ウェアラブルデバイス使用に許される“境界”――人間の能力を拡張するためのルールとは

広く「人間の能力を拡張するもの」と解釈できるウェアラブルデバイス。その使用が許される“境界”については、今後必ず激しい議論が起こることだろう。

» 2015年03月17日 06時00分 公開
[杉本吏,ITmedia]

 スポーツメーカーのミズノが先日、ランニング用の眼鏡型ウェアラブルデバイス「SCOUTER」(スカウター)の開発を発表した。専用アプリと連携し、走行中にコースマップや走行距離、走行時間、消費カロリーなどの情報を表示できるようにするものだ。2015年度内の発売を目指しているという。

ミズノのスポーツ用ウェアラブルグラス「SCOUTER」(スカウター) ミズノの「スカウター」(デザインコンセプトモデル)

 ウェアラブルデバイスはやはりランニングやジョギングとだいぶ相性が良いようで、ソニーが発売したスマートイヤフォン「Smart B-Trainer」など、数々の意欲的な製品が登場し始めている。未来のランナーは、もしかするとだいぶいろいろなモノを身に着けて街を走ることになるのかもしれない。

 こうしたガジェットは、広く「人間の能力を拡張するもの」と解釈できるだろうが、トレーニング時や趣味での利用ならともかく、公式の大会などでどこまで使用を許されるかについては、今後必ず激しい議論が起こることだろう。

 例えば同じアイウェア(眼鏡)型でも、こんなものがあった。プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトがペアを組んで対戦する「電王戦タッグマッチ」(棋士とコンピュータが対戦するのではなく、棋士とコンピュータが力を合わせて戦う)で使われた、将棋ソフトの読み筋や形勢判断をリアルタイムで確認できるデバイスだ。タッグマッチでは、このソフトの読み筋を棋士側が信用したりしなかったり、あるいは最初からまったく確認しようともしない棋士がいたりと、さまざまな見どころがあって楽しめたのだが、一方で「プロがソフト指し(※)をするなんて……」といった声が一部から上がっていたことも事実だ。

(※)ソフトの手をカンニング的に利用して将棋を指すこと。多くのオンライン将棋サービスがルール上禁止しており、発覚すると厳しいペナルティがある

 ミズノのスカウターに話を戻すと、このデバイスには、ペースメーカーとして使用者を先導してくれるバーチャルなランナーを表示する機能、いわゆる「ゴーストランナー機能」があるという。コースマップや現在の走行距離を表示できる程度ならともかく、「ゴーストランナーの有無」でペース配分に差がつき、タイムを含めた結果が大きく変わってくるようであれば、大会などでどこまでをルール上“セーフ”と見なしてよいのかはさらに難しくなる。

 個人的には、こうしたガジェットで人間がどこまで速く、強く、賢くなれるのかを見てみたい気持ちもあるのだが、一方で早急なルール整備の重要性も容易に想像がつく。現時点でのウェアラブルデバイスは、まだまだ「普通の眼鏡ではない」ことが見た目で簡単に判別できるが、将来的に限りなく通常の眼鏡に近づいたとき、問題は必ず顕在化してくるだろう。たとえば入学試験時などに、空港での持ち物チェックのように身体検査をされるような未来がやってくるのは、そう遠くないことではないはずだ。

 我々が夢想した「未来のガジェット」は、決して便利なだけでは普及しない。どこまで既存のルールに沿った形で世の中に浸透していけるか、あるいは既存のルールを破壊して新しいルールを創出していけるかが、こうしたガジェットの将来、ひいては、(少々大げさなようだが)「人類のテクノロジーとの付き合い方」を決定づけていくことになるのだろう。

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