償却、サクラタウンでも累計約54億円を減損した――(注5)。
夏野体制への通信簿としては、たしかに厳しい数字です。取締役会はこれに反対を表明し、新中期経営計画の実行初期にトップを代えれば改革の継続性が損なわれる、と反論しています。
ただ、この数字の見せ方には注意も必要です。
サクラタウンの減損は、後段で触れるオンデマンド出版の工場で生じたものではなく、EJアニメホテルなど文化・観光施設の側で出たものです。しかも、この複合施設を構想したのは、当時会長を務めていた角川歴彦氏でした。角川武蔵野ミュージアムを核とする一大プロジェクトが、よりにもよってコロナ禍の2020年に開業し、宿泊もイベントもインバウンドも冷え込んだ――それが減損の最大の要因です。
“種をまいたのは前の経営、コロナ禍という外患の痛みを処理したのが夏野体制”という構図を、夏野氏一人の失策として並べるのは、いささか酷でしょう。しかも文化施設はコロナ禍明けに持ち直し、直近の2026年3月期は関連事業も好調だったと報告されています。過去の一点で切り取るか、改善の現在地まで含めて見るかで、評価はずいぶん変わってくるのです。
象徴的なのは、撤退したEJアニメホテルとほぼ入れ替わるように、2023年、サクラタウンに川上量生氏の肝いりのN高・S高のキャンパスが入ったことです。歴彦氏が夢見たIP聖地の宿が退き、ネットと教育をかけ合わせた新しい学校が入る。川上氏らニコニコ由来の経営陣の関心が、出版という祖業や文化振興から教育へと重心を移していることの象徴のようにも見えます。
取締役の川上氏は、自身のXで解任提案への明確な反対を表明しました(注6)。夏野氏が辞めれば現場は混乱する、その手腕は正当に評価されるべきだ――。
この気持ちは分かりますし、川上氏も夏野氏も、もとは歴彦氏が主導したドワンゴ統合でKADOKAWA入りした「ネット側」の経営陣ですから、かばうこと自体は不思議ではありません。ただ、上場企業の現役取締役が争点となっている案件をSNSで論じ、歴彦氏の姿勢を非難する振る舞いは、かえって事案に注目を集めてしまい、得策ではなかったかもしれません。
創業家が招き入れたネット出身の経営陣が、いまや会社の中枢を占めていますが、持ち株比率=議決権では劣後している。その危機感の表れでもあり、KADOKAWAの複雑さがよく映し出されています。
株主の視点に立てば、問わずにはいられない論点も残ります。角川ドワンゴ学園に代表される教育事業は、出版・アニメ・ゲームという本業とどれだけのシナジーを生んでいるのか? 大株主であり続けるソニーとの提携は、本当に企業価値の向上に結びついているのか? 「IPという宝の山」を、誰がどう生かすのか――。
ISSとグラス・ルイスがそろって解任に賛成を推奨した(注7)以上、海外機関投資家を中心に相当数の賛成票が集まる可能性は否定できません。可決されるかは、ふたを開けてみなければ分かりませんが、結果がどちらに転んでも、夏野体制とその戦略に市場が突きつけた「ノー」が、もはや無視できない水準に達したことだけは確かです。
(注4)オアシスの保有比率「約13.8%」── 2026年6月11日付の報道(朝日新聞ほか)。オアシス自身の開示では約13.76%(2026年6月)。ソニーを抜いて筆頭株主となったのは2026年春。
(注5)EPS(77円台→33円台)、ROE(8.2%→0.5%)、フロム・ソフトウェアからの価値流出、動画工房ののれん全額償却、ところざわサクラタウンの累計約54億円の減損など、夏野体制を批判する数値── オアシスの株主提案・プレゼンテーション資料(www.abetterkadokawa.com、2026年)に基づく。
(注6)川上量生氏のX投稿(解任提案への反対表明、2026年)
(注7)ISS・グラス・ルイス両社が夏野氏の取締役解任に「賛成」を推奨── 2026年6月11日に判明(朝日新聞・日本経済新聞ほか)。
