「大人がプリキュアを好きでいること」に、何も問題はありません。

 しかし、その「好き」をどんな場所で、どのようなかたちで表現するのかについては、少し慎重に考える必要があります。

 そんな課題があらためて浮き彫りになる出来事が起きてしまいました。

おジャ魔女どれみとのコラボも話題となった「名探偵プリキュア!」

 10月9日、プリキュアシリーズ公式から「ファンの皆様へのお願い」と題する注意喚起の文章が発表されました。

 その内容は、プリキュアイベントでごく一部の方による迷惑行為が確認されたとして、場合によっては「警察への通報や法的措置も視野に入れる」と明言する強いトーンの声明でした。

 この声明をきっかけにSNSでは議論が広がり、「大人ファンはプリキュアショー出禁にすべきだ」といった意見から、大人ファンの年齢や外見を巡る否定的な発言といった本来の趣旨から大きく逸れた声まで飛び交いました。

 今回、問題の発端となったイベントでは何が起きたのでしょうか?

 そして、大多数を占めるであろう「ルールを守って応援している大人ファン」は、ファミリー向けのショーにおいてどのように振る舞うべきなのか、あらためて考えてみたいと思います。

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実際に何が起きたのか?

 プリキュア公式が声明を出すきっかけとなった出来事については、直接言及されていません。しかし、声明が出る直前にSNS上でファミリー向けショーにおける不適切な行為が大きな問題となっていたため、それを受けてのことだと推測されています。

 住宅展示場やショッピングセンターなどで行われる無料のプリキュアショーは、そもそも「ファミリー層の集客」を目的として開催されています。

 最近では、こういった無料イベントで、安全対策のためにステージ前方に「ファミリーエリア」が設置され、入場するには所定の時間に並んで整理券をもらう方式が主流となっています(家族連れではない大人には後方にスペースが用意される場合や、そもそも大人のみでの観覧が制限されている現場もあります)。

 しかし、今回問題となったのは、ある人が「自分は家族連れである」と偽って単独で複数枚の整理券を入手し、整理券を取れなかった家族連れと交渉して、同伴者としてファミリーエリアに侵入し、大人1人で最前列からショーを観覧したという行為です。

 これをSNSで「ファミリーエリア攻略法」として公開したために批判が殺到したのです。

 これは「配慮が足りなかった」というマナーの問題ではなく、「人をあざむいて、本来は入れないエリアに侵入する」という明確な「ルール違反」です。

 こうした行為は、ファミリー向けイベントの根幹を揺るがすものであり、子どもの安全のため公式が強い表現で線を引かざるを得ないのも当然のことと思われます。

 しかし、SNS上の議論は、この「明確なルール違反」への対応にとどまらず、大人ファンの「マナー」や「モラル」への言及にまで広がっていきました。

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公式は大人もターゲットにしている?

 2023年に「シリーズ20周年」を迎えて以降、プリキュアシリーズは大きな転換期を迎えました。大人向け展開の拡大です。

 かつてリアルタイムで作品を見て育った世代に向けて制作された「キボウノチカラ~オトナプリキュア’23~」や男子高校生の舞台作品「『Dancing☆Starプリキュア』TheStage」といった派生作品の展開をはじめ、大人向けのコスメやアパレル、グッズの発売など、公式が大人世代を明確なマーケットとして捉え、それまで以上に積極的にコンテンツを提供するようになりました。

 しかし、勘違いしてはいけないのは、これらはあくまで「子ども向けアニメーションの大人向け展開」であり、大人向けの展開が増えたからといって、「プリキュアのコンテンツに触れる全ての場が大人向けになったわけではない」ということです。

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プリキュアのイベントは大きく2種類に分かれる

 現在のプリキュア関連イベントは、その性質によって大きく2つに分かれています。

 一つは、今回問題となったショッピングモールや住宅展示場などで開催される無料のキャラクターショーです。

 これはもちろん、子どもたちやファミリー向けの施策、さらには「施設への集客」を目的として行われている「子どもとファミリーのための現場」です。

 そしてもう一つは、プリキュアライブや感謝祭イベント、ホールで開催される大型キャラクターショー(ドリームステージ)などの「大人にも席が与えられるもの」です。

 これらは大人にも有料の「指定席」が用意されており、公式が定めたレギュレーションの範囲内であれば大人でも全力で応援することができます。

 この2つは「ルール」や「レギュレーション」が異なるほか、TPO(時・場所・場合)も大きく異なります。

 ファミリー向けは「ファミリー向け」なのでそれなりの配慮が必要になってきます。

 しかし、公式が大人向けの施策を進めたことで、ファンの中には、いつの間にか「自分たちもターゲットなのだから、どの現場であっても等しく楽しむ権利があるはず」と思い込み、イベントごとの境界線を見失ってしまう人もいるのではないでしょうか。

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