笑ってスロってアップして――「実録鬼嫁日記」執筆のススメ「実録鬼嫁日記 〜仕打ちに耐える夫の理不尽体験アドベンチャー〜」レビュー(2/2 ページ)

» 2006年02月09日 00時00分 公開
[仗桐安,ITmedia]
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スロッターさんいらっしゃい 〜メダルコーナーのススメ

 本編ともいうべき「ポータブルブログ」でエピソードをクリアするたびにプレーヤーはメダルを手に入れる。なぜメダルなのかというところは、原作ファンならお分かりだろう。原作者カズマ氏は「夕暮れスロッター」というサイトを持つほどのパチスロ愛好家なのである。

 このメダルは「鬼ショップ」という画面でアイテムの購入にあてることができる。アイテムを購入しなければプレイできないエピソードがあるので、プレーヤーはいろんなエピソードをクリアしてメダルを貯めなくてはならない、というゲーム色の強い要素を楽しむことができるのだ。さらに「メダルコーナー」なるものがあり、そこでは「鬼ショップ」のほかに「鬼嫁語録」、「鬼アルバム」、「鬼嫁スロット」を堪能することができる。

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 「鬼嫁語録」や「鬼アルバム」はエピソードをクリアし、さまざまな要素を達成していくことで自動的に内容が充実していくもの。あとで思い返すように鬼嫁独特のフレーズや各話の挿絵を閲覧できる。プレイ時の笑った自分を思い出してニヤリとしてしまうこともあるかもしれない。

 メダルコーナーでの目玉は何と言っても「鬼嫁スロット」だ。これは鬼嫁キャラをモチーフにしたパチスロミニゲーム。しかしミニゲームと言ってなめてかかってはならない。スロッターであればあるほど、そしてやりこめばやりこむほどに、このスロットがよくできていることが実感できるに違いない。かくいう筆者も最近は手をつけていないが、昔パチスロにハマった人間である。リールが止まるときの挙動など、本当に実機さながらのプログラムが施されているということは、プレイしてみて分かった。

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 「実録鬼嫁日記」の読者にどれくらいパチスロファンがいるのかは分からないが、そういった方にはぜひともやり込んでほしい、充実のミニゲームである。もちろんパチスロが分からない人でもとっつきやすいように視覚的演出がいろいろ入っているのでご安心を。楽しみながらメダルを稼いでいただきたい。

 欲を言えばメダルで大勝ちした人だけが買えるアイテムとかがあればいいのに、と思ったりもしたのだが、それではパチスロ攻略がメインになって中身のバランスがおかしくなってしまうだろう。「やり込みたい人はやり込める」という今くらいのディープさがミニゲームとしてはちょうどいいのかもしれない。

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ポストカズマさんはあなた! 〜オリジナルのススメ

 「実録鬼嫁日記」というコンテンツを、ゲームを通して能動的に受け取れる、というのが本作の面白いところなのだが、「オリジナル」というモードでは、そこから更に10歩くらい進んだ遊びが提案されている。日記をプレイするだけではなく、自分で日記を作ることができるのだ。しかもキャラと台詞の応酬で楽しめるオリジナル日記をインターネットを通してアップロードできてしまうのである。

 PSPでは、これまでにもインターネットを駆使した遊びが存在したが、どれもダウンロードによるコンテンツ追加型のものだった。各プレーヤーが自ら作ったものをアップロードして、それを他のプレーヤーが自由にダウンロードできるという機能は、PSP史上初の試みである。

 また「オリジナル」モードでのエピソードの作りやすさは出色のできで、ヘルプを見ながらキャラと台詞を選択していけば、とりあえず形になる、というシンプルさ。もちろんディープに作り込めばちょっとしたストーリーものとかミニコント、長いエッセイなど、読み応えのあるコンテンツを作れる。しかもキャラのビジュアルや背景があらかじめ用意されているので、普通のブログなどとは違った動的な作品ができあがるのだ。

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 友人や家族とエピソードを交換したい場合はアドホックモードを利用すれば可能である。そして本作のキモにあたるのが、インフラストラクチャーモードを利用したインターネット経由のアップロードだ。

 筆者もさっそく「焼きそば」というタイトルのエピソードを書いてみた。幸か不幸か筆者には鬼嫁がいないので、日常突っ込みネタというか、ひとりぼやきのような作品になってしまったが、アップロードは難なく成功。もちろん現時点では一般ユーザーはいないのだが、すでにコミュニティサイトはテスト的に運用されている。

 とにかく、この手軽さにはびっくりした。電車に乗っているあいだに面白ネタを発見してその場で作成、電車を降りて駅前の無線LANスポットでアップ、などというフットワークの軽いこともできるはずなのである。さらには、コミュニティサイトでダウンロード数が多かったエピソードを並べたランキングが見れるので、ハマる人はとことんハマって凝ったものを作ったりしそうな気がする。本作が発売されたあとに、全国のプレーヤーがどんな面白いネタをアップロードしてくれるのだろうかと、筆者はそれが楽しみでならない。

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アップロードが示す新しい遊びの可能性に期待

 冒頭の章で原作ブログファンに遊んでほしいのが本作だ、と述べたわけだが、原作ファンでなくても、アドベンチャーゲームファンや、新しモノ好きな方も手にとってみてはどうだろうか。

 「ポータブルブログ」だけをやり込んでいった場合、本作を極めるのにそうそう時間はかからない。ライトユーザーでも簡易にクリアできるその設定は、逆にコアなゲーマーからすれば物足りないと思えるボリュームかもしれない。モードがもしこれだけであれば、こじんまりとした小品ということになっていただろう。

 しかし、メダルを使ったパチスロがよく作り込まれている。そして「オリジナル」というモードが、本作を長く遊べるタイトルにする可能性を持っている。どこかの誰かが書いたオリジナルのエピソードが読めるとなると、楽しみは広がっていくだろう。毎日1度はチェックしてしまうかもしれない。自分自身も日ごろ思っていることを書いたり、本作のインタフェースをうまく利用して物語を書いたりできる。それに対するリアクションも期待できる。そのコミュニティがどういったものになるのか、もしかしたらこっそりカズマ氏もアップロードしているんじゃないのか、など発売後の展開に関する筆者の楽しい想像は尽きない。

 本邦初の「PSPによるデータのアップロード」がどういった遊びを提供してくれるのか。答えは2月23日以降に分かる。興味のある方は、本作を通して新しい遊びに能動的に参加してほしい。そしてぜひとも、自分の鬼嫁エピソードや、笑える話、苦い話、オリジナリティあふれるエピソードを共有する面白さを体験してほしいのである。

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