夏野体制が進めたDX――その功罪
では、オアシスが問題視する当の戦略とは、どんなものだったのか。
夏野氏といえば、NTTドコモで「iモード」を立ち上げた人物です。その手腕のもと、KADOKAWAは事業全体のDXを強力に推し進めてきました。スピードと数字を重んじる経営は、旧来の出版社の体質を大きく変えたのです。
その象徴が、サクラタウンに整備されたデジタル書籍製造・物流の拠点、なかでもオンデマンド出版(製販一体型のブックオンデマンド)施策でした。「出版製造流通DXプロジェクト(BEC)」と名づけられたこの取り組みは、最新鋭のデジタル印刷機で100部単位の小ロット印刷を高速・高品質に実現するもので、その狙いは明快です。「見込み製造と大量返本」の悪循環を脱し、需要に応じた数だけ刷り、足りなければオンデマンドで補充する。「必要な本を、必要な人に、必要な時に」届け、「品切れ・重版未定」をなくす――。
デジタル製造書籍は2025年1月に累計3000万部を突破し、いまや自社発行書籍の重版の約3割をこの方式が担います(注8)。単なる設備更新ではなく、出版のビジネスモデルそのものを組み替える試みであり、発想としてはきわめて正しい方向です。
組み替えようとしたのは製造だけではありません。流通もです。KADOKAWAは所沢の物流拠点を軸に、取次を介さず書店と直接取引する動きを進めてきました。取次経由では店頭まで1〜2週間かかることもあったのが、直接配送なら早ければ翌日に届く。2018年には直接取引の書店を約1000店から約3300店へ広げ、先立つ2015年には大手出版社として初めてアマゾンとの直接取引にも踏み切っています。取次を排するわけではなく、物流の遅さを迂回し、ニッチなニーズにも応える試みですが、取次大手自身も従来モデルの維持に苦しむなか、紙の本の「届け方」に手を入れる挑戦を進めています(注9)。
ただ、このBECに象徴されるDXにも、副作用はありました。
最も世間を騒がせたのは、2024年6月のサイバー攻撃です。ロシア系とされるランサムウェア集団「BlackSuit」がグループのシステムに侵入し、ニコニコ動画をはじめ主要サービスが長期停止しました。止まったのはネットサービスだけでなく、受発注や出荷のシステムもダウンし、書籍・雑誌の製造・流通も機能不全に陥りました。DXで一体化させた基盤が、そのまま被害をサプライチェーン全体へ広げる経路になった――皮肉な副作用です。約25万人分の個人情報が流出し、復旧に数カ月、2025年3月期には約36億円の特別損失を計上しました。
深刻な事件でしたが、それでもグループ業績は、大きくは崩れませんでした。主力の出版が好調を保ち、減収を相当程度吸収してみせた――逆説的に、KADOKAWAの「IPの地力」を示した出来事でもありました。
むしろわたしが深刻だと感じたのは、外からは見えにくいもう一つの副作用です。
効率と数字を軸にしたDXは、現場、特に出版部門の編集者との間に少なからぬ摩擦を生んだとされます。編集とは本来、作家を見いだし、伴走し、何年もかけて一つの作品を育てる属人的な営みです。その文化と、四半期ごとの数字や標準化されたITベースのワークフローとは、本質的な部分で相性が良くありません。ハッキングのような目に見える危機よりも、こうした文化レベルのきしみのほうが、長期的にはボディブローのように効いてくる――実際、出版・編集の現場からは怨嗟の声がよく聞かれました。
夏野体制のもう一つのキーワードが、この「IP量産」です。多数の作品を世に送り出し、当たったものを大きく育てる。確率論的に勝ち筋を増やすという発想自体は、コンテンツビジネスの一つの正解ではあります。
