インタビュー
» 2006年12月27日 00時00分 公開

「ファミスタ オンライン」はなぜこれほどまでに愛されたのか?(1/2 ページ)

誕生から20年目にしてオンラインゲームとして生まれ変わった「ファミスタ オンライン」は、サービスを提供しているハンゲームにおいて最速記録で50万人を突破した。なぜここまで愛されたのか? NHN Japanの瓜生貴士氏に話を聞いてみた。

[加藤亘,ITmedia]

 1986年12月にナムコ(現・バンダイナムコゲームス)から発売された「プロ野球ファミリースタジアム」は、はじめて選手の名前や能力の個別化に成功し、野球ゲームの代表的存在になったタイトル。通称ファミスタと親しまれ、ファミコン以外にもさまざまなプラットフォームに移行していく中で、チームや各種モードの追加、選手名の実名化などのマイナーチェンジを繰り返しながらゲーム性を進化・複雑化させていった。

 そして2006年、新たなファミスタがオンラインゲームとしてサービスを開始したのが8月のことだった。その名も「プロ野球 ファミスタ オンライン」。本作は、シンプルな操作で手軽にプレイでき、対戦者との駆け引きを楽しめるオンライン野球ゲームで、そのゲームデザインと思想はシリーズ1作目の「プロ野球 ファミリースタジアム」に近い。

 サービスを開始するやいなや、本作はファミスタに親しんでいた30代を中心に、幅広い層に支持され、8月16日のプレオープンサービス2日目にして10万人を獲得。10月12日のオープンサービス初日には30万人を突破し、ついに11月18日にはサービス累計日数66日目にして50万人を突破した。この記録は、ハンゲームで提供しているタイトル中最速のものだという。

 この記録的快挙について、ハンゲームの運営元であるNHN Japan ゲームアライアンス事業部 事業部長兼プロデューサーの瓜生貴士氏に話を聞いた。


NHN Japan ゲームアライアンス事業部 事業部長兼プロデューサー 瓜生貴士氏

―― 現在50万IDを獲得していますが、このハイペースは予想どおりのものですか?

瓜生氏 ちょっと下回ったという感覚ですね。本作は数字にこだわらずに、ハンゲーム従来からいらっしゃるアバターが好きなお客様の流入をあえて控えたタイトルだったんです。ファミスタのようにコンシューマゲームとして確立されたタイトルを扱うのも始めてだったということもあり、数字的にも分析したかったという面もあります。ですから、若干登録会員数増加のペースは抑えた感じで推移していても、無茶なプロモーション活動は控えたわけです。そういった意味では有り体に言えば“想定内”と言える数字ですね。

―― それでもハンゲームでは記録的獲得スピードだったようですが。

瓜生氏 やはり他タイトルと比べて(ハンゲームのお客様ではなかった)外部からの獲得が多かったのが要因としてありますね。8月の記者発表会の影響もありますが、新規の訪問者が増え、彼らにこぞって登録していただいたことで伸びたといえます。ですから、本来の外部獲得という目的は果たせたのではないかと認識しています。

―― 実際に登録されたユーザー層は当初の予定どおりでしたか?

登録会員数の年齢構成
〜9歳 約3%
10〜19歳 約26%
20〜29歳 約32%
30〜39歳 約32%
40歳〜 約6%

瓜生氏 登録率と継続率は違うものと思います。どういうユーザーが感度が高くて積極的に登録、かつその後も継続してくれるか、さらに課金されているかなど(お客様によってゲームとの)関わり方が違うと思うのですが、20台後半が積極的に関わっているという印象です。

―― 本作は運営、サービスをする立場から見て、他作品と異なる特徴を挙げるとしたら?

瓜生氏 週末の訪問者がすごく多い傾向にありますね。ハンゲーム全体でも週末は多くなりますが、実際細かく分析してみると「ファミスタ」は顕著に多いんです。やはりコア層に社会人の方が多いということもあるので、週末ゆっくりゲームで遊んでいるのだと思います。また、昼休み時間に増える傾向もありますね。今は社会人をモデルユーザーとして想定しています。20代後半で、ある程度ゲームに対して時間とお金を使うことに抵抗のない人が「ファミスタ」を遊んでくれているのではないかと実感できますね。今後は、昼と夜のゴールデンタイムに経験値を多く獲得できるイベントや、リーグ戦や対戦など目的意識を持って参加できるイベントなどを積極的に展開していきたいと考えています。もちろんちょっとだけ遊んでも満足できるものにします。

―― コンシューマーメーカーでオンラインゲームを成功させている珍しい凡例となりましたが、これはビジネスモデル的にも今後後続が現れると思われますか?

