直感的に楽しみ、そして考察を加えてさらに楽しめ「メタルギア ソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」レビュー(1/2 ページ)

ソリッド・スネーク最終章。20年に及ぶ物語はいかにして幕を下ろしたのか。そして、そこに込められたメッセージとは何なのか。インターナショナルな注目を集める作品の魅力と真価を、システム、ストーリーについてご紹介する。

» 2008年07月02日 14時48分 公開
[水野隆志,ITmedia]

一見さんはお断り?

 いきなりだが、弁護から始めてみよう。もし、あなたが「メタルギア ソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」(以下、MGS4)をプレイして何か違和感を感じるとしたら、その主原因になり得る要素は2つある。1つは初めてのプレイヤーがストーリーに付いていきにくいこと。もう1つは膨大なムービー。まずはこれらについて考えてみよう。

 話はちょっとゲームから離れるが、一般的に言ってシリーズには大きく2つのタイプがある。個々の作品の独立性が強く、全編を通して見なくても、それほど支障がない場合。もちろん、すべて見ることで細かな設定などが分かって楽しさが増すが、それぞれの作品を単体で見ても面白さは失われない。映画で言えば、「007」シリーズなどが挙げられる。それに対して、連続性が強く、原則として以前の作品をすべて見ていることが前提となっている場合。同じく映画で例を考えれば、「スター・ウォーズ」や「マトリックス」などが挙げられよう。

画像 レギュラーキャラクターの大佐(左)とオタコン(画面右上)。どちらもスネークを支える大切な存在だ

 後者のタイプを前にして、ストーリーが分からない、と怒る人はあまりいないだろう。例えば、初めて「スター・ウォーズ」を見た人がいて、その時たまたま“シスの復讐”を見たとする。その人は、キャラクターも世界観もよく分からず、最後に登場する黒い甲冑の騎士の意味もさっぱり理解できないかもしれない。スペースオペラとしての面白さは感じるかもしれないが、頭には多くのクエスチョンが渦巻くはずだ。

 それでもこれは別に作り手が悪いわけではない。単にシリーズが続き物だったというだけのことだ。単体性と連続性のどちらを重視するかは純粋に作り手の選択に過ぎず、何ら非難されるいわれはないだろう。

 そして映画だけではなく、コミック、小説、テレビドラマに至るまで、シリーズ物というのはタイプ的には後者が圧倒的に多い。そのほうが固定客も掴まえやすく、ビジネスとしても成立しやすいというメリットもあるだろう(逆に言えば、そのアドバンテージを捨ててあえて一話完結型に挑むシリーズというのは、シナリオに自信を持っている場合が多いのだが、これは本論と関係ないので割愛)。

 さて翻って、「メタルギア」シリーズはどちらのタイプに位置するシリーズなのだろうか。その答えは前者、独立性を意識したタイプに属すると言えよう。何しろゲームなのだから前作を必ずプレイしているという条件を設けるのはあまりに危険すぎる。つねに新規のユーザーのことを考えねばならない。キャラクターの統一性はあっても、これまでの諸作はこの原則に沿って作られてきた。

画像 老いた主人公・スネーク。物語の終焉が近いことがその容姿からも見て取れる

 ところが、このアプローチが変わったのだ。独立性が皆無になったわけではないが、シリーズの伝統を破って、連続性を強く意識している。これはなかなか勇気のいる結論だったろうが、注意すべきはそれでも敢えてそれが採用されたことだろう。

 連続性を重視した姿勢は、明らかに終了宣言として受け取ることができる。もちろん、ゲームファンであれば、今回がソリッド・スネークの物語としては最終章になることなど、事前の宣伝で先刻ご承知かもしれない。だが、それでも独立性を意識することは不可能ではなかった。いつもと同じく新しい任務を構築し、でもこれで終わりだよ、と言えばいいのだ。しかし、それは採られなかった。それはすなわち、今回の作品が新規のファンよりも従来からのファンを意識していることを示している。その理由は1つしかない。“訣別”だ。シリーズを支えてくれたファンへの思いを込めて最終作を作る。そこには明確で、非常に強い別れの決意が感じられないか。

 ここまではっきりした態度を見せられては、もはや不満がどうこう言うレベルではないだろう。「MGS4」は、そうした思いを理解したうえで、それを超越して作られているのだから。

あらゆる儀式は完璧ではないと馬鹿げたものになる

 次にムービーについて考えてみよう。「MGS4」の本編に収録されているムービーは非常に膨大だ。

 ここから、いくら何でも多すぎる、という不満が出てくる可能性がある。確かにそれは否定できないかもしれない。だが、ここでも先ほどの話を思い出していただきたい。ソリッド・スネークの物語を閉じるという位置づけと、それを具現化しようとする強い意志。「MGS4」はいわばスネークの葬儀なのだ。そして葬儀とは人生における、もっとも重要な儀式である。

