ユーザーとともに小気味よいペースで歩む「剣と魔法のログレス」:インタビュー
プレイヤーはガツガツしなくてもいい――。マーベラスAQLのブラウザMMORPG「剣と魔法のログレス」のアップデートはかく行えり。
マーベラスAQLが、10月12日から正式サービスを開始したブラウザMMORPG「剣と魔法のログレス」。「ブラウザ三国志」や「戦国IXA」を開発したスタッフが中心となった開発スタジオAimingによる初の本格的なMMORPGとなる。純国産であることを最大限の利点とするべく、ユーザーの意見を真摯に受け止めアップデートに余念がない。
今回、話を聞いたのはマーベラスAQLより本作ディレクターの飛塚剛氏、開発側からAimingよりプロデューサーの辻井康司氏と、Aiming 大阪スタジオ ディレクターの下川晶平氏。
「剣と魔法のログレス」は、10月20日に各フィールドにワープ屋を配置。10月26日にはパーティ参戦機能の実装。11月17日にはガチャのラインアップを更新、職業バランスの調整をはじめとした修正と不具合の対応をしている。12月には複数の仲間とクランを結成できるクランシステムを追加。2012年以降には強力ボス、レイドボス、新エリアの追加を予定している。
ユーザーの声を受け問題を修正する姿勢は、サービス開始から変わらない。だが、ただユーザーの要望の多いものから追加しているわけではないのは、パーティー参戦機能の実装を例にするまでもない。辻井氏は「ワープはユーザーに歓迎されたが、パーティー参戦はそこまでニーズがあったわけではない」と語る。初心者向けに優先し、パーティーのチュートリアル的なものとして実装した。
急いでパーティー参戦を入れたのは、予想よりもパーティーを組むという行為に対して、障壁が高いのではないかと判断したからだ。サービス直後はパーティーを組みクエストを消化するプレイヤーも多かったが、ソロプレイヤーも同じように多かった。それはゲームの消化率にも表れていると下川氏。予想していたよりもクエストの消化もレベル上げも、当初のもくろみとは異なり、ゆるやかだと感触を得ていた。そこで、ソロで進めていたユーザーがパーティーを気軽に組めるようになれば多少は解決するのではないかと考えた。
パーティー参戦機能は、他のユーザーが戦闘を開始していても、あとから参戦できるというもの。戦闘中の相手パーティリーダーが参戦設定をONにしており、戦闘中の相手パーティメンバーの最も高いレベルとのレベル差が-3〜+3のみ参戦可能だ。
世にあるMMORPGには、そのタイトルごとの“文化”というものが育まれていく。開発陣は、その“文化”の担い手たちにそっと寄り添う存在として、時には助け叱咤激励され発展を促し、そして見守る責務があると自覚している。下川氏は強敵を前にたたずみ、誰か助けてくれる人を待つソロプレイヤーの姿を見て、それがある意味「剣と魔法のログレス」らしさなのだと思ったと明かす。
「ゆるくつながり、無言を許容する関係性」――。これこそが本作の魅力なのかもしれないと気づくに至った。薄い関係でもいいではないか。短時間でもできるブラウザゲームを標ぼうしているのであれば、それもまた正しい。その助けとなるべく動いた例がパーティー参戦機能なのだろう。ただ、辻井氏も下川氏もパーティー参戦した際にはお互いを尊び、「(感謝の)ひと言を忘れないこと」と釘をさすことも忘れなかった。やはりMMORPGの世界にもルールは必要だし、ネットの先には生の人間がいることをプレイヤーも忘れてはいけない。ほどよいコミュニケーションの実現に向けてアップデートは今後もまだまだ続くことになる。
新しい遊び方の提示もぬかりはない。アイテムについても通り一遍のモノは求めていないと中身を変更した。取引の活性化のために、装備さえしなければ取引可能なアイテムを実装していく。ユーザーからの問い合わせや要望はもちろん、まだ誰よりも本作を遊んでいる最初のユーザーとしてスタッフからの意見を積極的に吸い上げ、迅速なスピードで対応していく。そこには飛塚氏をはじめ、マーベラスAQLとの調整もあるだろう。ただし、飛塚氏はあくまでも中身については全幅の信頼を寄せていると言う。「こちらからとやかくいうことはほとんどない」と飛塚氏は、ユーザーへの訴求と満足度を高めることだけを考えているという。
