未知なる世界であがき、もがけ。ドライなデザインについて来られるか?(2/3 ページ)

» 2005年06月17日 16時09分 公開
[水野隆志,ITmedia]

わかりやすさを排除する、特異な制作コンセプト

 さて、世界観とキャラクターを見るかぎり、サイバーパンクやハードボイルドが好きな人なら、心惹かれるギミックが満載であることは間違いないだろう。だが、キラー7を作ったのが、グラスホッパー・マニファクチュアであることを忘れてはならない。やはりこの作品でも、ゲームの約束ごとを意図的に破壊するという、これまで同様のテーゼが脈々と息づいているのだ。

 それは「プレイヤーに必要な説明しない」というスタイルにある。この作品には前述したような世界観と設定があり、それらはいちおうマニュアルには書かれている。だが、本編ではその説明が行われる前に、「天使」と名づけられたプロローグ・チャプターが開始されるのだ。

 プロローグといっても、そんなに短くはないので、プレイヤーは少なくとも数時間は、自分が何をしているのか、敵は何なのか、目的は何なのか、わからないままゲームをすることになる。この突き放したゲーム作りが非常に”らしい”のだ。

 説明役やヒント提供用のキャラクターは複数用意されているが、彼らはわざとあやふやで、よくわからない話し方をする。しかも、かなりクセのあるしゃべくりをする。ゲーム開始後もチュートリアルを見ることはできるが、これも懇切丁寧に教えてくれるというよりは、ボイスオンリーの突き放した説明になっている。

 しかも、チュートリアルをはじめとする各人の説明は、早送りができない。スキップは可能だが、聞きたいところだけ聞く、ということができないので、情報収集を行っても、未知の世界がいきなり明らかになるということはない。自分が何のために何をしているか、それはゲームを進めていくに従って、少しずつわかってくるのだ。

 それも、不鮮明なビジュアルが徐々にフォーカスが合ってくる、という感じで、決してわかりやすいとはいえない。だが、物語が国際的な陰謀に関わっていることを考えると、実務を請け負う殺し屋が、いきなりすべてを知っているというのは、かえって不自然だろう。その意味で、この一見、不親切に思える情報提供は、必然なのだともいえる。

photo ときおり現れてアイテムを渡してくれる生首少女スージー。彼女のセリフには、頻繁に顔文字が入る。他にも麻雀しているヤクザが、突拍子もなく「アンタ、背中が透けてるぜ」といってフリテンをかますなど、ノリそのものに、かなりクセがある

 突然、右も左もわからない空間に放り投げられ、目的の理由もわからぬままに敵を倒せ、といわれたら、大半のプレイヤーは不親切に思うだろう。しかも頼りになるはずのヒントキャラは、意味不明の言葉(としか最初は思えない)をつぶやくだけ。

 結果的に彼らをあきらめて、ともかくゲームを進めるしかなくなるのではないか。だが、攻撃方法や体力の回復方法もよくわからないのでどうにもならない。特にこのゲームでは敵の攻撃力が高めなので、あまり適当にやるとすぐゲームオーバーになってしまう。

食い下がって序章を突破すれば……

 だが、今回はさすがに大手メーカーのプロデューサーが入っているため、従来の諸作に比べれば、それでも格段に遊びやすくなっている。とっつきが悪く感じるかもしれないが、なんとか食い下がって欲しいと思う。

 序章にあたる「天使」の章を突破すれば、ある程度の説明が入るし、システムにも慣れてくるだろうから、次第にゲームを楽しめるようになっていくはずだ。シナリオ展開や乾いた世界観そのものは魅力的なので、いきなりあきらめてしまうのはもったいない。

 システム上では、大きく2つの特徴がある。移動と攻撃の方法だ。これはちょっと変わってはいるものの、手に負えないレベルではない。そしてこの2つのシステムを理解すれば、少しずつでもゲームを進めていけるようになるだろう。あとはマニュアルを併読しつつ、チュートリアルを聞いていけば、それまで未知だった領域が明らかになって、システム全体の構造が見えてくるはずだ。

移動は前進オンリーという思い切った発想

 移動の方法はかなり変わっている。アクションAVGでありながら、キャラクターは前方にしか進めないのだ。方向転換して後ろを向くことはできるが、左右や斜めに移動することができない。これは最初、かなり戸惑う。

