法廷に「待った!」と「異議あり!」の嵐が吹き荒れる――オドロキの新章に突入した「逆転裁判」:「逆転裁判4」レビュー(2/3 ページ)
いかんなく発揮される新能力「みぬく」、そしてニンテンドーDSならではの「カガク捜査」
魅力的なキャラクターが織り成す逆転裁判の世界は、日本であって日本でない、架空の裁判制度が実施されている世界だ。序審法廷制度と名付けられたその制度では、容疑者は捕まってすぐに裁判にかけられる。そこで無罪を立証できればそのまま無罪の判決が出るわけだが、弁護士サイドからすれば情報が不十分な状態で法廷に上がらなくてはならないケースも多々あり大変だ。下手をすれば、留置所の被告人とまともに話せないままに弁護しなくてはならない、なんてこともある。それでも各証言と手元にある証拠品を頼りに、被告人の無罪を信じて前へ進むしかない。
たいていの場合は、初動捜査でどう見ても犯人だ! と思われてしまった人間が逮捕される。そして本作の中においては、逮捕された人物は真犯人にあらず、その人物を罠にはめた真の犯人がどこかにひそんでいるのだ。それらの真犯人は事件にまったく無関係な人物ということはないので、何らかの証言をするために証言台に立つ。ここで相手のムジュンを引きずり出してボロを出させ真犯人として告発し無罪を勝ち取る、というのが基本的な流れとなる。
法廷で王泥喜にできることは主に「ゆさぶる」、「つきつける」、「みぬく」の3つ。「ゆさぶる」はいくつかのセンテンスに区切られた証言に突っ込みを入れるような形で、更なる情報を引き出すための策。「待った!」のかけ声とともに、相手をゆさぶっていくと、思わぬ新情報が聞けたりする。基本的に「ゆさぶる」をしても何のペナルティもないので、積極的に活用していきたい。
「つきつける」は証言に明らかにムジュンがあると分かったときに証拠品をつきつけ、証言をくずすことができる。たとえば証人が「ナイフで刺したのを見た」と言ったのに対して、解剖記録に「死因は鈍器による殴打」と書かれてあれば、記録をつきつけて嘘をついていることを白昼のもとにさらすことができるのだ。公の場で嘘をついたことがバレた証人は証言の訂正を求められる。真実を隠している証人であれば嘘で嘘の上塗りをせざるを得なくなり、やがて犯人であることが露見したり、何かを隠していることが知られてしまう、という流れだ。逆につきつける個所やつきつける証拠品が間違っていた場合はペナルティをくらってしまう。これを同法廷で何度かやらかすとゲームオーバーになるので注意が必要だ。
この「つきつける」による展開こそが「逆転裁判」シリーズのプレイにおいて、もっとも面白くもっとも気持ちよいものだと筆者は思っている。特に難易度の高い巧妙な嘘をズバリと指摘したときには「これってオレしか分かんなかったんじゃね? オレの洞察力すごくね?」と一瞬鼻高々になる(まあ、実際はそのムジュンを発見した人は全国に何万人といるのだが……)。追い詰められた証人のリアクションや検事サイドのリアクションもあいまって“してやったり”感があり、独特の快感が得られることだろう。
そして「みぬく」。これは本作で初登場のシステム。成歩堂には勾玉によるサイコ・ロック(探偵パートで相手の心の鍵を見透かすことができる能力。適材適所に証拠品を提示していくと鍵がはずれていく)があったが、王泥喜にはこの「みぬく」という新要素がある。特定の証言に対して王泥喜が腕につけている腕輪が反応し、その能力を発動させると、王泥喜の目が相手をアップでフォーカスし、体の動きを観察することができるのだ。ここで例えば、あるときだけ目が泳いでいる、とか、ふるえているなどの微細な体の変化を発見することができれば「みぬく」を選択しよう。特殊なしぐさを指摘することで、相手のさらなる有力証言が引き出せるオドロキの能力だ。
「みぬく」はタッチペンでくまなく証人の体を見て回ることで、その変化を発見できるのだが、ある程度目星がついていないと、見当違いな何の反応もない証人を観察することになる。ペナルティはないが、ピンポイントで当てにいく推理は必要だ。ここでも「つきつける」同様にうまく見つけることができると「オレってすげえ」と調子に乗れること請け合い。体の反応を指摘された証人の動揺っぷりから真実を吐き出されたら、さらに追い詰めるべし!
法廷パートには「みぬく」という新要素があるが、探偵パートにも新要素が追加されている。それが、「逆転裁判 蘇る逆転」で登場した宝月茜の再登場に起因する。7年後ということで大人の女性に成長したところを見せつつ、やはり茜といえばということで「カガク捜査」の出番となる。
“蘇る逆転”でプレイできた指紋検出に加えて、足跡の型をとる作業など、要所要所で茜が登場し王泥喜の役に立つ作業を教えてくれる。もちろんこれらのカガク捜査の作業は、プレーヤーがやることになり、タッチペンによるちょっとしたミニゲームのようなものをプレイできるというわけだ。あたかも自分が指紋を採取しているような気分になれるなど、“捜査している”という臨場感を味わうのにひと役かっている。また、プレイ全般において操作はボタンでもタッチペンでもできるようになっており(マイクに向かって「待った!」と叫んで「ゆさぶる」などの操作も可能)、ニンテンドーDSならではの操作感覚が活かされている作品だと言えよう。
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