「犠牲と代償」によって生み出される「真実」のファンタジーアクション「ソウルサクリファイス」:稲船敬二のカプコン独立第1作目
数々の発言で業界に激震をもたらしてきたゲームクリエイター・稲船敬二氏が立ち上げたコンセプトの第1作目となる作品「ソウルサクリファイス」が発表! ゲーム内容を、稲船氏本人の口から語っていただいた。
ソニー・コンピュータエンタテインメントは5月10日、東京丸の内の東京国際フォーラムにて、プレイステーションVitaの最新作「ソウルサクリファイス」制作記念発表イベントを実施した。
「ソウルサクリファイス」は、「鬼武者」シリーズの製作などで有名なゲームクリエイター、稲船敬二氏が立ち上げたゲーム制作会社「コンセプト」の最新作。
去年、一昨年と、グローバルでない日本のゲーム業界を痛烈に批判し、ファンのみならず、業界の各所に様々な議論を呼び起こした稲船氏。本作は、彼がカプコンから離れてからの実質的な“復帰第1作目”であり、様々な面から注目を集めている作品といえるだろう。
そんな本作が発表されるとあって、会場には多くのファンと報道陣が集まった。今回の記事では、イベントで公開されたゲーム情報、そしてそれに関する稲船氏のコメントをお届けする。
「ソウルサクリファイス」が、新たなる「ファンタジー」の世界を提示する
まず最初に、ソニー・コンピュータエンタテインメントの代表として登壇したのは、ソニー・コンピュータエンタテインメントWWSプレジデントの吉田修平氏。
吉田氏はまず来場者への簡単な挨拶をすませた後、今回発表する「ソウルサクリファイス」について「現在ジャパンスタジオが最も力を入れて制作しているタイトルのひとつ」と評した。さらに本作を知るあたっての注目点として、タイトルである「魂(ソウル)犠牲、生贄(サクリファイス)」という言葉。そして本作のキャッチコピー「協力ではない、共闘である」を挙げる。
これらのキーワードが、PS Vitaの持つ「インタラクティブ性(参加性)」を活かし、魅力を最大限に引き出すのだとコメントした。
果たして、これらのキーワードにどういった意味があるのか。それを解説するプレゼンターとして呼ばれたのが、本作のコンセプターにして、コンセプト代表取締役の稲船敬二氏。ここからは、ゲームのシステムやストーリーなど、大まかな概要について語られた。
最初に語られたのが、本作の「コンセプト」。最初に「コンセプトさえ面白ければゲームの8割は素晴らしいものになると思っています。それほどに、コンセプトは重要なものなのです」と前置きし、稲船氏は本作のコンセプトが「真実のファンタジー」だと明らかにした。
稲船氏は、「ファンタジーとは架空の世界であり、架空の物語です。それを真実と重ねあわせた作品を示すことができれば、面白い作品になるのではないか、という企画になります」と解説。そしてその「真実」という言葉の意味については「犠牲と代償という言葉が、それにあたります。大きな力を得るためには、それなりの大きな代償を支払わなければなりません。それは些細な事でも誰もが経験していると思います。ファンタジーという世界の中で、何をするにも犠牲や代償を払い戦っていく。それを“共闘”というアクションの中で示していきたいなと思っています」と、力強く語った。
そこで、そのコンセプトを映像にしたプロモーション映像が、中央スクリーンで流された。その中では、自らの背骨を引きぬいて、それを剣とする「エクスカリバー」など、稲船氏の言動に違わぬ内容の映像が繰り広げられていた。稲船氏は「抜いたものしか使えないエクスカリバー、それは抜く覚悟を誰もできないほどの存在なのだと私は解釈しました」と、その映像の意味について解説。それ以外にも「犠牲と代償」というコンセプトのもと生み出された数々の武器や防具、魔法が登場するとのこと。
主人公は、邪悪な魔法使いに、生贄として牢屋に閉じ込められた青年。彼は牢屋の中で、禍々しい本を見つける。そこに書かれていたのは、日記のような、ある魔法使いの戦いの記録だった。主人公は本の世界に入り込み、魔法使いとして本の世界を体験することになる……という内容だ。プレイヤーは主人公として、その本の中にいる魔法使いやモンスターと戦っていく……。
モンスターは、数あるファンタジー作品でお馴染みの「ハーピー」や「ケルベロス」、「スライム」といったものが登場するが、そのデザインはひと癖もふた癖もあるものばかり。稲船氏によると「凝り固まったデザインのコピーではなく、人間の欲望が肥大化した姿というコンセプトのもとデザインした」とのこと。戦い方によっては、元となった人間を助けだす方法があるかも?