 とはいえ、特定のイベントが発生すると自動的に停止してくれるし、左右に調べるべきポイントある場合は、そちらへ移動するための表示が示される(このルートの分岐点をゲーム上では「ジャンクション」と呼ぶ)。

 しかも行ったことがあるかどうかで表示色が変化するので、無駄な移動に時間が取られることがない。フラグが立つ場所を探してうろうろする、という手間がなく、慣れてくればなかなか快適だ。

photo 分岐点に到達すると、移動可能な方向が表示される。その方向に左スティックを入れればOKだ。走行中でも入力判定を受けつけてくれるので、あらかじめ方向がわかっているときは、かなりスムースに移動ができる

ざらついた恐怖感を演出する索敵システム

 クセがあるのが、攻撃方法だ。冒頭に入るチュートリアルでも、もっとも肝心な敵の迷彩に関する説明がなかったため、実戦に入ったとたんに混乱に陥る可能性が大なのだ。

 ヘブン・スマイルには、その名の通り、笑いながら接近しているという習性がある。マップを進んでいるとき、笑い声が聞こえたら、それが敵の出現の合図というわけだ。これは非常に明確で対処しやすいサインといえよう。

 敵の存在を察知したら、武器を構える(R1ボタンを押す)と、プレイヤー主観の射撃画面に移行する。ここでサイトを合わせて攻撃ボタンを押せばいいのだが、実はヘブン・スマイルは、特殊な都市迷彩で姿を隠しており、薄い影のようにしか見えない。

 とはいえ、ある程度近くであれば、プレイヤーには見えることは見える。ところが、この状態では、見えていたとしても絶対に攻撃が命中しないのだ。ヘブン・スマイルの迷彩は、単なる視覚上のカムフラージュではなく、システムとして機能しているのである。

 対処方法はというと、銃を構えている状態でL1ボタンを押して、索敵視界に入ること。これで攻撃が可能になる。L1ボタンを放すと索敵は解除されてしまうので、戦闘中は、R1、L1の両ボタンを押しっぱなしで、その他の攻撃ボタンを操作させられることになる。

photo R1ボタンで射撃モードに以降。だが、この状態ではヘブン・スマイルは認識できない
photo R1ボタンを押しっぱなしでL1ボタンを押すと索敵視界に。これで攻撃が可能になる

 通常と索敵時の視界を分けているのは、敵に通常の人間(彼らは索敵しなくても攻撃が命中する)がいるためではないかと思われるが、これがやや戦闘のリズムを壊していたのは否めない。だが、戦闘の緊迫感は上手く表現されている。

 パッケージ裏面に「感じるままに、殺れ」と書かれているキャッチから、どんなイメージを受けるかは人それぞれだろうが、向かってくる敵をバンバン撃っていく爽快感を期待するのなら、それはない。その代わり、ざらついた手で肌をなでられる恐怖感はある。こちらを期待するなら、索敵のシステムは十分応えてくれることだろう。

高いハードルを乗り越えることの価値

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/13/news176.jpg 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  2. /nl/articles/2411/14/news014.jpg ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. /nl/articles/2411/14/news042.jpg 夫「250円のシャインマスカット買った!」 → 妻が気づいた“まさかの真実”に顔面蒼白 「あるあるすぎる」「マジ分かる」
  4. /nl/articles/2411/14/news090.jpg ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  5. /nl/articles/2411/14/news167.jpg 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. /nl/articles/2411/14/news187.jpg 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. /nl/articles/2411/13/news162.jpg 「情報操作されてる」「ぜーんぶ嘘!!」 175R・SHOGO、元妻・今井絵理子ら巡る週刊誌報道を一蹴 “子ども捨てた”の指摘に「皆さん騙されてます」
  9. /nl/articles/2411/14/news035.jpg 160万円のレンズ購入→一瞬で元取れた! グラビアアイドル兼カメラマンの芸術的な写真に反響「高いレンズってすごいんだな……」「いい買い物」
  10. /nl/articles/2411/12/news194.jpg 「予約しました」 サッポロ一番の袋に見せかけた“笑っちゃいそうなグッズ”が話題 「サッポロ一番味噌ラーメン好きがバレちゃう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  2. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  3. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  4. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
  5. イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  6. 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
  7. 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  8. 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  9. 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
  10. 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた