レビュー
» 2008年03月13日 12時00分 公開

所変えても健在だったSFミステリーアドベンチャー新シリーズ第1弾「12RIVEN -the Ψcliminal of integral-」レビュー(1/2 ページ)

哲学的なシナリオと張り巡らされた数々の伏線……。あの傑作SFミステリーアドベンチャー「Ever17」の流れを継ぐ新作が登場した。その名は「12RIVEN」。2つの視点から世界の謎に迫れ!

[立花裕壱,ITmedia]

“永遠”から“完全”へ

画像 2017年、事故で閉ざされた海中テーマパークLeMUを舞台にした「Ever17」。主人公・武と記憶喪失の少年が閉じ込められた少女たちとともに脱出を目指す

 「Never7 -the end of infinity-」「Ever17 -the out of infinity-」「Remember11 -the age of infinity-」。キッドから発売された3本のノベルアドベンチャーをまとめて「インフィニティシリーズ」と呼ぶ。中でも「Ever17」はゲーム史に残るタイトルだ。筆者も初めはギャルゲーのノリで「どの女の子と仲良くなろうかな?」などと気軽にプレイを始めた。しかし、次第に閉ざされた海中テーマパークからの脱出というサスペンス色が強まり、さらに世界に矛盾や違和感が見えてくる。「この空間は何かおかしい……」。そしてクライマックス。最後はプレイヤーの誰もが仰天した大胆な仕掛けで、すべての謎が解けていく。感動するゲームはいろいろあれど、鳥肌が立ったのは「Ever17」くらいだ。ネットを中心に広まり、熱狂的なファンを生んだのもうなずける。

 その「Ever17」の流れをくむ新作が「12RIVEN -the Ψcliminal of integral-」。原案・シナリオは過去作と同じ打越鋼太郎氏が担当している。今回は、インフィニティシリーズがさらなる完全を目指し、「インテグラルシリーズ」と名を変えた第1弾。インテグラルを辞書で引くと「完全、積分」という意味だった。果たしてどんな謎に満ちた世界が待っているのか、ファンの期待は高まった……。

画像 インフィニティシリーズが完結し、新たにインテグラルシリーズとして走り出した「12RIVEN」。今回は疾走感があるシナリオだ

 ところが、ここで大事件が起こる。2006年末、制作発表の直後に発売元のキッドが自己破産してしまったのだ。このまま「12RIVEN」は幻になってしまうのか? 筆者も含め、ファンは「何らかの形で必ず世に出ます」という打越氏のブログに望みをつないだ。明るいニュースが伝わってきたのは意外にも早く年明けのこと。サイバーフロントがキッドの版権を引き継ぐと決まり、無事「12RIVEN」がファンの前に姿を現した。

 発売前にごたごたはあったが、「12RIVEN」の中身は相変わらずクオリティが高い。前作の「Remember11」と比べて雰囲気は爽やかになり、事件の結末もきちんと描かれる。恋愛色も濃くなり、エンディングが終わったあとポジティブで前向きな気持ちになれるはずだ。もちろん、シリーズ恒例の大胆な仕掛けや哲学的なモチーフは健在。アナグラムや暗号も入って読み応えがあるノベルアドベンチャーに仕上がった。

2つの視点が紡ぐシナリオ

 物語が始まるのは2012年5月20日。この日は、日本の太平洋岸で日蝕の中でも特に珍しい金環蝕が見られる前日。ゲーム中に起こる金環蝕も物語のキーになっている。

 今回の主人公は高校生の雅堂錬丸と公安12課所属の捜査官・三嶋鳴海の2人。ゲームはまず、両者の視点が交互に切り替わる共通ルートから始まり、ある時点から2人の個別ルート、もしくは条件が整えば解決編にあたる「∫(インテグラル)ルート」に分岐する。高校生の錬丸が事件に巻き込まれるきっかけはこうだ。

錬丸's サイド

画像 奇妙な世界を歩く錬丸とミュウ。いったい人々はどこへ行ってしまったのか? この世界の謎は物語の核心に絡んでいる

 「今日『2012年5月20日正午』……1人の少女がこの世を去る 殺されるのだ あのインテグラルの屋上で……」。錬丸は、8年前に離れ離れになった幼なじみの少女ミュウの殺害予告メールを受けて、廃墟になったホテルの屋上へやってきた。ミュウと運命的な再会を果たしたはいいが、2人は謎の力を持つ少年・霧寺メイに襲われる。どうにか逃げた2人だったが、気づくと周囲で異変が起きていた……。

 このあと、まるで人間が全員神隠しにあったかのような、無人の街で錬丸編は展開する。この奇妙な街をさまよううち、錬丸は幼なじみのミュウへの想いに気づき、成長していく。どこか懐かしい青春テイストあふれる冒険ストーリーとなっている。

鳴海's サイド

画像 インテグラルの屋上で銃を構える鳴海。知力・体力ともに優秀な鳴海だが、謎の力を使う少年メイには手も足も出ない。何が起きているのか……

 「XXX Lv6 鳴海先輩 たぶんこれが最期のお願いになるでしょう。今、1人の少女が命を奪われようとしています。少女の名前は『ミュウ』 殺害の時刻はおそらく『正午』 場所は『インテグラルの最上階』……」。後輩の真琴からの意味深なメールでインテグラルへ急行した捜査官の三嶋鳴海。そこで凶弾に倒れたのはミュウではなく青い髪の少女チサトだった。鳴海はチサトを病院へ運び込んだが意識不明の重態。鳴海はチサトの弟・オメガと一緒に調査を始めるが……。

 もう一方の主人公・鳴海は各種の情報収集に従事する警視庁公安12課の捜査官。一度見たものは文章でも映像でも、すべて完璧に記憶してしまうという“サイクロペディア症候群”である鳴海が、未曾有の計画に立ち向かう。どうやら公安12課にはスパイがいるという。一体誰が信じられるのか……。サスペンス色が強い、女刑事ものとしても楽しめるストーリーだ。

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