CEDEC2010からの新たな試み――「ポスター発表」って?CEDEC 2010(1/2 ページ)

今回で12回目のCEDECで初めての試みとなるポスター発表。一体どんな事が行われていたのか? 何人かの発表者からのお話も交えて、写真とともに紹介します。

» 2010年09月06日 13時56分 公開
[山本大樹,ITmedia]

レギュラーセッションでは語られない、「ポスター」に凝縮された発表の数々

 CEDEC 2010の会場であるパシフィコ横浜の一階で行われていた「ポスター発表」は、今回初めての取り組みとなるセッションの一つ。若手技術者・研究者、そして学生の方々の参加を促す目的もあったこのセッションでは、小さなスペースに発表の内容を「ポスター」として展示し、発表者により直接説明を受けることができる。

 技術そのものの発表もあれば、独自に研究した内容から企業へのメッセージを含めたものなど、30種類以上にも及ぶ多彩な発表があり、ひとつ一つが興味をひかれるものばかりでだった。

 この記事では、その中からいくつかをピックアップして、発表者からうかがった話と一緒に紹介していこう。

ズラリと並ぶポスターの数々。発表者の方から直接説明を受けたり、展示されている機械に触れることで、より身近なセッションとして感じられる
ポスターの一つ一つはコンパクトに展示されていた。こちらは、電気通信大学院の加藤寛士さんによる「触錯現象を利用した、ポータブルゲームのための空間的触提示」というセッション

Twitterで遊ぶソーシャルゲームの新たな展開「ゆけっ!はるひろ!」

 「Twitterが流行している昨今、ソーシャルゲームが多く遊ばれています。同じコミュニティ同士の遊びからさらに大きく、コミュニティの相互作用を用いて従来のゲームが持つエンタテインメント性を増すだけでなく、Twitter上でのコミュニケーションそのものを活性化させることもてきる」そう語るのは、関西学院大学の学生である戸谷直之さんだ。

 Twitterのような大規模なネットワークで遊べるソーシャルゲームは既にいくつか開発・公開されているが、広くてもフォロワー同士の小さなコミュニティや、個人的なプレイで完結してしまうものが多い。

 しかしこの「ゆけっ!はるひろ!」では、コミュニティの枠を超えて、もっと大きく広大なネットワークに広がっていくような試みがなされている。

 例えば、ゲーム内でプレイヤーの行動「AがBに攻撃」などがTwitterのタイムラインに投稿され、その投稿されたつぶやきをさらにゲームに取り込むことができる。ゲームプレイの行動内容をつぶやきとして投稿され、それに対する他ユーザーの反応もゲームに取り込むことで、「コミュニティの相互作用」というものが行われる仕組みだそうだ。

取材にご協力いただいた戸谷 直之さん。このアイディアを生かしたソーシャルゲームの新たな可能性に、ただただ期待に胸ふくらますばかりである

 さらにTwitterの膨大な情報量、頻繁なつぶやきの更新を利用し、つぶやきの内容でさえもゲーム内のキャラクターに影響を及ぼすことができるらしい。フォロワー同士の会話や、つぶやきが多いユーザーは、回復行動が可能になったりと、個人レベルの性格を表すに近い「つぶやき」という情報を上手く利用し、それをゲーム内のプレイヤーキャラクターに反映している点は、非常に期待できる面白さを秘めていることがうかがえた。

 コミュニティ同士で絡み合いながら、そのコミュニティ同士がゲームを通じて発展する可能性を提供している「ゆけっ!はるひろ!」には、Twitterユーザーだけではなく、これからソーシャルゲームを開発していく開発者の方々も期待できるものだろう。

裸眼3Dディスプレイの最先端をゆく「インテグラルイメージング方式の裸眼3Dディスプレイにおけるコンテンツ開発と応用システム」

 3Dメガネをかけずに、3Dディスプレイからの立体映像を見ることが可能な「裸眼3Dディスプレイ」というのを筆者が耳にしたのはごく最近の事である。ポスター発表のひとつに、東芝の森下明さんによる「インテグラルイメージング方式の裸眼3Dディスプレイにおけるコンテンツ開発と応用システム」というセッションがあった。

 ブースには2枚のディスプレイが展示されており、そのディスプレイがいわゆる「裸眼3Dディスプレイ」と呼ばれるものだった。ためしにのぞいてみると、メガネなしでも見事に立体映像を見られる。

 この立体映像は、9視差、つまり、9枚それぞれ角度などが違うものを組み合わせ、立体映像にしているそうだ。これらの「視差数が多い(9視差)」「視点を仮定しない平行光線」を用いられているのが、インテグラルイメージング方式という。

 この方式によれば、立体的に見える視点の位置というのがピンポイントではなく、かなり広くする事が可能になっているらしく、同じ位置で頭を動かさずとも、正面の30度の角度をカバーしているため、広域において立体視が可能だ。筆者も実際に試してみたところ、よほど頭を動かさない限りは、立体映像を確認することができた。

 しかし、一見メリットだらけの技術に思えるが、当然デメリットも現在は存在しており、「視差数が多いと立体範囲が広いが、3D解像度が低い」「飛び出せば飛び出すほど、その部分の解像度が低下する」などが挙げられていた。

 また、9枚それぞれ違う映像を使用するため、元の解像度がとても大きくなってしまう。ブースに展示されていた映像も、3840×2400という高解像度のものを、1280×800にして展示されていた。

