「99のなみだ」はどうして生まれたのか?:CEDEC 2008(1/2 ページ)
「自分や自分に似た人に向けた製品を作りたい」――。ニンテンドーDS用ソフト「99のなみだ」の起源は思いがけないものだった。
9月9日より開催されているゲーム開発者カンファレンス「CESAデベロッパーズカンファレンス 2008」(CEDEC 2008)において、「女性ががんばる新しいゲーム開発+α in 『99のなみだ』」と題したセッションが行われた。
本セッションの講師として、ニンテンドーDS用ソフト「99のなみだ」に携わったバンダイナムコゲームスの石田実緒氏(パブリッシング・プロデューサー担当)、磯桂子氏(企画立案・研究、システム・シナリオのディレクション担当)、青木奈津子氏(システム・シナリオ担当)、鈴木恒氏(制作プロデュース担当)が登場した。
「99のなみだ」は、10分程度のショートストーリーで感動の涙を流し、気持ちをすっきりさせるという、人への心理的効果を利用した新しい試みの製品。この企画誕生の経緯なども気になるところだ。
「99のなみだ」は予期せぬ出来事から思いつく
まず、磯氏から企画誕生の経緯について語られた。発端は、3年がかりのプロジェクトの突然の中止という予期せぬ出来事だそうだ。すべてを失って引きこもっていた時期、「99のなみだ」の基礎が生まれたのだという。「病気とか治せるような、人の役に立つものは作れないのかと考えるようになりました。自分や自分に似た人に向けた製品を作りたいなと思い始めていたんです」と磯氏。
それから、当時同じ部署だった青木氏とランチを食べながら話したことが、「99のなみだ」開発のきっかけとなる。「2人でピザなんか食べながら、心身ともに『癒されたいね』『元気になりたいね』なんて話していました。そこからどんどんアイデアを出していった感じです」(磯氏)。
企画書の書き方は分からなかったが、アイデアはどんどん出した。そのとき出た案は大食いする、旅行をする、イルカと泳ぐ、日記を書く、マッサージ、お笑い、泣ける映画など。でも時間がないし、簡単に元気を取り戻したい。さらにたくさん出したアイデアをまとめると、ストレスを解消するにはたくさん笑ったり泣いたりすることだという結論にいたったのだそうだ。磯氏は「短時間で手間をかけずにできるもっとも有効なストレス解消法が、喜怒哀楽だったんです」と説明する。
アイデアがまとまったら、そこから製品内容を人に伝える必要がある。「どんな時に、とんな人にどんな風に使ってもらいたいかということを、できる限り具体的にしました」と磯氏。そこで注意したのは、思い込みとかこだわりを排除することだったそうで、磯氏は客観的に見るということを徹底したという。「詰め込みすぎないで、どんどん削って、思い切って角を立たせて……。既存の製品で間に合うのだったら、残念ながらそのアイデアはなしということに。つまり新しいかどうかということを中心に考えました」(磯氏)。
磯氏と青木氏の中で、おおまかなコンセプトは決まっていたが、喜怒哀楽でストレスを解消することができるというのは実際どういうことなのか。自分たちだけで製品を作るのは無理かもしれないと考え始めていた。そんな時に早稲田大学の河合隆史教授に出会い、産学連携プロジェクトがスタートした。
研究の目的は、特定の心理効果を有したゲームソフト開発。最終的にはソフト開発だけではなく、特許の出願、人間工学学会での発表などの成果をあげている。
研究スタートの時点では、涙に特化したソフトという構想はなかった。青木氏は「1つ1のアイデアを検証していくということからスタートしました。学術的な資料を読みあさるという地道な作業になりました」と振り返る。
その地道な作業が実り、「泣く」という行為が自分たちのコンセプトに非常に近いということにたどり着く。そして自分自身が泣くとすっきりするという実感があったのだと青木氏。
泣くということはどんなことなのか
青木氏いわく、涙には「基礎的な涙」「反射性の涙」「情動の涙(エモーショナルティア)」の3種類の涙があり、それぞれの涙は役割が異なるという。情動の涙には、ストレス物質(マンガン)というものが多く含まれており、流すと体内のストレス物質が排出される。またストレス解消のほかにも、例えば脳内リセット効果や、体的にも免疫効果が高まるなどいろいろな効果が挙げられた。「情動の涙は、わたしたちのコンセプトにマッチしていると感じました」と青木氏。
そこから、人はいったいどうやったら情動の涙を流すのかという点を掘り下げ、アンケート調査を2回実施。この結果、男女を見て、泣きのつぼ(何に泣くか)というのが大きく違っていることが分かる。同時に男女共通のコンテンツを作るというのは非常に難しいという懸念材料も出てきた。