後で述べる歴彦氏のメディアミックスも、見方によっては「IP量産」です。ただ両者の差は「育成にかける時間」にあります。歴彦氏が雑誌という場で作品と作家を時間をかけて育てたのに対し、IT基軸のプラットフォームでは、より短いサイクルで数を回し、当たったものを選び取る色合いが濃い。実際、KADOKAWAのIP創出は2025年3月期で6430点、中期計画では7000点を目標に掲げ、夏野氏自身「点数を増やしてヒットを狙う」と公言してきました(注10)。
やや乱暴に言えば、これはかつての「iモード公式サイト」と、そこにコンテンツを供給するコンテンツプロバイダー(CP)の関係に近くないでしょうか。場を用意し、供給側が数を出し、当たったものだけが残る。効率的ではあります。
しかし、出版社としての作品一つ一つへの「愛」はどこまで宿っていたのか。オアシスの「質より量がIP創出を弱体化させた」という批判も、この問いと地続きです。老舗の本の情報誌『ダ・ヴィンチ』が2026年11月号での休刊を発表した(注11)のも、出版・IP創出事業の営業利益がほぼ半減し、自ら「なろう・異世界系への偏重」を課題に挙げるなかでのことでした。数を回して確率を追求する戦略が軋み始めている――そうも読めるのです。
(注8)デジタル製造書籍が累計3000万部を突破(2025年1月時点。年間生産は850万部見込み、KADOKAWA発行書籍の重版の約3割をカバー)── KADOKAWA「出版製造流通DXプロジェクト」プレスリリース(2025年1月16日)ほか
(注9)KADOKAWAの書店との直接取引拡大(約1000店→約3300店、取次を介さない直接配送で翌日配達も)は、2018年7月の日本経済新聞報道。アマゾンとの直接取引開始(大手出版社として初)は、2015年4月。
(注10)IP創出点数は2025年3月期で6430点、中期経営計画では2028年3月期に7000点を目標── KADOKAWA統合報告書/決算資料。「点数を増やしてヒットを狙う」は夏野氏インタビュー(JBpress、2025年11月)ほか
(注11)月刊『ダ・ヴィンチ』が2026年11月号で休刊し「ダ・ヴィンチWeb」へ移行── KADOKAWA発表(2026年5月26日)
歴彦氏が築いたもの――合併とメディアミックス
KADOKAWAという会社の本質を語るうえで、歴彦氏のメディアミックス手腕は避けて通れません。
歴彦氏は、兄・角川春樹氏との激しい相剋のなかでキャリアを歩みました。当時の出版の壁を崩す破天荒なアプローチで国民的ヒット映画を志向した春樹氏に対し、歴彦氏が確立したのは、雑誌を起点とした緻密で同時多発的なメディアミックスです(この経緯はマーク・スタインバーグ『なぜ日本は〈メディアミックスする国〉なのか』〔中川譲訳、大塚英志監修、2015年〕に詳しい)。
その核心は、雑誌をプラットフォームにした点にあります。誌面でさまざまな作品と作家を育て、読者コミュニティを醸成し、そこから複数の作品を同時にアニメ、マンガ、ゲームといったメディアミックスへ展開していく。雑誌そのものが、IPのインキュベーターでありショーケースでした。
プラットフォームの展開は自前の媒体にとどまらず、2000年代以降、エンターブレイン、中経出版といった出版社を次々と傘下に収め、KADOKAWAという複合体を築きました。そして、ネットの時代を迎えて「次のプラットフォーム」として選んだのがニコニコです。
2014年のKADOKAWA・ドワンゴ経営統合――ニコニコ動画のネット企業と伝統ある出版企業の合併は、わたしには極めて正しいアプローチに見えました。連続買収で版図を広げてきた歴彦氏にとって、雑誌からネットへの一手は自然な延長で、夏野氏や川上氏が経営に加わったのも、この合併がきっかけでした。雑誌起点のビジネスの先にネットのプラットフォームを据える――その判断は、いま振り返っても先見性があります。
春樹氏に続き、歴彦氏もまた――創業家と五輪汚職