 インテグラルイメージング方式を用いた開発・応用については、「バウンダリボックスインタフェース」というものがあり、9つのカメラという概念を意識せずに、コンテンツクリエイターは直観性の高いコンテンツ開発を行うことも可能になるようだ。

 マルチカメラの制御はコンテンツクリエイターにとって理解が難しく、コンテンツ開発がとても難しいものであったが、このバウンダリボックスによって、今後の3D開発環境は大きく変わるのかもしれない。

 発表者の森下さんは、この3Dディスプレイによる映像を「実際なしえないシミュレーション」として、教育などに生かしたいと語った。また、このような技術は、中国や韓国との競争の上で、日本では企業が協力していくべきだとも仰っていた。

会場ではこの2枚のディスプレイで立体映像を見ることができた
取材に快く応じてくださった、東芝の森下明さん。ブースを訪れる方々に丁寧な説明をされていた

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2407/24/news014.jpg 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  2. /nl/articles/2407/25/news017.jpg 「これが生えたら庭終了」 プロも降参する“何をやっても全部ムダな最恐雑草”の正体が400万再生「ほんとこれ厄介」「土ごと変えないと不可能」
  3. /nl/articles/2407/26/news151.jpg イトーヨーカドー春日部店が閉店へ 「クレヨンしんちゃん」に登場するスーパーのモデル 「残念」「寂しい」惜しむ声
  4. /nl/articles/2407/25/news012.jpg 夜、山中の側溝をのぞいてみたら…… 思わず声がもれる“あらぬ生物”の姿に「ヤバいw」「生で見てみたい」
  5. /nl/articles/2407/25/news007.jpg 水槽の中で卵を発見→慎重に見守って1カ月後…… 小さな命の誕生に飼い主も視聴者もメロメロ「まじで可愛すぎるほんとに可愛い」
  6. /nl/articles/2407/25/news138.jpg 「お父さんはママのオタクだった」 母親が「元・おニャン子」のタレント、アイドルとオタクが“つながっちゃいけない理由”を問いかける
  7. /nl/articles/2407/25/news050.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」 中1の“斜め上の解答”に「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」
  8. /nl/articles/2401/26/news015.jpg スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  9. /nl/articles/2407/26/news119.jpg 工藤静香、15歳の愛犬が天国へ 感謝の言葉つづるも……「泣いてばかり」「心が追いつかない」と悲痛な思い
  10. /nl/articles/2407/26/news008.jpg 外国人が来日して“3年後”…… マクドナルドの“オーダーの変化”に「胃袋が日本人のそれなんよw」とツッコミ
先週の総合アクセスTOP10
  1. プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが360万再生「凄すぎて笑うしかないww」「チーズが、、、」
  2. 6年間外につながれっぱなしだったワンコ、保護準備をするため帰ろうとすると…… 思いが伝わるラストに涙が止まらない
  3. 「お釣りで新紙幣来た!!!!!と思ったら……」 “まさかの正体”に「吹き出してしまった」「逆に……」
  4. 赤いカブトムシを7年間、厳選交配し続けたら…… 爆誕した“ウルトラレッド”の姿に「フェラーリみたい」「カッコ良すぎる」
  5. ダイソーで買った330円の「石」を磨いたら……? 吸い込まれそうな美しさが40万回表示の人気 「夏休みの自由研究にもいいのでは?」
  6. 「これ最初に考えた人、まじ天才」 ダイソーグッズの“じゃない”使い方が「目から鱗すぎ」と反響
  7. もう笑うしかない Windowsのブルースクリーン多発でオフィス中“真っ青”になった海外の光景がもはや楽しそう
  8. アジサイを挿し木から育て、4年後…… 息を飲む圧巻の花付きに「何回見ても素晴らしい」「こんな風に育ててみたい!」
  9. スズメの首は、実は……? 「心臓止まりそうでした」「これは……びっくり!」“真実の姿”に驚愕の声
  10. 【今日の計算】「8×8÷8÷8」を計算せよ
先月の総合アクセスTOP10
  1. 18÷0=? 小3の算数プリントが不可解な出題で物議「割れませんよね?」「“答えなし”では?」
  2. 日本人ならなぜかスラスラ読めてしまう字が“300万再生超え” 「輪ゴム」みたいなのに「カメラが引いたら一気に分かる」と感動の声
  3. 「最初から最後まで全ての瞬間がアウト」 Mrs. GREEN APPLE、コカ・コーラとのタイアップ曲に物議 「誰かこれを止める人いなかったのか」
  4. 「値段を三度見くらいした」 ハードオフに38万5000円で売っていた“予想外の商品”に思わず目を疑う
  5. 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
  6. かわいすぎる卓球女子の最新ショットが730万回表示の大反響 「だれや……この透明感あふれる卓球天使は」「AIじゃん」
  7. 「これはさすがに……」 キャッシュレス推進“ピクトグラム”コンクールに疑問の声相次ぐ…… 主催者の見解は
  8. 天皇皇后両陛下の英国訪問、カミラ王妃の“日本製バッグ”に注目 皇后陛下が贈ったもの
  9. 「この家おかしい」と投稿された“家の図面”が111万表示 本当ならばおそろしい“状態”に「パッと見だと気付けない」「なにこれ……」
  10. 和菓子屋の店主、バイトに難題“はさみ菊”を切らせてみたら…… 282万表示を集めた衝撃のセンスに「すごすぎんか」「天才!?」