とうとう出た! 待ちに待った! “次世代機初”のウイニングイレブン!!「ワールドサッカーウイニングイレブンX」レビュー(2/2 ページ)

» 2007年01月12日 14時02分 公開
[小城由都,ITmedia]
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全体的には「WE10」の継承。しかし違いも見られる

 プレイした実感は、「WE10」からあまり変化がない、ということ。もともとワイドな画面でプレイしたい、という欲求がとても強かった筆者にとって、それほどガッカリする部分ではない。今後本家のWEシリーズと足並みをそろえて進化してくれればよいのだから。

 とはいえ、まったく同じかというと、そうでもない。例えば、プレイステーション 2版のサイドバックは、非常に体力が減りやすく、そのぶん疲労がたまりやすかった。特に4-3-3のフォーメーションを組むと、サイドバックが無駄に動きすぎるせいか、攻撃重視の試合運びをすれば、必ず前半で体力を大幅に消耗してしまう。それがかなり軽減されているのが特徴的だ。

 また、ゴールキーパーがボールをしっかりキャッチするようになったことも変化と言える。「WE10」では、ともすればゴールキーパーがボールを弾きすぎるという声もあったため、これは喜ばしい変化といえるのではないだろうか。

 もっと細かい部分を言うならば、ボールの転がり方がより物理的になった。ゲームらしいボールの転がり方ではなく、本物の球体がグラスフィールドの上を、草の摩擦に速度を殺されながら転がるようになった、と表現すればよいだろうか。「WE10」をプレイしつくした筆者は最初違和感を感じたが、プレイしたあとにサッカー情報番組を見ると、本作のボールの動きのほうがよりリアルであると感じた。また、選手が前後に切り返す動作をすると、コンピュータのディフェンダーにボールを奪われるようになった。

非常に疲弊しやすかったサイドバックが、多少まともに。動く範囲が狭まり、無駄なオーバーラップを極力減らすようにAIを調整したのだろうか

 「WE10」でコンピュータのディフェンダーを振り切るとき、ダッシュドリブルでサイドを駆け抜け、突如後ろに方向転換する、という方法をよくとっていた筆者にとって、これは攻撃パターンを否定されたショックを感じた。しかしよくよく考えれば、人間が前後に切り返す動きは非常に負担が大きいため、「WE10」のようにサッサと動けるはずがないのである。そういう意味では、これもよりリアルな表現になったといえるのではないだろうか。


これくらいの距離なら、シュート力のある選手でシュートすれば、入る確率は高い。特にストンと落ちるシュートが出る確率が高くなった

 あと3つほど特筆しておきたい部分がある。まずは公式ボールが変わったことで、2006年のワールドカップではミドルシュートが多く決まるようになった。「WE10」でもそのあたりは表現されていたのだが、大きな大会でその成果が実証される前に発売されたため、どちらかというとミドルシュートの決定率は控えめだったといえる。しかし「WEX」になってからは、ミドルシュートを蹴ったときのボールの動きがトリッキーになっている。空気抵抗の少ない今年の公式ボールは、強く蹴ると右に左に縦に大きく変化する。そのためゴールキーパーが判断に迷って捕り損ねる、というシーンを、上手に再現している。


ボールの斜め下にいる選手が、パスアンドゴーのパスの出し手。ボール保持者が画面上を向いても、そのままダッシュして走り続けてくれた

 もうひとつは、パスアンドゴーの変化だ。プレイステーション 2版「WE10」の場合、パスを出した瞬間にR2ボタンを押すと、パスを出した選手がそのまま相手ゴール方向にダッシュする。「WEX」でも同じようにパスと同時に右トリガーを引くと、選手が走る。問題はそのあとだ。「WE10」では、パスを受けた選手の視界から、出し手がちょっとでも外れると、出し手はダッシュをやめて止まってしまうことが多かった。しかし、「WEX」では多少走る速度を落としはするものの、あきらめずに飛び出すタイミングを狙うようになっている。これは「なんでそこで止まるんだよ!!」と地団駄を何度も踏んできた筆者だからこそ感じる改良点。同じ気持ちになっていた人、いませんか?