ひと通りの解説を終えた後、稲船氏は実機でのデモプレイをスタートした。MPといった概念は存在せず、犠牲を払えさえすれば何度でも魔法は使用できるようで、その犠牲は自分の身だけではなく、所持しているアイテム(木や水など)を使用したものでも良い様子。
また、敵を倒した際は、敵を「救済」するか「生贄」にするかを選択できる。そのいずれかを選択することで、どのような変化がもたらされるのかはまだ分からないが、それぞれに違う意味合いが持たされていることは確かなようだ。
音楽には光田康典氏&鋒山亘氏のビッグネームを起用!
本作でこだわられている部分は、映像やストーリー部分だけではない。「クロノ・トリガー」や「ゼノギアス」シリーズの音楽を手がけた光田康典氏と、オーケストレーションを得意とし、「アフリカ」などの音楽を製作した鋒山亘氏のふたりが、本作の音楽を担当している。
ここからは、稲船氏のほかに光田氏と鋒山氏がステージに登壇。本作の音楽について語ってもらうこととなった。
光田氏が担当した主人公が最初に触れる「本」のテーマソング、そして鋒山氏が担当したバトルBGMが続けて会場に流され、それぞれについての解説が行われた。光田氏は「絶望的な状況と、そこから見えるほんの少しの希望を表現しました」とコメント、鋒山氏は「それぞれのモンスターは、欲望に駆られた人間なのです。なので、彼らの魂から出てくる声が聞こえてくるように、意識して曲を描きました」と、シチュエーションなどかなり力を入れていると紹介した。
稲船氏はこれらの音楽について「ゲームのコンセプトをよく理解していただいて、それにあった楽曲を作っていただきました。今回はしっかりと作曲をしていただける方とタッグを組めたので、安心して任せられます」とコメント。表情からもかなり気に入った様子が見て取れた。
今後もまだまだ楽曲を制作していくとのことなので、後の展開を楽しみにしておこう。
「ソウルサクリファイス」のキモ、マルチプレイの実機映像を稲船氏が解説!
そしてイベントの最後として、本作の4人マルチプレイの映像が流された。この「共闘」というファクターも、本作のキモとなる部分のようで、稲船氏も「この映像が今回の目玉となるでしょう」と発言していた。
基本的には、先程流された1人プレイでの動作と大きく差がないようにも見えたが、その実はかなり違うゲーム性が用意されているようだ。特殊なシステムとして、味方が倒れると、その味方を敵と同じように助けるか、それとも生贄とするかを選択できる。生贄にすることで、強大な魔法を使うことができるが、それによってどういったデメリットが発生するかは不明だ。
戦闘したモンスターは「ケルベロス」。戦闘が進むにつれて、敵であるモンスターが、どのようにしてその姿になってしまったのかが、赤い血のような文字で表現される。また、尻尾や頭など、部位破壊の要素も組み込まれているようで、ケルベロスの3つある頭のうちひとつが破壊されている姿も見ることができた。
また、倒した敵を「生贄」にするか「浄化」するかを、倒した味方全員で決定できる。これがどういった意味を持つのかは未知数だが、どちらにしろ何かしらのエグい「代償」が待っているのだろうと思われる。
実機プレイ映像が終了した後、イベントの締めくくりとして稲船氏は「独立してゲーム会社を作ってから1年ちょっと。その間にPS Vitaに関わらせていただけることになり、精一杯努力してきました。どれだけ早いスピードで、どれだけ素晴らしい作品をユーザーさんにお届けできるかを考えてやってきて、今良い感じで実現できています」と発言。そして「今までやったゲームの中で一番面白い、と言わせられる気持ちで制作しています。そのために払える犠牲は、自分で払える分はたくさん払いました。それで得たスタッフたちと、ゲームを作っています。ぜひ皆様、期待してこのソウルサクリファイスを楽しんでいただけたらと思います」と意気込みを語り、イベントは終了となった。
カユいトコロに手が届く! わからなかったあの部分を質問してみた
まだ分からないことばかりだが、情報が出てくるのはまだまだこれから。記事の最後は、イベント終了後に行われた稲船氏による質疑応答で締めくくりたい。気になっている情報も!?