兄・春樹氏と歴彦氏の関係も非常に興味深いものがあります。兄・春樹氏が薬物事件で会社を追われ、その後を継ぐ形で社外に出ていた歴彦氏が復帰したことは、よく知られています。そして弟である歴彦氏も、東京五輪をめぐる汚職事件に名を連ねることになります。歴彦氏は2022年に逮捕され、一貫して無罪を主張してきましたが、2026年1月、東京地裁は懲役2年6月・執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。大会スポンサー選定の見返りに組織委元理事側へ多額の謝礼を提供した、というのが一審の認定です。ただし歴彦氏は不服として控訴し、記事執筆時点では東京高裁で係争中です。
そして、総会を目前にした2026年6月16日、事態はさらに異例の展開を見せました。歴彦氏が、夏野氏とガバナンス検証委員だった弁護士を相手取り、名誉毀損と防御権侵害で計2億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴したのです(注12)。
争点は、KADOKAWAが2023年に公表した調査報告書が、本人に弁解の機会を与えないまま「贈賄に該当する可能性が高い」と認定・公表した点です。会見で歴彦氏は「経営に復帰する野心はない」と述べ、提訴は「人質司法」への問題提起だと位置づけましたが、創業家の元トップが自ら引き上げた現社長を総会直前に訴える状況になっています。
(注12)角川歴彦氏が夏野剛社長およびガバナンス検証委員(國廣正弁護士)を相手取り、名誉毀損・防御権侵害を理由に計2億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴(日本外国特派員協会で会見、代理人は郷原信郎弁護士)── 2026年6月16日(文藝春秋オンラインほか各報道)。
終わりに――イノベーションの芽を摘むことのない結果を
筆者は冒頭で触れたとおり、KADOKAWAとは長い付き合いがあります。傘下のアスキー(ASCII.jp)では連載を持たせてもらい(注13)、月刊『ダ・ヴィンチ』やそのWeb版にも長く寄稿してきました(注14)。いま矢面に立つ夏野氏には、ITmediaで教育をテーマにインタビュー(注15)し、同氏のアスキー新書『iPhone vs. アンドロイド 日本の最後の勝機を見逃すな!』(2011年)にも編集協力として名を連ねています。歴彦氏が指揮をとった『角川インターネット講座』(全15巻、2014〜2015年)の応援企画(注16)でも、監修陣への取材・執筆を担いました。
そのうえで正直な実感を述べるならば、出版という産業が地殻変動に揺れ続けるなか、KADOKAWAは――歴彦氏のメディアミックスから、ネット企業との統合、夏野体制のオンデマンド出版や直接流通まで――節目ごとに一歩先を見据える選択を続けてきました。もちろん、この記事で述べたように副作用がなかったとは言いません。それでも、進もうとした方向そのものは、いま振り返ってもおおむね正しく必要な挑戦であったと個人としては考えています。業界が揺れ続けるなかでビジョンを示しつづけてきた、稀有な存在だった――そう言ってもいいのかもしれません。
6月24日に何が決まるか、時期が時期だけに、軽々に見通しを語るべきではないでしょう。ただ、結果がどちらに転んでも、KADOKAWAが示してきた「一歩先を見る」姿勢だけは、これからも手放さずにいてほしい。長く付き合ってきた一人として、そう願っています。
(注13)まつもとあつし「メディア維新を行く」連載(ASCII.jp)
(注14)月刊『ダ・ヴィンチ』寄稿一覧(ダ・ヴィンチWeb)
(注15)夏野剛氏へのインタビュー「体育系の人間はもう要らない!? 夏野剛氏に学ぶ、グローバル時代に必要な教育」(ITmedia、2014年1月14日)
(注16)「『角川インターネット講座』(全15巻)応援企画」(ASCII.jp)






