コーエーらしい時代の思い出となるRPGに――「オプーナ」発表会(1/2 ページ)
「ドラゴンクエスト」を手がけたアルテピアッツァが開発を担当する、コーエー初のWii用RPG「オプーナ」な子供の時の思い出として残るべきタイトルとなるか。堀井雄二氏も駆けつけた新作発表会の様子をリポートする。
似顔絵がすぐできるシンプルなキャラクター
「本作を開発するにあたり、何度か社内で製作の可否についてゴタゴタがあった」と語るのはコーエー代表取締役社長の小松清志氏。昨今、月イチでの発表会が続くコーエーの、初めてのWii用RPGソフト「オプーナ」の発表会が、本日3月14日、東京・品川のTHE GRAND HALLにて行われた。
本作は、「ドラゴンクエスト」シリーズの制作を手がけたアルテピアッツァが開発を担当。プロデューサーをアートディレクターでもある眞島真太郎氏が、ディレクターを杉村幸子氏が務める。また、音楽を「ファイナルファンタジーXII」など手がけた崎元仁氏が、コーエー側のプロデューサーとして「戦国無双」シリーズなどを手がけた杉山芳樹氏が務めている。コーエーとアルテピアッツァの共同開発として世に送り出される「オプーナ」は、どうやら当初は難産だったことがうかがえる。
しかし、「杉山の『どうしてもやりたい』という熱意に負けました。でも、意外というか、期待以上の出来になりました。ゲーム業界では、(表現方法などで)さまざまな問題がある中、心が温まるいい作品になっています。コーエーがこういう作品をプロデュースするのだと紹介するいい機会であり、本作は今の時代に問いたいRPGとなりました」と、小松氏が語るように、シンプルな描写で温かい雰囲気を醸し出している。
続いて登壇した杉山氏は、「時代の思い出は、常にRPGとともに残っている」と自らRPGのファンであり「ドラゴンクエスト」シリーズもやり込んだことを振り返り、「本作もユーザーにとって、その時代の思い出として記憶に残るようなタイトルとしたい。また、ゲーム業界にとっても大きな柱となれるタイトルにしたい」と意気込む。本作は今年夏以降に発売予定だ。
そんな期待を込められたタイトルとは、果たしてどんなものなのか? 本作のプロデューサーでもあるアルテピアッツァの眞島真太郎氏が、自身を投影した大画面の中で、リアルタイムにゲーム紹介をするという一風変わった方式でゲームの内容に触れる。
「オプーナ」は、Wii初の本格派ロールプレイングゲームを目指し開発が進めれているタイトル。プレーヤーは、宇宙旅行の最中に家族と生き別れてしまったティティア星人「オプーナ」となり、地球に似た星「ランドロール」での生活を始める。「現実とは違う世界で、自分が主人公になって冒険する」というRPG本来の面白さを追求し、ライフスタイルRPGという体験型のシナリオで表現される。プレーヤーは、初めて降り立った星の住人として、仕事を請け負い、他の住人と交流しながら、未知の世界について知っていく喜びや人々とふれあうことの温かさを体験する(ゲームの詳細については後述する)。
眞島氏は、オプーナの独特で素朴なキャラクターデザインをぼんやりと寝そべっている時に思いついたのだそうだ。以前から分かりやすく、誰でも似顔絵が描けるキャラクターを熱望していた眞島氏は、夢で見たものをお風呂場の曇った鏡にイタズラ書きをしながら、オプーナの造型を完成させたと振り返る。
ファンタジーとテクノロジー混在した世界観については、なるべくドームの中と外との対比を強調したかったのだそうだ。ドームの外は、自然に溢れ、有機的で雑然とした中の美しさを、ドームの中は整然としておりクリーンでシンプルなものにしたかったと眞島氏。線をだれだけ減らせるかに注力したという。
このシンプルなキャラクターデザインありきでのシナリオ作成では、杉村氏は頭や足にある丸い物体に着目し、後にエナジーボンボンと名付けられるこれらの攻撃の要となる武器で頑張っている子供たちの姿をイメージして構成していったとのこと。頑張る子供たちのエナジーをゲームから感じてもらいたいと、エナジーボンボンを主体とした攻撃に関して、バリエーション豊かにし、手軽にヌンチャクのみで遊べる操作仕様にこだわったのだそうだ。
また、音楽を担当した作曲家の崎元氏は、このあまりにもシンプルな印象に意表をつかれたと明かす。シンプルでやわらかいタッチで描かれる、子供たちの愛と冒険の物語を純粋に表現した結果、自分としては珍しくすんなりテーマ曲が完成したのだとか。ゲームの持つ雰囲気と融合させることにも注意したと崎元氏。
眞島氏は、優しく力強い冒険となっている本作について、“指を動かす快感”を得てほしいと、遊びの原点回帰を呼びかける。Wiiのヌンチャクを弾いて戦うだけというシンプルな遊びに戻したかったと語る。
最後に登壇したコーエー取締役名誉会長の襟川恵子氏は、ゲーム開発においてコーエーは、RPGを主体とするチャンスはあれど、シミュレーションに特化してきた歴史があると前置きしながら、エニックスが「ドラゴンクエスト」を、スクウェアが「ファイナルファンタジー」をヒットさせていくのを横目に、悔しい思いをしてきたことを吐露する。RPGに関しては、後塵を拝したコーエーだが、日頃からこれら先発のRPGタイトルに負けないものを作ろうという自負があったと語る。そうした中、2005年のE3で堀井雄二氏に会い、開発会社を紹介してもらう機会を得たと裏話を明かす。それがアルテピアッツァだった。彼らのハートフルで豊かな感性にすぐに共感した襟川氏は、諸々の手順を踏んだのち、晴れてともに本作のようなコーエーらしいRPGに行き着いたと、出会いのきっかけを演出してくれた堀井氏を壇上に呼び込む。
堀井氏は本作を、キャラクターがシンプルながら、背景が描き込まれておりキレイでその差がいいという第一印象だとか。また、Wiiでヌンチャクを弾くだけというゲーム性も新鮮と感想を述べる。襟川氏もそれには同意で、日頃から新しいことは失敗してもいいからやりなさいと、新しい感覚に期待しているという。堀井氏は、まだ触っていないから何とも言えないとことわりを入れながらも、「ドラクエを作ったスタッフによるオリジナルゲームを早くやりたい気持ちだ」と期待感でいっぱいの様子だった。
「WiiだからできるコーエーらしいRPG」になっているのかはまだ分からない。しかし、片手で持つヌンチャクだけで、寝転がりながらでもできるという操作性は歓迎したい。襟川名誉会長の言葉にもあったが、コーエーはシミュレーションゲームに特化してきた歴史があり、ここ数年、シミュレーションに限らずさまざまなジャンルへの積極的な進出が大きく実を結んできた企業である。ただ、RPGに関していえば、確かに守備範囲ではなかったように思う。しかし、コーエーは虎視眈々とRPGへの確固たる地位を固めようと狙っていた。今後、各プラットフォームの特性に合わせつつ、多角展開していく中でコーエーは、プレーヤーに“RPGというジャンルでひとつの歴史”を刻めるのか……。本作がその試金石となるだろう。
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