瓜生氏 「ファミスタ」はなんとなく“昔”のゲームを代表していると思うんです。野球ゲームというのはいわゆるニッチなジャンルで、20年前ならいざしらず現代は、野球というだけで誰もが飛びつくわけではないように感じています。本作がなぜ成功したのかというと、インターネットユーザーに漠然と広く訴求していくのではなく、ある束になって存在するお客様に訴求することを重視したからなんです。私たちはコンテンツ事業をやっています。3000万人に受け入れられるものを目指すのではなく、100万や200万の必ずあるであろうターゲットを戦略的に獲得することを目標としているのです。確実にある野球好きの層にアピールしていったわけです。そう言う意味ではこの方法論は間違っていませんし、今後も特定のジャンルやキーワードを持つ“コンテンツ”を作っていきたいと考えています。

―― カジュアルゲームでアイテム課金という形態については?

瓜生氏 月額課金では、(お客様が)お金を払う際、消費する際にその価値がわからないままお金を払うことになります。コンシューマゲームもそうですよね。パッケージの封を開けてみないとわからない。記事などで紹介されていても、実際お客様はどんな風に感じるのか……。お試しプレイができないものも多い。世の中、5000円くらいの品物で、中身が分からないまま買うものってそれほどない。オンラインゲームでも、分からないものに月額5000円を払うという感覚が自分の中にないんです。お試しIDを配布すればいいと言う人もいると思いますが、それではサーバが荒れてしまう可能性がないわけでなく、得策ではないと考えています。

―― ではオンラインゲームではどこに価値観を見いだしていると?

瓜生氏 オンラインゲームでは、その“遊び”が楽しければお金を払うのかというとそうではないと思うんです。遊びに対してお金を払っているのは最初の1カ月から2カ月くらいで、次第に課金する対象の質が変化していきます。コミュニティや運営のよさ、そして友達との関係であったり、レアアイテムやコレクションがたまったからなどにですね。だからこそ無料で遊んで面白いと気づいてもらわないといけないんです。コンシューマは遊び続けても変化がないが、オンラインゲームはプレイすればするほど新しい価値を創造できる。

―― それが常々言っていることに結びつくわけですね。

瓜生氏 はい。アイテム課金はサービス事業だと思うんです。気に入ったらお金を払ってくださいという、月額とは根本的な思想の違いがあるんですよ。「ファミスタ」というタイトルといくつかのスクリーンショットだけでは、あくまでもお客様が持つ記憶の中の「ファミスタ」にしか訴えられないんです。その時、なにかを揺さぶられても、ファミコンを引っ張り出して遊べばいいだけです。つまり、「ファミスタ」という野球ゲームのみにお金を生み出す魅力が満載されているわけではなく、それをあくまでもツールというかメインディッシュにしたサービス全体に対するビジネスモデルを組んだのが今回のサービスの主旨となります。

―― 瓜生さんは発表会でも、今後は“オンライン事業”ではなく“オンラインゲームサービス事業”……すなわち「サービス」こそが重要で、「ファミスタ オンライン」こそそのサービス事業にふさわしいとおっしゃってますね。そのへんはブレてないわけですね。実際、バンダイナムコゲームスと仕事をしてみてどういった印象をお持ちですか?

瓜生氏 皆さんビジョンを理解してくれて、すべてパーツがきれいに治まった感じですね。仕事ぶりは根本的に質実剛健で、開発に対してストイックといった印象を持っています。本作の開発にあたったバンダイナムコゲームス コンテンツ制作本部 第3制作ユニット プロデューサー塩澤敦氏も発表会で“おもてなし精神”という言葉を使っていましたが、お客様に楽しんでもらうことに労力を惜しまないんです。オンラインゲーム業界は朝起きたことを夜までには直すという勢いなので、最初は苦労されたと思いますね。ですが、さすがすぐに一流の仕事をしていただき期待を上回る出来でした。

―― 両社はもともと、バンダイナムコホールディングスがアニメのブロードバンド配信を行っている「バンダイチャンネル」に関連したものをアバターアイテム化してハンゲームで提供という形でパートナーシップを結んでいましたが、こうした関係になってからのなにか変化は?

瓜生氏 付き合って行く中で互いのカルチャーが分かってきたといったところですか。新しいビジネスであったりお互いのビジョンを語るようになっていますし、今後もよいおつきあいができると期待しています。

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