カメラの使い方に慣れ、撮影の楽しさを知るのに最適な入門ソフト:「AFRIKA」レビュー(1/2 ページ)
アフリカの大地で写真を撮影する。それに徹底してこだわり抜いた作品が「AFRIKA(アフリカ)」だ。ここでプレイヤーが求められるのは、いかに人の心を動かす写真を撮るかというフォトグラファー魂。時が経つことをしばし忘れ、ただただ被写体を追い求めるべし。
基礎から発展まで。撮影術をまとめて修得
初めにパッケージ裏に書かれたキャッチを引用しよう。そこにはこうある。
“広大なサバンナとそこに暮らすたくさんの野性動物たち。
大自然が見せる最高の瞬間を求めて、
大地を駆け巡るSAFARIに出発しよう!”
ここには、「AFRIKA(アフリカ)」のゲーム性が的確かつシンプルにまとめられている。奇をてらうでもなく、エモーショナルなあおりに走るのでもなく、いわば真っ向から魅力を唱っている。
そう、キャッチにもあるように、このゲームは“最高の瞬間”を求めるゲームだ。何にとっての最高の瞬間か。カメラである。アフリカは、撮影の楽しさをとことん追求した作品なのだ。
カメラというと、ややマニアックな印象を受けるかもしれない。あるいは専門技術と感じて気後れすることもあるかもしれない。そんな人にこそ、声を大にして言いたい。カメラはマニアの閉鎖的な趣味ではない。それどころか、人生を豊かにするために強力なパートナーとなる。子供の成長を記録する親たちや自身のブログを飾るために撮影に余念のない人はもはやごく普通の光景。デジタルカメラの進化と普及、携帯電話の写真撮影機能の強化によって、何かを撮影することは極めて日常的な行為になったといえよう。
ところが何事もそうだが、とりわけカメラは入り口のハードルが少々高い。高性能のカメラを買ってきても十分に使いこなすことは難しいし、ましてや撮影術となると、一朝一夕には身につかない。そもそもカメラ自体がポンポン買えるほどの安価な商品ではない。そうした理由で勉強したくとも環境が整わず、結果的にカメラが縁遠い存在となっている人も多いはずだ。
そんな人にとって最良の教科書であり、実践入門となるのがこのゲームだ。カメラの諸機能やそれらの使い方もプレイすることで理解し、修得できる。それにともなって芸術的なセンスも向上していくだろう。写真を見ていいと思うこと、そして他人が見てもいいと感じる写真を撮ること。個人の中に秘められたアーティスト性が鍛えられ、開花する可能性すらあるのだ。
たかがゲームで何を大げさなと思うならば、なおのことプレイをしていただきたい。高度な映像表現能力を持つプレイステーション 3で構築されたアフリカの大地には、それだけのリアリティがあるのである。そういう観点から言うなら、このゲームはプレイステーション3だからこそ成立しているともいえるだろう。
動物たちは強く、美しい
ところで、ここで反論が上がるかもしれない。動物はどうなった、と。
確かに宣伝などを通して野性動物がずいぶんアピールされていた。現に「AFRIKA」をプレイすることになった際、「動物好きですか?」と聞かれたぐらいだから、人によっては野性動物と戯れ癒されるゲームと思い込んでいる人もいるかもしれない。
もちろん、そうした要素はゼロではない。悠久の大地を闊歩し、草をはんでいるシマウマなどを見れば、何となく解放感を味わうことはあるだろう。しかし、敢えて言うが、このゲームの本質はそこではない。例えば序盤に“チーターがガゼルを補食する瞬間を撮れ”というイベントがある。肉食動物が草食動物を食べて生きているという自然の厳然とした掟がはっきりと示されているわけだ。動物の世界をファンタジーとして描くのではなく、時には残酷ささえ含む、あるがままの自然を再現しているといえよう。
癒しの対象ではなく、リアルな生命体としての動物たちは、強く、そして美しい。筋肉の躍動、皮膚の光沢、どっしりした質感。3Dモデリングで再現された彼らの質感は一見の価値ありである。ただずまい、歩く姿、走る姿、すべてが抜群のリアリティをもってレンズに飛び込んでくる。
このゲームでは、動物はあくまで被写体だ。カメラの練習をする以上、当然被写体がなければ話にならないが、練習者の興味を引き、やる気を喚起する被写体でなければ気合いが入らない。その点、動物はベストだ。何より動くのがいい。動くがゆえに静止している時も絵になる。じっとサバンナにたたずむライオン、飛び立つ瞬間の水鳥、疾走するチーター、すべてが絶好の素材となる。
同時に、例えば走るチーターを撮るならシャッタースピードをどうするか、などの問題にも直面する。つまり、必然的にテクニックも体得していくことができるわけだ。
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