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「ネット」と「ゲーム」の可能性は,まだまだ広がる!
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2002年9月21日
東京ゲームショウ初日の「ビジネスデー」で,吉本興業関連のブロードバンド事業会社であるファンダンゴ社長による特別講演が行われたことや,基調講演でSCEの久夛良木社長がPS2のブロードバンドコンテンツに関する展望について語ったのは,既報のとおり。
今回のTGSの大きなテーマのひとつが「ブロードバンドコンテンツ」だというのは,間違いないが,TGS初日に並行して開催された「TGSフォーラム2002」でも,それを強く印象づけるプログラムが用意された。
「キーパーソンが語るブロードバンド戦略」と題された,このセッションでは,インターネットを本業としつつ,そのゲームコンテンツでもユーザー獲得を進めている「ヤフー」「so-net(SCN)」と,今後の成長が見込まれる「ネットワークゲーム」市場に積極的に乗り出しているゲーム会社「コーエー」「スクウェア」の計4社の代表者が一堂に会し,自社戦略のプレゼンテーションや,パネルディスカッションを行った。
■Yahoo!ゲーム
ヤフーからは,メディア事業部事業部長の宮坂学氏が参加。同サイトのゲーム関連チャンネルである「Yahoo!ゲーム」の今後の戦略について紹介した。
宮坂氏によれば,全体の傾向として,2001年の秋前後から,ブロードバンドユーザーが増え,それぞれのユーザーがインターネットに費やす時間が増えているという。
ゲーム情報や,オリジナルゲームコンテンツの配信を行っている「Yahoo!ゲーム」では,今後,広告媒体として,さらに,コンテンツ配信・課金システムの提供といった側面に特化することで,ゲームメーカー支援の態勢を強めていきたいという。
また,東アジア圏のヤフーグループとのコラボレーションによる,ビジネス拡大も視野に入れていくと話した。
■So-net「Party Crew」
「ポストペット」でも有名なインターネットプロバイダー「So-net」を運営するソニーコミュニケーションネットワークからは,同社のゲームサイト「Party Crew」で,オリジナルゲームコンテンツの制作・運営に携わっている河合浩之氏が参加した。
「一般ユーザーにとって,ネットワークゲームの認知はまだ低いのではないか」という河合氏は,インターネットで「あそぶ・たのしむ」ための手段を提供するためのコンテンツとして,オリジナルゲーム製作を手がけているという。
また,「ネットワークゲーム」には,従来の一般的な「ゲーム」と異なる発想が必要であるとし,ユーザーごとに異なるネットワーク環境(インフラ,スピード,利用スタイル)などの“制約条件”を考慮に入れたゲーム開発が重要であるとした。
また,ネットワークゲームにおける「楽しさ」の比重は,他者とのコミュニケーションにあるとしながら,一方で,それがリスクとなることも指摘。嫌がらせへの対応や個人情報管理といった点に注意を払うとともに,アップデートや定期的なイベント,サポート,障害対応といった,運営面の重要さを,長期的に考える必要がある点を強調した。
Party Crewでは,今後もライトユーザー,コミュニティ重視のオリジナルコンテンツを配信・提供していくという。
■コーエー
今回のTGSで「三國志Battlefield」や「信長の野望Online」といったネットワークゲームを出展しているコーエー。同社執行役員ソフトウェア4部長の松原健二氏は「コンテンツ開発」「アグリゲーションサービス」「グローバルサービス」の3つが,コーエーのブロードバンド戦略であると説明した。
「コンテンツ開発」は,文字通り,前出の2タイトルのようなネットワークゲームを定期的に,あらゆるプラットフォームに向けて開発すること。「アグリゲーションサービス」については,同社のゲーム情報サイト「GAMECITY」に,オンライン・ショッピング,ファンクラブ運営,ユーザー登録・認証,課金といった機能を持たせることで実現していくという。
「なぜ,自社でこうしたサービスまで行うのか。その理由は,ユーザーに一番近い部分であるとともに,ある程度の規模までなら,自社で構築した方が低コストだから」(松原氏)
また,オンラインゲームにとって,最も売れ筋である海外(韓国・台湾)での展開は必須とし,現地にサービス拠点を設けるほか,外国語版も日本語版と同時発売するなどの形で,積極的にグローバルサービスに取り組んでいくとした。
■スクウェア
家庭用ゲーム機初の本格MMORPGとしてスタートした「FINAL FANTASY XI」。Windows版の発売も11月7日に決まり,ビジネス面でも,その動向に注目が集まっている。
同社代表取締役社長CEOの和田洋一氏は,「ブロードバンドとマシンスペックの向上によって,ネットワークゲームのインタラクティブ性が向上し,そこに新しいバーチャルコミュニティが出現する。これがビジネスチャンスになる」という。
和田氏によれば,ネットワークゲームは「ユーザーコミュニティをいかに育てるか」を念頭に開発するべきという。
同氏は,Windows版FFXIのβバージョンを,自らデモプレイ。PS2版のFFXIでは,既に開発側が意図しない,ユーザー自身によるイベントがいくつも開催されていることに触れながら,コミュニティを,いかに存続させ繁栄させるかを考えつつ,FFXIを運営しているという点を強調した。
「(ネットゲームの世界では)バーチャルな世界のバランス維持が大変な作業。それによって,きちんとしたコミュニティを作る能力があるところに,ビジネスチャンスが生まれる」(和田氏)
プレゼン終了後は,モデレーターも交えた,4氏によるパネルディスカッションに。共通した意見としては,予測できないトラフィックや障害の発生によるネットワークゲーム運営の難しさに対するものがあったが,同時に「オンラインゲームによって,ゲームユーザーのパイはまだ広がる可能性がある」といった,前向きな意見も出された。
今回のセッションには,それぞれ「インターネット」と「ゲーム」を本業としつつ,ネットワークゲーム(ブロードバンドコンテンツ)への進出を行っている4社が参加した形になるが,その中で,インフラや課金・配信システムを持つがゲーム開発に大きなコストをかけづらい「ネット企業」と,ゲームコンテンツの開発能力はあるが,大規模で効果的な配信・運営システムはなかなか持つことができない中小規模の「ゲーム企業」との協力が有効であることを示唆する発言もあった。
従来の業界の枠組みを超えたコラボレーションが実現すれば,日本では,まだ動き始めたばかりの「ネットワークゲーム」のビジネスに,新たな広がりが生まれる可能性もある。
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