「初心者や少し離れているユーザーには、アップデートの成果を確認しに遊びに来てほしい。チャットを疎ましく思う方も多いようですが、『おめ』と『よろ』と『おつ』だけでいいんです。戦って楽しく別れることができればいいんですよ」(飛塚氏)
例えば特定の職業ばかりを伸ばしていても、いつかは壁にぶつかる時が来る。前述したように、ソロプレイヤーでも楽しめるように調整したものの、コンセプト的にはパーティー必須であることには変わらないのであれば、その壁を利用するべきだろうという考えだ。現在、ゲーム的にレベル20前半がアベレージで、30に到達するにはもう少しかかると見ている。コストをかけなくても、1カ月かければ20前半までは容易に到達できるのだ。今後は、世界観の提示はしながらも具体的なストーリーでの強制は避けると辻井氏は名言した。職業の追加についても、現在の5つの職業を極めるくらいまでは入れる予定はないという。
もちろん、中には現状最大レベルまで到達したプレイヤーもいるものの、やることがないわけではない。強化合成などはいまだ最終段階まで上げたプレイヤーは現れていないのだそうだ。ある程度のコツをつかめれば、強化合成も効率的に戦えるようにすることができる。今は、コストをかけるのに二の足を踏んでいるようにも思うが、開発陣としてはぜひとも挑戦してほしいやり込み要素とのこと。
また、今から始めようとしているプレイヤーのためにもスターター装備の実装などでフォローする。序盤で心折れたプレイヤーは、復帰してみるとその変化をもっとも感じ取れるのではないだろうか。なるべく自分で解決できない状態で詰むような事態を避けるべく気を使っている。とかく届く意見は声の大きな人である。彼らの意見も大事だが、声なきサイレントマジョリティのことも忘れてはならないのだ。開発陣は彼ら声なき不満あるユーザーの意見を自らが1プレイヤーとしてくみ取っていき、声の大きな意見も最大限に受け取り一緒に変えていこうとしている。それが、国内で作るMMORPGとしてのスタンダードだと思っている。
現状、アップデートの予定は先々まで決まっているものの、必要があれば差し込む形で鋭意進行中だと下川氏。恒例の季節イベントなどはその都度、実施していくとも。実現可能かは分からないが、年末などには専用のギルドコールを利用したイベントなどできたらと計画しているようだ。
「まだまだ未完成なんです。レイドボスやクランなど、今後さまざまなコンテンツが加わっていきます。『ログレス』としてもゲームの面白さが膨れていくのでぜひ続けてほしい」(下川氏)
そのほかに3人はもっとエモーションで踊ってほしいとも。時期的には未定だが、簡単に手を振るなど、戦闘に関わらないコミュニケーション機能も強化していきたいと語る。ゆるやかなりにコミュニケーションが発展していけば、情報も得やすくなる。例えば、おしゃれ装備枠を知らない人が意外と多いのも、コミュニケーション次第で簡単に解決するだろう。もちろん、分かりづらさがあれば改善も怠らない。だからできるのであれば「より深く遊んでもらいたい」と辻井氏。
「オンラインゲームにはいろんな形があります。そして(皆さんの力で)変えられる可能性も。(コミュニティーの)横のつながりから得られるものもあります。そうした(オンラインゲームの)大前提に沿ってのんびり遊んでほしい」(辻井氏)
誰かと協力して物事にあたるのは面白くないわけがない。ゲームの中も同様で、本当はパーティープレイをやらずに面白くないとは言ってほしくないのが開発陣の心境だろう。だが、ソロプレイヤーへの施策も考慮しながら、よりパーティーを組みやすいように努力していく姿勢は感じることができただろう。「プレイヤーはガツガツしなくていいんですよ」と笑う3人が、誰よりも本作に対してガツガツしているという矛盾。この姿こそが本作の目指すべきあるべき姿なのだから。
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