画像 「メタルギア ソリッド2」で激突した雷電とヴァンプ。その因縁が再び燃え上がる

 連合王国の女王エリザベス2世の式典官を務めた廷臣の言葉に、“あらゆる儀式は完璧ではないと馬鹿げたものになる”という名言がある。まさにその通り。シリーズの完結とは、スネークはもちろんのこと、彼に関わるさまざまな人々にとっても終わりを意味する。だとすれば、彼らの個々のエピソードを紡ぐ必要が出てくる。バイプレーヤーたちといってもシリーズを支えてきた重要なメンツである。彼らにそれぞれしかるべきラストを与え、そのうえでもっとも重要なスネークのエピソードを描く。10時間という時間は、そこから出てきた、いわば必然と考えられるだろう。メタルギア ソリッド4は荘厳な鎮魂歌なのである。

 従来作を知らないとキャラクターたちが把握できないこと、そして膨大なムービー。それらは決して作品の価値を下げるものではない。むしろファンサービスですらあるのだ。もちろん、そうした手法に対して好き嫌いはあるだろう。それは個人の主観としては正しい。だがゲームを作る論法としては間違ってはいないのだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2503/21/news163.jpg Koki,、豪邸すぎる“木村家の一室”がウソみたいな広さ! 共演者も間違えてしまうほどの空間にスタジオビックリ「コレ自宅!?」「ちょっと見せて」
  2. /nl/articles/2503/20/news012.jpg 底なし食欲モンスターがいる池の水を、全部抜いてみたら…… 思わずブチギレた異様な光景に「半端ない」「複雑ですね」
  3. /nl/articles/2503/20/news026.jpg プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが550万再生「凄すぎて笑うしかないw」「チーズが、、、」 話題になった作者に話を聞いた
  4. /nl/articles/2503/22/news012.jpg 「ワークマン商品で1番使ってる」 2500円で買える“多機能バッグ”に反響続出 「これはすごく重宝します」「隠れた名品」
  5. /nl/articles/2503/18/news071.jpg 息子の小学校卒業で腕を組んだ34歳母→中学校で反抗期を迎えて…… 6年後の姿に反響 「本当に素敵!」「お母さん、変わってない!?」
  6. /nl/articles/2503/19/news030.jpg 19万8000円で購入した超高級魚を、4年間育てたら…… ド肝を抜く“大変化”に「どんどん色が」「すごい」
  7. /nl/articles/2503/19/news019.jpg 水族館のイカに“指でハート”をしてみたら… “まさかのお返し”が190万表示「こ、こんなことあるのか」
  8. /nl/articles/2503/21/news035.jpg 白髪染めをやめていた60代女性、4年ぶりに髪を染めると…… “-5歳見え”の大変身に「すごーい!」「声がでちゃった」
  9. /nl/articles/2503/21/news031.jpg 「UNIQLO製品で一番かも」 ユニクロ新作“5990円セーター”に大絶賛の声続出 「これは買って良かった」
  10. /nl/articles/2503/21/news116.jpg マクドナルド、次のハッピーセットをWで“チラ見せ”…… “レジェンド”なキャラの正体に「激アツ案件!!」「きゃー!たのしみ」【ハッピーセットまとめ】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 雑草ボーボーの運動場に“180羽のニワトリ”を放ったら…… 次の日、まさかの光景に「感動しました」「すごい食欲」
  2. 40歳・女性YouTuber「18年間、脇毛を処理していない」→“処理しない理由”語る 「脇のみならず……」
  3. 「恩師ビックリするやろなぁ」 中学3年で付き合い始めた“同級生カップル”が10年後…… まさかの現在に反響
  4. 使わない靴下をザクザク切って組み合わせると…… 目からウロコの再利用法が2500万再生「とてもクリエイティブ」【海外】
  5. ペットのカエルを土に埋め、約半年間放置→掘り返してみたら…… 「すげぇ」予想外の結末に「ほんと不思議」
  6. 「絶対当たったわこれ」→「は?」 ガリガリ君の棒に書かれていた“衝撃の文章”に「そうはならんやろ」 投稿者に当時の思いを聞いた
  7. コメダ珈琲店で「軽い食事」を注文 → 出てきた“まさかの実物”に思わず大仰天 「逆詐欺ですね」「軽食という名の主食」
  8. 最恐雑草“ヤブガラシ”根元をハサミでチョキッと切ると…… “驚愕の結末”に「すごい」「知りませんでした」
  9. 「笑い過ぎて涙が」 小学生次男、宿題で先生に不正を疑われる→まさかの原因が530万表示 「じわじわくる」 投稿者に話を聞いた
  10. 大阪梅田駅で撮影された“奇跡のような光景”に「今まで見たことない」「本当に贅沢な眺めだ」 全ホームにマルーンカラーが整列
先月の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  4. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  5. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  6. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  7. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  8. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  9. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  10. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に