専門医に聞く舌下免疫療法(2)注射よりも手軽で安全、だから続けやすい

花粉症の新たな救世主「舌下免疫療法」について、アレルギー専門医である「ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック」の永倉仁史院長にお話を伺う第2回です。

» 2015年03月09日 06時00分 公開
舌下免疫療法

 アレルギーの原因となる物質を、少しずつ体内に入れながら慣らし、過剰反応しないよう免疫システムを変えていく。それが「免疫療法」だと、前回永倉先生に教えていただきました。

 こうした免疫療法はこれまでになかったのか、と言えばそんなことはありません。ご存じの方も多いでしょうが、注射を使った免疫療法はすでにあります。では、これまでの免疫療法と「舌下免疫療法」は何が違うのか。永倉先生に解説をしていただきましょう。

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もう一つの免疫療法のメリット、デメリット

――これまでに「舌下免疫療法」のような免疫療法はなかったのですか?

ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック 永倉仁史院長

永倉先生:いいえ、注射を使った“皮下免疫療法”というものがすでにあります。ごく薄い治療液、つまり、アレルギー原因物質を含むエキスを注射して、免疫を慣らしていく方法ですね。これは、非常に有効率が高く、スギ花粉症で70〜80%と言われています。

――それほど効く治療法がありながら、どうして、花粉症に悩む人はいっこうに減らないのでしょう?

永倉先生:どんなに素晴らしい治療法でも、患者さんが治療を継続できなくては効果を上げることはできません。注射による皮下免疫療法は、何年も継続して注射を受け続ける必要があり、その間、痛みや腫れを伴うと言うデメリットがあります。また、ときに強い副作用を起こす場合があり、じんましんや喘息症状、口や手足のしびれ、血圧の低下などの例があります。さらに、アナフィラキシーの危険性も指摘され、せっかくの根本的治療でありながら、敬遠されてしまっている面があります。

皮下免疫療法の欠点を改良!

――花粉症から解放されるなら少しくらいの痛みは我慢する人も多そうですが、それが何年も続くとなるとしんどそうですね。

永倉先生:舌下免疫療法は、口の中にワクチンを垂らしてそのまま数分、維持するだけでいいので、痛みや我慢は必要ありません。自宅で患者さんが自分で継続できる療法なので、通院回数も減らせて時間短縮にもなります。その分、治療費も節約できますね。

――なるほど。皮下免疫療法の欠点を改良したのが、舌下免疫療法なのですね。

永倉先生:はい。何より重篤な副作用がこれまで出ていないのも大きいですね。より安心して治療を受けていただくことができます。皮下免疫療法は、強い副作用の可能性があるため、治療を受けるにはそうした副作用症状に対応できる設備のある施設や、専門知識のある医師が必要でした。だから、一部の病院や専門医にしか扱えず、それも皮下免疫療法が広まりにくかった原因だと思われます。

治療に使用する「シダトレン スギ花粉舌下液」。昨年保険適用され、患者の負担額が3分の1で済むようになった

明日の更新では、舌下免疫療法の具体的な治療法について、永倉先生にお聞きしていきます>

永倉仁史(ながくら・ひとし)

ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック 院長

昭和57年、東京慈恵会医科大学卒。

昭和60年、東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科アレルギー外来担当となり、鼻アレルギーの治療及び、減感作療法を専門とする。その後、環境省の「アレルギー性疾患増加の原因の究明に関する研究」や、文部科学省委託「スギ花粉症克服に向けた総合的研究」に参加。アレルギー専門医としての実績と経験を積んだ。平成18年、ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニックを開院、院長となる。

日本耳鼻咽喉科学会認定専門医/日本アレルギー学会認定「アレルギー専門医」・代議員/花粉情報協会理事


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