タッチペンは十字キーやボタンの代わりにあらず――“ニンテンドーDSらしさ”とはこういうことだ:「怪盗ルソー」レビュー(1/2 ページ)
タッチスクリーンに描いた絵で変装できる! そんな新機軸を打ち出した“変装アドベンチャー”が登場した。コミックのようなテンポのいいシナリオにプラスして、登場するキャラクターも魅力的な野心作だ。
オリジナリティの高さはピカイチ
授業中、ノートの端に先生の似顔絵を描いたり、国語の教科書でパラパラマンガを作ったり、社会の資料集にイタズラ書きしてみたり……。子供のころのそんな経験は誰でも一度や二度はあるだろう。絵を描いていると、うまい下手関係なくつい夢中になってしまう。「怪盗ルソー」をプレイしていて筆者は、授業を聞かず落書きに没頭していた昔懐かしい感覚を思い出した。
“変装アドベンチャー”と銘打った本作は、ニンテンドーDSの機能をフルに使った画期的なシステムを搭載している。タッチスクリーンにペンで描いた絵が、そのまま主人公ルソーの顔になり、その変装で次々とピンチを乗り切る。お手本を見ながらなるべくそっくりになるように描いているだけでも、やはり絵が出来上がっていくのは楽しいものだ。自分の描いた絵がゲームに登場する。なんてことなく聞こえるかもしれないが、これも意外とうれしい。
思えばニンテンドーDSが発売されてからもう1年半が経過した。タッチペンだけで遊べるゲームは当たり前になったが、“ペン”といいつつ、選択肢を選んだり、キャラクターの目的地をクリックしたりと、十字キーやボタンの代わりに使っているゲームは多い。ところが本作のタッチペンはまさに絵筆の代わり。これはニンテンドーDSでしかできない体験だ。オリジナリティの高さは間違いなくトップクラスだろう。
少年怪盗ルソーが大活躍
町で最近ちょっと噂の正義のドロボー、怪盗ルソー! その正体は小学5年生の海藤流想だった。変装が得意な少年怪盗ルソーが、他人をだます悪い大人をやっつける。
最初の相手は謎の名探偵ポッチャリ。必ず事件を解決するが、高額な報酬を要求してくる困った探偵だ。しかも事件の裏には……。そんなある日、クラスメイトのセーヌが誘拐された。ポッチャリが怪しいとにらんだルソーは、得意の変装で事件の解決に乗り出す。
コミックのようなテンポのいいシナリオにプラスして、登場するキャラクターも魅力的だ。ここでは主人公ルソーとヒロインのセーヌを紹介したい。
怪盗ルソー
本名は海藤流想(かいどう・るそう)。明るく元気な小学生の男の子。祖父は100万の顔を持つといわれ、かつて日本全国に名をとどろかせた伝説の怪盗ミリオンマスク。祖父譲りの変身術で怪盗ルソーとして売り出し中。同じクラスのセーヌにあこがれている。決めゼリフは「変装完了!」。
河本セーヌ
ルソーの同級生。明るく世話好きの女の子でクラスのアイドル。のちに怪盗セーヌとしてルソーの仲間入り。バックアップ係を担当してアジトからルソーを助けてくれる。かわいい顔して頭もよく、意外なアイディアでルソーが助けられることもしばしば。お父さんはダンディな市議会議員。
ほかにも、ルソーの友人として、“しんぶん”こといつでも学級新聞のスクープを狙う新聞配(しんもん・くばる)、刑事の息子でちょっと頼りない、ポチこと犬飼保知(いぬかい・やすとも)、ルソーの熱血担任で、お説教のときには必殺技「炎のリーゼント」を発動する茶葉先生……と、個性的なキャラクターが脇を固める。ノリは児童文学の少年探偵ものだろうか。しかし、レトロにならず現代風にアレンジされていて、キレのいいさわやかなテイストで、大人でも十分楽しめる。
後半になると話もどんどん盛り上がり、ルソーもセーヌも町中も大ピンチに!? それほど深いシナリオというわけではないが、先が気になるデキだ。
描いた絵で変装できる
本作のセールスポイントは大きくわけて2点ある。ひとつは、先ほども触れたようにタッチペンを使って絵を描けること。ペンの反応はスムーズでかなりいい。変装のために絵を描くときは、線の太さや色を選んで、見本と同じように線を描き込んでいく。「消しゴム」や「すべて消す」、今描いた線を取り消せる「1つ前」、取り消した線を復元する「1つ後」といったコマンドもついていて思いのほか快適だ。手の震えまで線に反映されてしまうので、なるべくしっかりニンテンドーDSを置いてプレイするのをオススメする。変装の判定基準はどれだけ見本と同じに描けたか。はみ出したり塗り忘れたりすると評価が下がる。
とはいえ、判定はそれほど辛くはなく、序盤はゲームオーバーになることはまずない(中盤以降はシビアな条件も出てくるが……)。難易度は「ふつう」と「やさしい」の2つ。「やさしい」はなぞり線が表示されるため、基本的に、太線か細線か、何色かに注意しながら線をなぞればOKだ。「ふつう」は見本の背景にうっすら描かれたマスをよく見て線の位置関係を把握してから描こう。どちらの難易度でもストーリーの展開には支障はない。
本作の売りのもうひとつがコマの上下スクロールとなる。普通のゲームは、ウィンドウにセリフが出るが、本作は1画面がひとつのコマになっていて、下画面から上画面へと紙芝居のように流れていく。こちらもかなり斬新。ふきだしや効果音も描き込まれ、コミックを読む感覚そのものだ。コマは全部で4000コマもあるという。
コマ送り方式だから、オチもつけやすく、例えば学校でルソーがセーヌとキスする夢を見て、あとでセーヌに“どんな夢を見たの?”と聞かれる。そこで“セーヌとキス”の選択肢を選ぶと、“セーヌちゃんとチューする夢さ”、“まあっ”という画面があった後、“…なんて死んでも言えない”とオチのコマが表示される。このコミックスタイルの表現方法は今後も発展していくのではないかと思う。
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