声優として数々のキャラクターを演じてきた赤尾ひかるさんが、7月31日発売の小説『甘い制服をまとって』(KADOKAWA)で小説家デビューを果たします。

 ある私立の女子校を舞台に、揺れ動く登場人物の繊細な心情を描写した本作は、赤尾さん自身が経験した女子校生活がふんだんに散りばめられているのだとか。小説家デビューを目前にした今の心境や、「百合」作品との出会いや魅力、創作秘話、ファンに伝えたい注目ポイントなど、赤尾さんに話を聞きました。

小説家デビューする赤尾ひかるさん
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『甘い制服をまとって』あらすじ

 純粋培養の乙女たちの集う学園・私立セレーネ女学園。高等部からの新入生・犬甘ゆらは、憧れの生徒会長・聖川林檎が率いる「白薔薇会」へ入会し自分を変えるために一歩踏み出そうとする。しかし、そんなゆらの目の前に、涼しげな雰囲気を纏う美少女が現れる。

「ゆらが入るのは、マシュマロ会」

 美少女の謎は残りつつも、白薔薇会の門を叩くが「会員は募集していないの」と断られてしまう。その言葉に胸を痛ませているゆらの手を引いたのは、先ほどの美少女だった。

 美雪姫奈というその美少女は、「白薔薇会を潰す」という過激な目的を掲げ、表向きには放課後にマシュマロを配るだけの平和なサロン「マシュマロ会」に所属しているという。

 ゆらにマシュマロ会に入ってほしいと勧誘してくる美雪は、強引でトンチンカンで、戸惑うことばかり。だけどその行動のなかには不器用な優しさが確かにあり、ゆらは次第に美雪に惹かれていき――。

 マシュマロのように甘くて可愛さ1000%のガールズラブコメディ。

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「いつか本を書いてみたい」が実現 小説家デビュー目前の思い

――7月31日に小説家デビューを控えた、率直なお気持ちは

赤尾:「いつか本を書いてみたいな」というほんわかした夢がついに実現することになり、とても光栄です。この時代に紙で出版できるというのは本当に貴重な機会なので、いただいたご縁を大切にしていきたいと思っています。KADOKAWAさんと一緒に作らせていただいた作品と、手に取ってくださる皆さまとのご縁を深めていけたらなという希望で満ちあふれています!

サイン会などのイベントも予定していて「人がいなかったらどうしよう……」と心配になったりもしますが、みんなで大切に作り上げてきたので、発売日が待ち遠しいです。はやく皆さんに楽しんでいただきたいなと思っています。

――ドキドキされていますか

赤尾:皆さんが読んでどんな反応をするのだろう、というドキドキはありますね(笑)。やっぱり、読んでいただいて初めて作品が完成すると思うので。皆さんとあたたかい気持ちを育めたらと思っています。

――今回小説を書くことになったきっかけをあらためて教えてください

赤尾:元々、朗読劇の脚本を担当していたんです。初めて脚本を書いたとき、朗読劇のアフタートークで「小説が好きで、小説を書いてみたかったので、地の文が多い脚本を書きました」とお話したところ、それを聞いたマネージャーさんが「小説書きたかったの? 書いてみたいの?」と聞いてくれました。これまでお仕事として小説を書いた経験は全くありませんでしたが、マネージャーさんがそれをきっかけに、私が書いた脚本や、過去に趣味で書いた短い文章を集めてKADOKAWAさんに持ち込んでくれたんです。脚本も処女作を持ち込んだので、まだまだ未熟な文章だったのですが、『甘い制服をまとって』担当の編集者さんが受け入れてくださって。プロットも真剣に向き合ってくださり、小説執筆がスタートしました。

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『セーラームーン』をきっかけに百合と出会う 女子校生活で育まれた世界観

――小さいころから物語を考えたりするのが好きだったのでしょうか

赤尾:そうですね。よく学校のお友だちとの妄想をしていました。小学校のときに授業で初めて書いた物語は、「夏の妖精と冬の妖精は会いたくても会えないから、海に小瓶を流してやりとりをする」というものでした。原稿用紙数枚だったと思います。

――本作と通じるロマンティックさがありますね

赤尾:意識したことは全くありませんでしたが……。『甘い制服をまとって』は百合の作品なので、『マリア様がみてる』や、私が百合を知るきっかけになった『セーラームーン』シリーズの影響はあるかもしれません。美しいビジュアルや、ロマンティックな展開がすごく好きだったので、その影響は体にしみこんでいるのではないかと思います。

――「百合」を知るきっかけはセーラームーンだったんですね

赤尾:そうなんです。セーラームーンを見たときに、とても不思議な感情が芽生えました。そのころは男女間の愛のかたちしか知らなかったので……。「男の子なの? 女の子なの?」といろいろ自分のなかで模索しました。アニメも漫画も読んで「女の子なんだ!」となり、女性同士が手と手を取り合う姿と、友情より強い感情がすてきだなと思いました。美しかったんですよね。そして中高は女子校だったので、女子と女子の距離の近さ、憧れ、恋焦がれる気持ちなどを知って、今に至ります。

――「百合」作品の魅力をどう捉えていますか

赤尾:「百合」には独特の美しさがあると思っています。もちろんどんな愛情にも美しさはありますが、女性同士ならではの、やわらかさや艶やかさ、なまめかしさが重なり合う美しさがあるのではと。心についても、特別感が生まれやすいと思っています。友情の段階でも「私たちのおそろいね」「これは2人だけの秘密」というやりとりがあり、その延長でどんどん深まっていく愛が、特別感があってすてきだと思っています。

