連載
» 2007年09月07日 15時28分 公開

野菜たちのほのぼの冒険譚「サラダの国のトマト姫」ゲイムマンの「レトロゲームが大好きだ」(1/2 ページ)

連載第49回は、「サラダの国のトマト姫」(ハドソン)を取り上げてみましょう。ハドソンのPCでのヒット作をファミコンに移植したものですが、内容が大幅に変わり、よりメルヘンチックになっています。

[ゲイムマン,ITmedia]

土のにおいがするゲーム

 すでに記事にもなっていますが、9月22日、東京ゲームショウのステージイベントとして行なわれる「レトロゲーム・アワード2007」に、審査員の1人として、参加させていただくことになりました。

 これもひとえに、この連載を多くの皆さんにお読みいただいたおかげです。ありがとうございます。

 さてただいま、このレトロゲーム・アワードのネット投票期間中(9月9日まで)。なので、対象となる1985年〜1987年のファミコンソフトは、今取り上げない方がいいと思いました。そこで今回は、ファミコン版が1988年に発売された、「サラダの国のトマト姫」を取り上げましょう。

 なんか家庭菜園ブームが来ているそうで、わたしの事務所の近所にも、会員制の菜園ができました。土いじりを楽しみ、手塩にかけた野菜が育つのを楽しむ方々が増えているそうです。

 「サラダの国のトマト姫」は、野菜が活躍するメルヘンチックな物語。数多くの野菜・果物が登場するので、クリアした後は土を耕して、野菜を育てたくなってくるかもしれません。

画像 せたがや百景にして関東の富士見百景、成城の富士見橋にて
画像 「サラダの国のトマト姫」の舞台は、野菜や果物が暮らすサラダの国だ

ゲームの雰囲気に合ったシステム

 「サラダの国のトマト姫」(ハドソン)は、1984年にPCで発売されたアドベンチャーゲームで、1988年、ファミコンに移植された。

 PC版は、「デゼニランド」などとともに、当時のハドソンを代表する人気作だった。だがファミコン版はPC版発売から4年も経っていたこともあり、大幅に内容が変わっている。

 最も大きな変化はゲームシステムだ。PC版は、プレーヤーが主人公の行動を文字で入力する“コマンド入力式”。場面場面で正解となる単語を探し出すのが、ゲームの根幹だった。しかしファミコンのコントローラーで、単語を入力するのは難しい。

 同じくPCで人気だったアドベンチャーゲーム、「ポートピア連続殺人事件」(エニックス)は、1985年にファミコンへ移植されたが、もともとコマンド入力式だったシステムを、“コマンド選択式”に変更している。

 これは作者の堀井雄二氏が、「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ」(アスキー)で採用したシステムで、あらかじめ表示されたコマンドの中から1つを選んで、行動を決めるというものである。

 「ポートピア連続殺人事件」がヒットしたことで、ファミコンでもアドベンチャーゲームが多く発売された。そのほとんどがコマンド選択式を採用しており、「サラダの国のトマト姫」も、コマンド選択式に変更されている。

 コマンド選択式は、単語を考える必要がない分、プレーヤーがよりストーリー展開を楽しむことができるが、難易度はコマンド入力式より下がる。特に、コマンドを全部総当たりすれば解けてしまうということが、一時期問題視されていた。

 「ポートピア」では、画面内を虫眼鏡で探すシステムを加えたことで、この問題を解決した。一方「サラダの国のトマト姫」では、敵キャラクターとの戦闘システムを新たに追加している。

 しかし戦闘といっても、RPGのような戦闘ではない。なんと“あっちむいてホイ”である。

 主人公たちが、ノーミン族に食べられそうになろうが、モンスターに食べられそうになろうが、モビルスーツ同士の戦いだろうが、さらには最終ボスとの戦闘だろうが、あっちむいてホイ。

 それでも違和感がないくらい、ほのぼのとした雰囲気のゲームだった。大幅に下がった難易度と、殺伐としていない“あっちむいてホイ”戦闘は、むしろこのゲームのほのぼの感を高める演出となっていた。

画像 見るからに心がなごむ画面だけど、一応これが戦闘シーンである
画像 あちこちにギャグが隠されているのもこのゲームの特徴。ストーリーに関係しないコマンドを選ぶとよく出てくる
画像 登場人物(野菜)は、PC版より大幅に増えた。特に、終盤に突然出てきて村上ショージさん風のギャグをかました後、こう言い切るこのニンジンはインパクト大

実は意外とヘビーな背景設定

 「サラダの国のトマト姫」の舞台は、野菜と果物が暮らすサラダの国(オニオン王国)。オニオン王が平和な国を築いていたが、ある日、大臣のパンプキング・ド・アバレルがクーデターを起こして、国を乗っ取ってしまった。

 パンプキングはカボチャ大王と名乗り、軍隊による恐怖政治で国民を支配。カボチャ族を頂点とする身分制度を作って、差別と重税でほかの野菜を苦しめた。

 オニオン王は、娘のトマト姫とともに城を逃れ、ついてきた兵士たちとともにレジスタンスを結成。だがそのトマト姫が、カボチャ大王にさらわれてしまう。王は悲しみのあまり亡くなり、カボチャ大王は一方的に姫との結婚を発表。

 国民が失意に暮れていた頃、旅に出ていた勇者・キュウリ戦士が、サラダの国に帰ってきた! プレーヤーはキュウリ戦士となり、トマト姫を救うため、カボチャ大王が住むウツボ山脈の城に向かうのだ。

 ……このように、ストーリーの導入部はけっこう重いのだが、登場人物のほとんどが野菜か果物なので、ゲーム全体の雰囲気は明るくてコミカル。

 キュウリ戦士のお供となる柿っ八が、なかなかのお調子者で、ゲームをさらに明るく楽しくしている。

 旅の最初に柿っ八を助けて、仲間にしたキュウリ戦士。パセリの森で捕らえられた野菜たちを救い、サラダロアの町に入る。

 お店でいろいろな物を買ったり、それをいろいろな人(というか野菜)に渡したりしているうちに、レジスタンスに関する情報を得る。だがレジスタンスの連絡所にいるところを役人に見つかり、捕まってしまう。

画像 柿っ八が何気なく言った言葉が、重要なヒントになることもある。柿っ八はアイテムも全部持ってくれるが、ときどきうっかりなくしてしまう
画像 酒屋のフサ子さんは妙に色っぽい。おだてると何かいいことがあるかも
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