アシストが計上されやすくなったため、最後のパスの出し手が、より報われる結果に

 また、アシストの判定がゆるくなっているのも特筆すべきだろう。「WE10」では、最後のパスからツータッチ以内にシュートを決めないと、そのパスを出した人をアシストとしてカウントしなかった。つまり、せっかく美しいパスを出してフォワードに好機を作ってやったにも関わらず、フォワードがスリータッチ以上こねくりまわしたせいで、アシストから外されることが多かったのだ。それが、長い距離をドリブルしたり、相手が一度触ったりしなければ、基本的にゴール前に出したパスがアシストとカウントされるようになった。極端な気がしないでもないが、今まで「あれはアシストにカウントしてあげてほしいなぁ」と思うようなシーンが減ったため、ストレスも軽減されたといえる。

作りの荒さを感じないわけでもない

 基本的に喜ばしい進化の多い「WEX」ではあるが、少々気になる部分がないわけでもない。例えば演出面。前作まではプレイが切れると画面が暗くフェードアウトする。そのあいだ選手は動き続けているため、プレーヤーは頭の中で「ああ、きっとこのあとも選手は動き続けているんだろうな」と想像することができる。しかし本作では、いきなり選手の動きが止まる→いきなりリスタート画面、となる。プレーヤーにとって、呼吸を置くタイミングが取れず、一瞬息が詰まるため、「さぁ、リスタートだぞ」という気分になりにくい。ここはもう少しタメを作ってほしいところだ。

 細かい部分の仕様が変わっていることにも、少々使いづらさを感じてしまう。例えば「WE10」では、フォーメーション設定のメンバーチェンジで、下のほうに並んでいる控えの選手にカーソルを移動させたいときは、方向スティックを左右に倒せば、10数人分スキップさせることができた。しかし本作では、なぜかこの機能が削除されている。おかげで、マスターリーグで大量に選手を抱え込んでいるチームを利用すると、下のほうにいる選手にカーソルをあわせるため、わざわざ全員分スクロールさせなければならない。これは正直不便だ。

“個人試合記録”を見るのが楽しみな人も多いはず。評価点のシステムは賛否両論あったが、削除されてしまったのは一抹の寂しさを感じてしまう

 また、試合中にゴール、アシストを決めた選手の名前は、スタートボタンを押してポーズにすれば、画面右に表示することができた。この機能も削除されている。しかも試合が終わっても“個人試合記録”を見ることができないのだ。つまり、評価点もないし、試合中の行動範囲をグラフで見ることもできない。自分で覚えていない限り、その試合で誰がアシストし、誰がゴールを決めたのか、まったくわからない。これはマスターリーグをプレイするのが好きなプレーヤーにとっては残念なことだ。

 ゴールシーンやマスターリーグでの優勝シーンの演出が、「WE9」のままになっており、「WE10」の新しい演出が入っていないのも、少々物足りなさを感じる。

想像するに、これは“海外版”の作品である

 プレイしていて大きく感じたことは、これは海外向けに作られた「WE」である、ということだ。日本人が好むデータ部分は削られているにも関わらず、ラインズマン等の演出面は強化されている。誰がアシストを決めたのか、誰がシュートを決めたのか、といったことは、プレーヤーの記憶に残っていればよく、わざわざ試合ごとのデータを残すまでもない、という考え方は、チマチマしたことが好きな日本人のものではない。日本人向けには必ず用意されているチュートリアル的なトレーニングの項目が、本作に見当たらないことからも、これはほぼ確定といっていいだろう。

 そして、対人戦が大好きな海外ユーザーのために、Xbox Liveにおけるラグの少なさは徹底して調整されていることからも、本作の力の入れ具合がわかる。

 評価が分かれることは確実だが、ネット対戦を楽しみたい人、ワイドな画面で広くフィールドを眺めながら「WE」をプレイしたい人にとっては、たまらなくすばらしい作品と言える。超豪華になった「ユビキタスエヴォリューション」(PSP版)と言うこともできるだろう。

 しかし意外だったのは、「WE」のプレイにXbox 360のコントローラが思いのほかしっくりきたこと。さすがは人間工学に基づいて設計されただけある。非常に操作しやすかった。望むべくは、異機種同士のネット対戦が可能になることだが、次世代戦争元年、「WE」はどのように進化していくのだろうか。2007年以降も楽しみである。

「ワールドサッカーウイニングイレブンX」
対応機種Xbox 360
メーカーKONAMI
ジャンルサッカー
発売日2006年12月14日
価格7329円(税込)
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