―― 今回の企画が、どういった形でいつ頃開始されたのかを教えて下さい。
稲船 カプコンを退社してすぐ、いろいろな企画を立ち上げました。その中で、ソニーさんのVitaに向けたタイトルを思いつきましたので、かなり早いタイミングで持ち込みました。独立してからのタイトルの中で、最も早く進行したプロジェクトです。
―― 「ソウルサクリファイス」を、据え置き機ではなくPS Vitaでリリースする理由を教えて下さい。
稲船 マルチプレイをメインに据えたゲームを作りたかったんです、マルチプレイの凄まじさはカプコンでよく知っていましたから(笑)。そういう意味では、Vitaの性能を活かしきった良いマルチプレイを自分なりに作れたのかなと思います。
―― 企画の段階で、マルチプレイという前提があってのタイトルだったのですね。
稲船 そうですね。
―― アドホックを使ったマルチプレイ意外に、オンラインを使用したシステムは考えていますか?
稲船 アドホック以外でも、オンラインでの共闘は可能になっています。Vita単体でのオンライン接続が可能なので、これを利用したマルチプレイになりますね。アドホックパーティなどについては、続報をお待ちください。これは日本国内に限らず、海外に対してもアピールできたらいいなと思っています。まだ海外に対しての展開は予定してはいないのですが。
―― オンラインでゲームをプレイした際は、プレイヤー同士でコミュニケーションを取る手段は用意されていますか?
稲船 ボイスチャットなどが可能ですので、そちらを活用していただいたり、なんらかのユーザーコミュニケーションを取る場は用意しようと考えています。詳細については続報をお待ち下さい。
―― 気になる発売のタイミングについてと、パッケージ版、ダウンロード版などの区分けは用意されいるかを教えてください。
稲船 発売予定は今冬です。発売の区分けについてですが、パッケージ版とダウンロード版をそれぞれ用意するつもりです。個人的には今年中に発売したいんですが、そうもいかないので(笑)。
―― ゴア表現がやや激しいように感じられましたが、CEROレーティングはどの辺りを想定していますか?
稲船 あまりにユーザーさんを制限しすぎるような形にはならないように配慮します。ただ、ゲームのコンセプトからCERO:Aってことはありえないですが(笑)。
―― 他のプレイヤーを犠牲にする際、死んでしまった場合はどうなるのでしょうか?
稲船 当然、クリア報酬は同じではありません。さらに、犠牲にした側にも、何かが発生します。仲間を犠牲にせずクリアした場合は、また違う結果になりますよ。その辺りで迷っていただこうかなと。
―― 共闘プレイをしている際に「救済」と「生贄」の意見が分かれてしまった場合はどうなるのでしょうか。
稲船 その場合どうなるかは、もちろん用意してあります。ただ、今は言えません。果たしてその時にどうなるのか、倒した後の展開も重要になってきますので、続報を期待していてください。
―― 敵モンスターはどのくらい出現する予定ですか?
稲船 発売スケジュールとリンクしている部分なのですが、なるべく多く、たくさんのモンスターを入れたいと思います。ですが、現時点でかなりのモンスターが作られていますので、今後どれほどそれを組み込んでいけるかが重要になってきます。
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