インタビュー
2008年02月19日 00時00分 更新

「ぷちえう゛ぁ EVANGELION@GAME」インタビュー:

“芝村ゲーム”らしくないが“芝村テイスト”満載のゲーム (2/3)

――話は「ぷちえう゛ぁ」に戻るんですが、先ほど「これまでとは違ったゲームを作ることが目標」というお話もありましたけど、それもあって「ぷちえう゛ぁ」というキャラクターを使われたんですか?

岡本 「ぷちえう゛ぁ」を立ち上げて展開しているのはバンダイのボーイズトイという事業部なんですが、それをやっているのは昔からエヴァンゲリオンの企画を作っている人たちでして。「こういうパターンってないよね?」と話をしながら、作り上げていきました。エヴァンゲリオンをSD化したキャラクターは展開していましたが、統一されていないし、規格化もされていない。それは困るよね、と。

 SDキャラというのは、エヴァンゲリオンを展開していく中では当たり前のように出てくるものだと思いますが、なかなかうまい展開ができなかった。今回はたまたま、バンダイ側の企画と、こちらの企画のタイミングが重なったので、じゃあこっちも「ぷちえう゛ぁ」のキャラクターで行くか、となったわけです。ですので、一番最初の企画書では、まったく違う絵のSDキャラが載ってたりします。途中から一緒に足並みをそろえよう、となったので。

 こちらとしては、オフィシャル感のあるSDキャラが欲しかった。ただ、存在しないので自分たちで作るしかないよね、と思っていたのが、バンダイ側の企画と一緒になることができた、というところですね。このゲームのほかにも、バンダイ側もマンガやグッズなどを展開していますので、それはすべて連動していて、話の展開やキャラクター設定は足並みをそろえて作っています。ゲームをプレイしたり、まんがを読んだりすれば、どこかとどこかがつながるような作りになっているんです。

芝村 ゲームデザイン的には、純粋に、難しいテーマに取り組みたかったんですよね。「ぷちえう゛ぁ」って難しくていいなと。ロボットのように、例えばSDガンダムなんかは規格統一されているので、シミュレーションにしろアクションにしろ作りやすいじゃないですか。今回のキャラクターはそれとは違って難しいなと。加えて規格統一されていない場合だと「ちょー難しくて楽しそー」という(笑)。“ゲーム化するのが難しい”といわれているものほど、一般におもしろいゲームになりやすいんですよ。課題を解けたときには、ですけど。

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――芝村さんにとって“エヴァンゲリオンの世界”は、どのような印象がありますか?

芝村 アニメの世界にとって“エポックメイキング”な、新しいものを作られた作品なので、今までのアニメの文法でゲームとかキャラクターを作っている立場から見ると、“今までと違う”ということだけで作りにくいんです。ゲーム化を前提として企画したという話を聞いたこともあるんですが、「アニメ業界の人が想像している“ゲーム”ってこうなんだ」と気付かされることがあって新鮮ですし、難しい課題として大好きですね。作りやすい仕事だったら、わたしでなくてもいいわけですし。そういう意味ではエヴァンゲリオンはとても気に入っているんです。完全にゲーム化できているかと言えば、いまだにそうではありませんし。挑戦できる仕事でいいな、と思っています。

――芝村さん自身のキャラクターでゲームを作る場合と、もともとのキャラクターありきでゲームを作る場合とでは、何か手法は違うことがあるんでしょうか。

芝村 いえ、全然(笑)。あまりにもたくさんゲームを作りすぎたせいもあるかもしれませんが、あまり区別を付けたことがないですね。まだ作っていないのはゲームブックくらいかなあ。

 いろいろ作りましたけど、まず世界観ありきで、世界観を作ってから、どうそこにアプローチしていくか、ということについては変わらないですし。自分が作ろうと思うゲームがどのような形をしているのかなと想像しながら作るんですが、それに合わせた世界観を選んでくることもあります。あまり発想的には変わらないですね。それぞれ違う面もあって楽しいですし。

