ゲーム開発者カンファレンス「CEDEC 2007」開催――初日はセガの小口氏による基調講演などCEDEC 2007

業界の第一線で活躍するゲームデベロッパーが一堂に集結し、ゲーム開発に役立つ最新の技術・ビジネス情報を一挙に公開する日本最大級のゲーム開発者カンファレンス「CESAデベロッパーズカンファレンス 2007」が開幕した。

» 2007年09月26日 13時05分 公開
[加藤亘,ITmedia]

 今年も社団法人コンピュータエンターテインメント協会主催による日本最大級のゲーム開発者カンファレンス「CESAデベロッパーズカンファレンス 2007」(以下、CEDEC)が開催された。今年は9月26日(水)から9月28日(金)までの3日間、東京大学を会場に行われている。

 CEDECは、日々進歩するゲーム開発の動向や最新情報、知識ニーズに応えるべく、選りすぐりの講師たちによるスピーチやディスカッションを中心とした、ゲーム開発の最前線を体感できるゲームデベロッパー向けの“知”の共有・発展を目的としている。セッションの内容はさまざまで、概念的なことから最新技術までを取り扱っている。コンシューマやケータイ、ネットワークなどあらゆるゲーム開発に携わる人間が対象だが、エンターテインメントコンテンツ制作やビジネスに携わるスタッフも十分ためになる。昨年は1700人が参加し、90以上のプログラムを実施。今年も100あまりのプログラムが予定されている。

「楽しい国、日本」を目指すべし!

小口久雄氏。「ダービーオーナーズクラブ」、「クレイジータクシー」、「電脳戦機バーチャロン」、「WORLD CLUB Champion Football」などを世に送り出す

 初日となる9月26日は、セガ代表取締役副社長の小口久雄氏による基調講演から幕が開けた。「『あそびをつくる』……その本質とは」と題されたセッションでは、次世代を担うクリエーター達に、開発現場や経営者という両面の立場から、「遊びやもの作りの本質は何か」を問うという内容。

 小口氏は人間の生活に必要なものとしてよく「衣・食・住」と挙げられるが、「遊」がなければ人は苦しいはずだと、生きることに直接的にも間接的にも楽しむことの重要性を説く。刑務所の例を挙げ、例え「衣・食・住」が整った場でも「遊」を排除すると刑罰になりえると持論を展開する。

 小口氏はフロイトの「快感原則論」を用いて、「人間は(他動物も)常に快感を得るために、または不快感を避けるために行動する」と人間の本質を前提として、「変化」があることを望むものだと展開。日本語の「遊ぶ」と英語の「PLAY」の違いを紹介する。「楽しい」という意味も辞書で調べてみせ、そこに「楽しさ」という一概に定義できない個人の感情に起因する要素が大きな割合を締めている点に注目。比較的、流動的な感情であることを改めて説明した。

「遊ぶ」と「PLAY」を辞書を用いて比較。「PLAY」の汎用性の高さが際立つ。なお、「楽しい」の元となる「楽しさ」を辞書で調べても、書いていなかったと小口氏。「楽しさ」は個人の嗜好によるものだからこれと断定できないからと解説する

 「楽しさ」の流動性は、食物を例にすると分かりやすい。例えば空腹時には食べ物を摂取することを楽しみとするものだが、一度満腹となると、それ以上の食べ物の摂取は苦痛を伴う。満腹になった人間が次に望む「楽しさ」とは、また別の何かに移り変わっているもので、これはゲーム作りと同じ考えだと、ゲーム開発の話へとつなげる。

 小口氏は日本人の自殺率が先進国といわれる諸外国と比べて格段に高いことに着目。年間3万人以上が自殺する日本は、世界10位の自殺大国となってしまっている。これに小口氏は、日本人の「遊ぶ」ことへの後ろめたさも要因だと語り、本質的な改善がなくてはと提唱する。遊び楽しむ快感を得るチャンスがないだけで、遊ぶ行為は重要で必然なのだと、辞職した安倍氏が掲げた「美しい国、日本」ではなく「楽しい国、日本」を目指すべきだと力説した。

 ビデオゲームの特性について触れた小口氏は、インタラクティブ性にあると、ゲーム開発におけるユーザーの欲求を満たすためのひとつの方策として、分類された欲求を省みることを推奨する。「生理的・本能的な欲求」、「主に身体内部の情報に基づいた欲求」、「主に体の外部からの情報に基づいた欲求」、「心理・社会的な欲求」があると整理し、開発しようとしているゲームがどんな欲求を満たしているのかを当てはめてから、もしくは開発途中にあてはめてみて再考するのに使用してみてはどうかと勧める。

個人の持つ「楽しさ」という欲求を満たすためには、どうするべきか?

ポケモンはなぜ面白いのか?

 小口氏は「ポケットモンスター」シリーズがなぜ面白いのかを例にあげ、人間が持つ欲求を巧みに入れ込んだ点にあると紹介し、昨今の「闘争」や「逃避」といった安易な欲求を満たすゲームが多いことに警鐘を鳴らす。「どうぶつの森」や「脳を鍛える大人のトレーニング」、「倉庫番」などのように、戦うことを避けても十分人間は欲求を満たすことができる。開発者としてゲームを作る際に、どんな欲求を満たすべきかを整理することの重要性を説き、この作業がゲームを分かりやすいものとし、1本スジの通ったものにすると説明した。


生理的な欲求や身体内部からの情報に基づく欲求には応えられないので、主に心理・社会的な欲求を満たすことを考えると見えてくるのではないか?

 ちなみにCEDECは、官民一体で今年から開催されている「JAPAN国際コンテンツフィスティバル」(コ・フェスタ」のオフィシャルイベントでもある。期間中にはゲーム以外のコンテンツ関係者との交流会なども予定されており、経済産業省と連携してセミナーを開催する予定もある。

小口氏が提唱する「楽しい国、日本」はこれからのゲーム開発者たちの手に委ねられている

 上記の小口氏をはじめ、会期中には多くの講談者がいくつものセッションを同時刻に行っている。企画や経営、ミドルウェア開発やシナリオ、演出面についてなど、内容は多岐にわたる。また、会場では展示コーナーが設けられ、最新のゲーム開発用ソフトウェアやツールなどのミドルウェアや関連書籍が紹介されている。

  • 「CESAデベロッパーズカンファレンス 2007」
  • 開催日:2007年9月26日(水)・27日(木)・9月28日(金)
  • 会場:東京大学
  • 主催:社団法人コンピュータエンターテインメント協会
  • 共催:経済産業省(産業間連携部門)

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