“知る人ぞ知る名作”ではもったいない。実写映像が映えるPSPでこそプレイしてほしい「街 〜運命の交差点〜 特別篇」レビュー(2/2 ページ)

» 2006年05月08日 00時00分 公開
[立花裕壱,ITmedia]
前のページへ 1|2       

運命の迷宮、正解の道はどれだ?

photo テキストはわかりやすく色づけされている。赤はすでに選んだ選択肢、緑はZAPポイント、青はTIPが読める単語

 ここからは街のシステムを説明しよう。街は、8人のキャラクターの10月11日から15日までの5日間を描く、8本のシナリオで構成される。シナリオ中には選択肢が挟まり、話が分岐するのだが、この選択の結果がほかのシナリオにも影響するのが大きな特徴だ。こうして8人の行動をたくみに操って、バッドエンドを避けていく。入り組んだ因果関係を推理して運命を組み立てる、パズルチックな感覚が新鮮だ。

 ポイントになるのはザッピングシステム。シナリオを進めていると、文章中にほかの主人公の名前が緑色で表示されることがある。そこで、□ボタンを押すとほかの人のシナリオへ移れる。本作では1人のシナリオだけをひたすら追っていくことはできず、ある程度までいくと「つづく」と途切れてしまう。この場合は、ほかの主人公のシナリオからザッピングして、続きを読むこととなる。

photo 同じ時間帯に飛ぶことが多いザッピング。相手のシナリオを進めないと、×がついてザッピングできないことも

 また、テキスト中には、青色で表示された単語もあり、これを選ぶとちょっとした説明「TIP」を読むことができる。この中にもザッピングが隠されているので、注意が必要だ。TIPにはシニカルな解説や笑える内容も多く、ザッピング探しという以上に読み込んでしまう。

魅力的な8+αのシナリオ

 いくらシステムが面白くても、ノベルゲームの命はやはりシナリオになるだろう。コミカルからシリアス路線、サイコホラーに至るまで、バラエティに富んだ街のシナリオを簡単に紹介しよう。

●オタク刑事走る!
渋谷中央署・刑事:雨宮桂馬(25歳)

 ゲームとPC、コーヒー牛乳をこよなく愛する自称“ゲーマー刑事”の雨宮桂馬。犯人からの指示に従い、爆破を阻止するため、クイズゲームやUFOキャッチャー、数々の暗号に挑む。失敗すれば渋谷は壊滅。刑事もののお約束も入り、コミカルな中にも緊迫感があるシナリオだ。

●THE WRONG MAN 馬
俳優:馬部甚太郎(36歳)

 17年も芽が出ない、やられ役専門の俳優・馬部。ようやくもらった組長役というチャンスだったが、なぜか撮影中に強盗の容疑者と間違えられてしまう……。「THE WRONG MAN 牛」と対になる入れ替わりもので、顔に似合わず意気地なしの馬部が、ピンチをどう切り抜けるか見ものとなる。

photo 馬部と牛尾、顔のそっくりな2人がついに会話を交わすシーン。ここに至るまでにはさまざまな紆余曲折が待っている

●THE WRONG MAN 牛
元ヤクザ:牛尾政美(36歳)

 半年前に組から足を洗った元ヤクザの牛尾。今日は宝石店員の綾にプロポーズしようと店を訪れるが、そのとき運悪く宝石店に強盗が! しかも強盗の仲間と誤解されてしまう。慌ててドラマのロケ隊に逃げ込むが……。任侠の世界しか知らない牛尾が、これまた独特なドラマのロケで騒動を巻き起こす。


photo ワニと格闘したり、女相撲取りに扮したり……。主人公はまだ無名だった北陽の伊藤さおり。体当たりの演技が光る!?

●やせるおもい
フリーター:細井美子(20歳)

 158cm、64kg。美味しいものを食べると寄り目になる、ちょっと太めの女の子・美子は、“5日で17キロやせろ!”という条件を彼氏に突きつけられる。なかなかやせられない美子は、どんどん過激な手段へ走っていくが……。素直に笑えるギャグ系のシナリオだ。用語解説は食べ物ばかりで軒並み「美子の好物」と説明されているのに爆笑&切ない。

●七曜会
大学生:篠田正志(21歳)

 父親のコネで一流企業に内定していた正志。だが、謎の美女に内定取り消しものの写真を突きつけられ、秘密結社「七曜会」に入ることに。そこで次々と人を脅迫するが……。おどおどしていた正志が徐々に脅迫の快感に目覚めてしまう。普通の人間に眠る裏の一面がデフォルメして描かれる。

●迷える外国人部隊
傭兵:高峰隆士(25歳)

 フランス外人部隊の傭兵・隆士は、3年ぶりに日本の土を踏んだ。平和な日本になじめず、自分の中の暴力的な衝動を持て余す隆士。居場所がない焦燥感にかられ、渋谷の喧噪をさまよう……。シリアスなハードボイルド系ストーリー。街屈指の切ないエンドを迎えたあと、さらにオマケシナリオの「花火」を読むと泣ける!

●シュレディンガーの手
小説家/ドラマ原作者:市川文靖(38歳)

 売れっ子ドラマ原作者の市川は、ある悩みを抱えていた。朝、目覚めると、市川が書いた文学的小説は失われ、中身は低俗で刺激的なドラマのプロット原稿に置き換わっている。”真の<私>を評価してほしい”と願う市川は、原稿をすり替える何者かとの対決を決意するが……。悪夢が現実を侵食したかのような、異色のエピソード。奇妙な読み味はクセが強いが、ハマるとたまらない。

photo 学園の嫌われ者に妊娠告白を聞かれるわ、元カノが赤ん坊を連れて現れるわ……。陽平の不運ぶりはトップクラス

●で・き・ちゃっ・た
高校生:飛沢陽平(18歳)

 モテモテ高校生の陽平は、一夜だけをともにした亜美から“赤ちゃんができました”と衝撃の告白を受ける。本命の社長令嬢、美奈子と付き合い始めたというのに……。陽平はどうなる? 情けないモテ男が周囲の人々に振り回されるドタバタコメディ。自業自得とはいえ、どんどん追いつめられる陽平の運命が気になる。

 以上が8本のシナリオ。気に入ったものはありましたか?

続編が待ち遠しい!

 今回、改めてPSP版の街をプレイして感じたのは、「サウンドノベル」というジャンルに恥じることのない、そのシナリオの質の高さだった。さすがに、桂馬のPC関係や渋谷の街並みなど、時代を感じさせる部分はあるが、本質的には古びておらず、今でもグッと引き込まれてしまう。PSPといえばロードの長さがしばしばネックと言われるが、本作に関しては、移動マップを使ったとき以外の通常プレイでは読み込みも短く、ストレスは思ったより少ない。

 惜しいのはセーブの煩わしさだろうか。セーブ時間がそもそも長いうえ、バッドエンドや1日の終わりでいちいちセーブするかどうかを聞かれる。バッドエンド集めも街の醍醐味なので、セーブはなるべく軽快にしてほしかったのだが……。

 とは言え、わざわざ据え置き型のゲーム機を出さなくても手軽に街が遊べるのはありがたい。熱狂的なファンが続編を待望している本作。まずはこの手軽なPSP版で新たなユーザーを獲得して、弟切草、かまいたちの夜に続く人気者になってほしい。

街 〜運命の交差点〜 特別篇
対応機種PSP
メーカーセガ
ジャンルサウンドノベル
発売日発売中
価格5040円(税込)
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」