 まあ、オリジナルの世界観・設定を作るときには、ゲームに合わせて世界観を改造することもできるんですが、すでにアニメがあったりと、世界観が出来上がっている場合にはそういうこともできませんので、制限の中で作る楽しさがあるというか。自分で作った世界観の場合は、都合が悪いときには世界観を変えて「はい終了」でもいいんですよ。悪い言葉で言うと思考停止というか、考えないこともできるんです。でもすでに世界設定があって、ゲーム的にそれを曲げられない時のほうが、困ったときに新しい解決法を思いつくことも多いですね。今回も「ぷちえう゛ぁ」というキャラクターがなければ、このようなゲーム方式にしよう、という思考が働いていなかったと思います。

――逆に言うと、制約があったほうが楽しいですか?

芝村 ゲームづくりはパズルと同じなんで、何もないところで「はいクリア」といわれるのはおもしろくも何ともないですし、そんなパズルゲームじゃダメですよね。制約が多くて多くて、1本しか解法がないものを華麗に解いていくのが、“美しいパズルゲーマー”としてのありようだと思いますよ(笑)。「後から考えると芝村さんがおっしゃったようなゲームデザインしかありませんでした」という仕事ができたらうれしいですね。

 人間というのは、単調な繰り返しによる楽しさや、そこからちょっとずつ幅を広げていく時にも楽しさを感じるものですが、乱高下する楽しさや、チャンネルをがちゃがちゃ変える楽しさもあるので、そっちの方を追求できたらいいなと思ったりするんですよね。

――そういう意味では、「ぷちえう゛ぁ」は“チャンネルが変わっていく楽しさ”がありますね。

芝村 世界観そのものが楽しいんですよ。学校で試験があったかと思ったら、突然教室で鍋を始めたりとか。原作の持つ、いい意味でぶっ飛んだ方向性を、ゲームというシステムでどう表現するか苦労しました。普通にアドベンチャーゲーム面とかを2面つなげて、そのあと突然「鍋が始まりました」だと、ゲームをプレイしている人は「はぁ? 何言ってんだ?」ってなりますよね(笑)。わたしの品性まで疑われかねない(爆笑)。これが「鍋ゲームが始まりました」だと「まあ、そういうゲームなのかな」というか。ユーザーの心の取り方というか、つながり方で変わるところですね。

岡本 最初は何もないところから“企画の100本ノック”をやって、そこから50本近くをセレクトしまして。そのときは順番なんてないんですよ。「どうする?」となったときに「季節感を入れようか」と。季節割りを考えたときに、春に始まって春に終わるということが決まったときに、初めて「この企画は最初」、「この企画は真ん中」というように当てはめていきました。

 そこから、抑揚を付けるために話の流れを決めていき、全体のゲームの流れが出来上がったという感じですね。ただそこから、「このあとにこれはおかしくないか?」という部分もあったので、交通整理するために結構時間がかかりましたね。

芝村 どこに入れても作る工数としては変わらないですが、面構成が変わってきますので。

 最初にトータルのストーリーを考えないで、「ぷちえう゛ぁ」的に楽しいゲームを並べていきましたので……。ゲームの面を割り付けるときにも、いい感じでランダムっぽくなりましたね。同じ調子にならないようにしています。ストーリー的に言うと、序盤はメッセージをあまり入れていないですね。ストーリーに興味が出てくるのは後半からだと思いますので、そこにストーリーが進むような、話を読めるような、アドベンチャーゲームっぽい面をあとのほうに持って行っています。

 ゲームを始めたときには、キャラに愛着も何もないと思いますので、メッセージは全部読み飛ばされるかもしれない、という前提で。ゲームが進んでいくと「このキャラかわいい」となって、メッセージも全部読んでくれるのかなと。という感じで構成していますし、そこに工夫があったりします。

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[聞き手:今藤弘一,ITmedia]

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