――女子校での経験が作品に生かされた場面はありましたか

赤尾:女子校での経験が生かされたのは、登場人物それぞれが持つ、学園への思いですね。私が通っていた学校は、学校が大好きな子が多かったです。もちろん、宇佐美ちゃんのように「なんでここにいるんだろう?」と思っている子もいましたが、女子が集まって一致団結する強さや、おもちゃ箱のようなわちゃわちゃした雰囲気がありました。実際に卒業した先輩が教師として赴任されていて、若い先生から年配の先生までいらっしゃいました。学校生活で培った学校への愛が、伝統として残り続けているところは作品に投影されていると思います。

――作品に登場する「乙女先生」にはモデルがいたんですね

赤尾:そうですね。実際に、私が中等部の時の担任も学校の卒業生でしたし、文化祭には毎年OGが集まる「〇〇会」というものがありました。いつ参加しても「お久しぶりです~」と気軽に話せる雰囲気です。 

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「キャラクターが手を離れて動き出した」 8カ月かけて完成した創作秘話

――赤尾さんに似ているなと思うキャラクター、思い入れのあるキャラクターはいますか

赤尾:やっぱりゆらと美雪の関係に思い入れが強いです。2人がどういう関係になるのか、2人の感情がどんどん生きて動いて逃げていくので(笑)。他には、うさちゃん(宇佐美かほ)は書きやすくて思い入れがあります。言葉が少ない分、感情の軸がしっかりしているというか。ほわほわしていますが、流されるままに見せかけて、実は言葉ではしっかり表現できているキャラクターです。なのでうさちゃんのシーンはすごく筆が乗りやすかったです。好きなキャラクターですね。

2章あたりまでは、プロット通りに着々とキャラクターたちが動いていたのですが、3章からいろいろなキャラクターたちと触れ合うことで、キャラクターたちが違う表情を見せることが多くなりました。2人の感情も違う方面に動き始めて、変わっていきましたね。どんどん成長し、葛藤していきました。

――「どんどんキャラクターが動いていった」とのことですが、執筆前に「こういう風に書きたいな」と思った表現や、実際に執筆して「こういう表現ができたな」と思ったところはありますか

赤尾:書き始めたときは地の文が多く、説明文が多かったです。なので自分でいろいろと勉強して、「これじゃあ皆さんがプロローグを終えられないかもしれない。自分が書きたい文だけではなくて、皆さんが楽しめる作品にしなければ」と思い、後半になって冒頭も書き直し、セリフを多めに分かりやすい文章にしました。

美雪は、最初はミステリアスな女の子にしようと思っていました。ですが、途中でいろいろな表情を見せてくれるようになったので、もっと皆さんに応援してもらえるような、好きになってもらえるような女の子にしたい、とそこを目指して表現しました。

私にとっては初めての小説なので、何が正解なのか、どういうものが読みやすいのかを試行錯誤しています。完成前に大幅に変えたところもあり、やっと完成させることができました。

――執筆期間はどのくらいだったんでしょうか

赤尾:基本はどのくらいなのか分からないんですが、小説を書き始めてから完成までは8カ月でした。プロットや校正を含めるともっと長いです。

――本業の声優も務めながらの執筆は大変だったのでは

赤尾:大変……でした(笑)。ですが本当に光栄なお仕事で、趣味を仕事に変えていただいた大切なご縁なので、やりきりたいと思っていました。書くのもすごく楽しかったです。もちろん、時間を作るのは大変ですが、書いているときはすごく楽しくて。「本当にありがとうございます」という気持ちしかなかったです。

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「比喩表現や女子校ならではの空気感を楽しんで」 読者へのメッセージ

――ファンの方に向けて、声優の赤尾さんと小説家の赤尾さん、「こういうところを見てほしい」という思いはありますか

赤尾:声優も小説家もキャラクターへの寄り添い方は同じだと思っています。声優の場合は、音響監督やディレクターのOKが出て初めて完成になりますが、今回は“自分が作って自分が正解にしていく作業”だったので、作品から私のこだわりや、私の好きなもの、オリジナリティを感じていただけたらうれしいですね。

――読者に注目してもらいたいところはありますか

赤尾:文章の表現や比喩表現は、読んですっと入ってこない言い回しもあると思います。ですが、そういうところを楽しんでいただけたらなと思っています。あとは、女子校生活を基にして書いているので、例えば男性の方には「こういう場面があるんだ」と思っていただいたり、女性の方には「あるある」「そういう子もいたよね」と思っていただけたらうれしいな、と思っています。

――今後、小説家としてどんな挑戦をしたいですか

赤尾:まずは、もし『甘い制服をまとって』の続編を書かせていただけるとしたら、まだ名前が出て来ていない中等部の2人を名前もつけて、イラストも描いていただきたいです、私が見たいです(笑)。

他のサロンとマシュマロ会が協力してイベントをするストーリーも書きたいですし、みんなにかわいい格好もしてもらいたい。楽しくわちゃわちゃした世界をもっと見てみたい、いろいろなことをみんなにやってほしい、と思っています。

もし他の作品を書くとしても、絶対に「百合」です。舞台は女子校に限らないですが、他の世界観の作品になったとしても、絶対に百合の作品を書きたいと思っています。

(了)

書籍情報

作品名:『甘い制服をまとって』
著者:赤尾 ひかる
イラスト:館田 ダン
定価:1650円
発売日:2026年07月31日
発行:株式会社KADOKAWA(角川スニーカー文庫)
判型:四六判
ISBN:9784041175149

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