その後、感動することに関係する個人の特性(性別など)、感動の対象になるもの(小説なのか映画なのかなど)について洗い出し、最終的にゲームで提供すべき要素、泣けるコンテンツ(「ショートストーリー」)、泣けるシステム(後の「なみだのソムリエシステム」)、泣きやすくする工夫(最適な環境を整える)というのが見えてきたと青木氏は言う。
講義では、泣きやすくする工夫として、涙は下を向くと止まってしまうため、目線をなるべく下げないで見てもらえるよう、あえてニンテンドーDSの上画面だけを使用する仕様にしたことなども明らかされた。
「なみだのソムリエシステム」は、自分に合った感動のストーリーを届けるというもの。人が感動する大事な点は、共感を得ることが重要になってくる。「経験、行動、家族構成、それらを抜き出していって、質問に答えてもらうことで特性を決定していく方法にしました」と青木氏。要するに個人の泣きやすいランキング生成を思いついた。
「特性に応じて泣きやすいものを集めているので、すごく似たような話が上位にきてしまう。そればかりを立て続けに出してしまうと、泣ける物も泣けなくなる。この辺のバランスはどうするのか、大きな課題でした」と青木氏は語る。気分(今日は本当に泣きたい気分だとか)などをうまく組み合わせて出し課題をクリアしたそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍休止も…… 「強い遺伝子を受け継いだ」と注目集める【注目の“二世タレント”】
-
日本地図で人口減の都道府県を可視化してみたら…… 減少一色に染まる中、“意外すぎる県”が増えていた事実に驚きの声 「青ざめたわ」「恐ろしい」
-
母「昔は女の子によくモテた」→当時の姿を見ると…… 驚きのショットが1600万再生「私、生まれる年を間違えちゃったな」【海外】
-
セリアのタオルハンカチにハギレを足すだけで…… 超簡単に“すてきアイテム”が完成! 「可愛い〜」「作ってみます」
-
ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
-
街中で見かける“あの袋”の中で大根を育てたら…… 限界突破のわけが分からない姿に「ごめん、わろた」「大根じゃぁないww」
-
中学生男子、半年放置して“とんでもない髪形”だったけど…… “まさかの大変身”が100万再生の衝撃 「まさに激変!」
-
【ハードオフ】ジャンク品テレビ2台を組み合わせたら… “意外過ぎる結果”に驚きの声「いろいろ詰まっていた」
-
3色の“ましかく”をひたすら編んで、完成したのは…… 思わず拍手の仕上がりが114万再生「かわいすぎます!」「メッッチャクチャ好き」
-
「どうしてそんなに」スズメたちの隣にいた“ヤバいやつ” インパクト抜群の光景に15万いいね「ワイルドな感じ」
- 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
- 「大根は全部冷凍してください」 “多くの人が知らない”画期的な保存方法に「これから躊躇なく買えます」「これで腐らせずに済む」
- 浜崎あゆみ、息子2人チラリの朝食風景を公開 食卓に並ぶ“国民的キャラクター”のメニューが意外
- 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
- 中2長女“書店で好きなだけ本を買う権”を行使した結果…… “驚愕のレシート”が1300万表示「大物になるぞ!!」「これやってみよう」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”の家族に反響 ジュノンボーイの幼少期が香取慎吾似?【コンテスト特集2024】
- 大好きなお母さんが他界し、実家でひとり暮らしする猫 その日常に「涙が溢れてくる……」「温かい気持ちになりました」
- 「やばすぎ」 ブックオフに10万円で売られていた“衝撃の商品”に仰天 「これもう文化財」「お宝すぎる」 投稿者に発見時の気持ちを聞いた
- 「こんなおばあちゃんになりたい」 1人暮らしの93歳が作る“かんたん夕食”がすごい! 「憧れます」「見習わないといけませんね」
- 【今日の難読漢字】「碑」←何と読む?
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
- 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
- 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」