ペンは剣よりも強し?――すべての謎と試練にタッチペンで挑む、新たな「ゼルダの伝説」の誕生「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」レビュー(1/3 ページ)

「ゼルダの伝説」シリーズ最新作にあたる「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」は、ニンテンドーDSで登場。タッチペンのみでリンクを操作できる“ペンアクションアドベンチャー”で、新境地を切り拓く意欲作だ。

» 2007年07月04日 00時00分 公開
[仗桐安,ITmedia]

「ゼルダの伝説 夢をみる島」に始まる、携帯型ゲーム機の“ゼルダ”

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 「ゼルダの伝説」シリーズといえば、1986年のディスクシステム版「ゼルダの伝説」以来、任天堂の各ハードで続編がリリースされ、根強いファンに支えられている人気シリーズだ。そんな「ゼルダの伝説」シリーズ最新作が、ニンテンドーDSで初お目見えである。

 携帯型ゲーム機における「ゼルダの伝説」をさかのぼると、1993年にゲームボーイ用ソフトとして発売された「ゼルダの伝説 夢をみる島」に行き着く。「ゼルダの伝説 夢をみる島」は、ゲームボーイのモノクロ画面と少ない容量をものともしない、洗練されたシステムと凝縮されたゲーム内容で、ユーザーを楽しませてくれた名作だった。かくいう筆者も「ゼルダの伝説 夢をみる島」に魅了されたファンの1人で、歴代の「ゼルダの伝説」シリーズの中でもベスト3に入るほどにお気に入りである。1998年に発売された「ゼルダの伝説 夢をみる島DX」(追加要素が盛り込まれゲームボーイカラーに対応したリメイク版)も含めて何度もクリアしたのを覚えている。

 その後も携帯型ゲーム機の「ゼルダの伝説」は続々とリリースされている。ゲームボーイカラー専用ソフトである「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 大地の章」、「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 時空の章」では、2タイトルが相互リンクしたゲーム内容が斬新だった。ゲームボーイアドバンスで登場した「ゼルダの伝説 神々のトライフォース&4つの剣」では4人で謎を解くという新しい試みが刺激的だった。同じくゲームボーイアドバンス用ソフトである「ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし」では、主人公であるリンクが小人になることで同じマップを違う視点で楽しめる仕掛けが我々を楽しませてくれた。「ファミコンミニ05 ゼルダの伝説1」と「ファミコンミニ25 ディスクシステムセレクション リンクの冒険」は、当時夢中になった初期の「ゼルダの伝説」をゲームボーイアドバンスで遊べるといううれしいアイテムだった。

画像 リンクとともに冒険に出かけよう!

 そして2007年6月23日、過去の名作、佳作たちが未だその輝きを失わない「ゼルダの伝説」シリーズに、新しい仲間が加わった。それが「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」である。携帯型ゲーム機における「ゼルダの伝説」に新たな1ページを刻む本作についてお伝えしていこう。

海を駆けるあのリンクが帰ってきた!

 ゲーム画面を見たり、前情報を得たりしてご存知の方も多いかとは思うが、本作の世界観はニンテンドーゲームキューブで発売された「ゼルダの伝説 風のタクト」を継承したものになっている。プレイの冒頭には「ゼルダの伝説 風のタクト」のその後のお話であることを匂わせる導入ムービーもあるので、「ゼルダの伝説 風のタクト」をプレイ済みであれば、よりテンション高くプレイできるはずだ。

 しかし逆に「ゼルダの伝説 風のタクト」をプレイしていないとついていけない世界なのかというと、さにあらず。極端な話、本作で初めて「ゼルダの伝説」に触れたとしても何ら問題がないというくらいに、誰でもとっつきやすく分かりやすい内容になっている。

画像 島の中やダンジョンでは2Dフィールドで冒険だ

 「ゼルダの伝説 風のタクト」で堪能できたトゥーンシェーディングな描写は、本作でもバッチリ再現されている。筆者としてはまずそのことに驚かされた。「ゼルダの伝説 風のタクト」で表現された、2Dアニメのようでしっかり3Dしているあの雰囲気が損なわれていないのだ。もちろんニンテンドーDSとニンテンドーゲームキューブでは描画能力に圧倒的な差がある。しかしそれをうまく補い、ニンテンドーDSでの3D表現を最大限に活かし切ったのではないかと思うほどに、質が高い描写が実現している。

 とはいえ、そのまんま「ゼルダの伝説 風のタクト」と同じように3D空間を歩くというわけにはいかず、“3D表現が含まれた2D世界”とでも言えばいいのだろうか、かつての「ゼルダの伝説」にも通じる2D的フィールドでの冒険が展開する。

 この3D表現でありながら2Dなフィールドが、何とも気持ちがよい。「ゼルダの伝説 時のオカリナ」から連綿と続く3D空間もいいが、2Dマップだからこそ楽しめる謎解きやダンジョン攻略もあるよなあ、と本作をプレイしてしみじみ思ってしまった。2Dの進化系として3Dが礼賛される節もあるが、3Dには3Dの良さが、そして2Dには2Dの良さがある。そのことを改めて思い知らされるタイトルだ。

画像 島から島へと船で移動する際は、しっかりとした3D描写を楽しめる

 主人公リンク(名前の変更は可能)をはじめとした各キャラクターが実に活き活きと描かれているのもいい。リンクと行動をともにする強欲なラインバックと妖精シエラ、リンクに助言を与える謎の老人シーワンらを軸に物語は展開していく。そして「ゼルダの伝説 風のタクト」からひきつづき登場するテトラやテリー、ファンにはおなじみのあの一族やあの一族など……懐かしくも愉快な面々が物語を彩る。

 各キャラのユーモアあふれるセリフもなかなか秀逸で、前述した「ゼルダの伝説 夢をみる島」を思い出してしまった。かの作品もゲーム内でのキャラたちのセリフにはギャグやユーモアがいっぱいだった。本作においても、緊張感みなぎるダンジョン攻略の合間に面白キャラに癒される……。そんな絶妙なバランスが楽しめるようになっている。

 物語はテトラが幽霊船に連れ去られるところから始まる。大切な人を奪われたリンクは、テトラ奪還を胸に秘め新たな地での冒険を始めることになる。リンクがたどりついたのは見知らぬ島。そして周りは見渡す限りの大海原。ラインバックの協力を得てリンクは島から島へと渡り、襲いかかる敵を振り払い、数々の謎を解き、やがて巨悪の存在を知ることになる。王道的な展開ではあるが、話の運びやディテール、プレーヤーへの目的の提示などの演出面がうまく、すんなりとその流れに乗ることができるはずだ。このあたりは、さすが“ゼルダ”節と言ったところか。物語の面白さは、筆者としては太鼓判! 安心して身を委ねられる上質な世界を堪能できる。

画像 ラインバックは自分の身と財宝のことしか考えていない強欲なヤツという設定。しかし何だかんだでリンクに協力してくれちゃって、にくめないヤツでもある。
画像 連れ去られたテトラを助けるために、幽霊船を見つけろ!

画像 とある神殿の内部を探索するために必要なのが、サブタイトルにもある砂時計。タイムリミットが迫る中の謎解きは緊張モノです
画像 出ました、ゴロン族。相変わらずのすっとぼけた味で、かなり癒されます……
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