快適な眠りをもたらすウェアラブルデバイス「2breathe」 その機能の秘密とは(2/2 ページ)

» 2016年05月11日 06時00分 公開
[すずまりITmedia]
前のページへ 1|2       

2breatheの原点は高血圧の治療だった

 では、なぜこのような製品を開発するに至ったのでしょうか。呼吸に着目したきっかけは。そんな疑問を、2breatheを開発した、2breathe Technologyの創業者であり、生物物理学者でもあるベンジャミン・ガビッシュ氏と、共同設立者で最高経営責任者のエレズ・ガビッシュ氏に聞きました。

2breathe Technology 2breathe Technologyを創業者した生物物理学者のベンジャミン・ガビッシュ氏(左)と、共同設立者で最高経営責任者のエレズ・ガビッシュ氏(右)

 エレズ氏によると、2breatheは高血圧のための医療技術に基づいたものだといいます。呼吸が交感神経の活動をコントロールすることが分かったため臨床試験を行ったところ、呼吸によって微細血管が拡張されて、血圧が下がるという結果が得られたのだそうです。この技術はFDA(米国食品医薬品局)の承認をうけ、血圧を抑制する高血圧治療器「RESPeRATE」として実際に販売されています。

 ところが、利用者からのフィードバックに面白いものを見つけます。

2breathe Technology 血圧を下げる効果を狙った機器が、入眠に役立つことを知ったと話すエレズ・ガビッシュ氏

 「血圧も下がったけれども、赤ちゃんのようにすやすや眠りに就けるという感想をいただきました。血圧を下げるためには、起きた状態で使っていただかなければなりません。機械のマニュアルにも『ベッドでは使用しないでください』と書いてあるのですが、使った方から『眠りに落ちてしまった』というフィードバックがあったのです」(エレズ氏)

 眠るつもりはなかったのに眠ってしまったーーいわば副作用なのですが、この点に着目したわけです。エレズ氏は「古代からの知恵と新しい技術をあわせたら、不眠の治療に使えるのではないか」と考えたといいます。

 モバイルの技術的な進歩に加え、スマートフォンの小型化といった時代の背景にも後押しされ、2breatheでは眠りそのものを阻害しない使い心地と、ユーザーからのフィードバックや、通知といった機能も実現しました。

 「活動量計を使って睡眠を調べるというのは、睡眠に対する意識を高めるためには素晴らしい技術だと思います。しかし、単に睡眠をトラッキングするだけではなくて、睡眠に導入するほうがもっと役に立つと思います。なかなか眠れずに苦しんでいる方が多くいらっしゃいますので、入眠を促す技術として使えるというのがよい点だと思います」(エレズ氏)

 「なぜ眠れないか。それは眠りたいのに、昨日起こったこと、明日何が起こるだろうかということをどうしても考えてしまうから。人は十億くらいの考えが頭の中をかけめぐってしまうんです。それほどの考えが頭を駆け巡っていると、神経活動レベルも覚醒状態になってしまいます。これを下げるには、禅のように、過去も考えない、未来も考えない、つまり何も考えないこと。ただ、無にフォーカスするというのは非常に難しい。そこを簡単にできるようにしたのがテクノロジーです」(ベンジャミン氏)

その日の呼吸に合わせ、独自のガイド音が生成される

 2breatheの大きな特長は、スピーカーから流れるガイド音(トーン)が、あらかじめ用意された既成の音楽ではなく、ユーザーのそのときの呼吸に基づいて、その場で生成されているという点です。完全にオーダーメイドのガイド音に沿って呼吸するわけです。

 モニタリングされた呼吸をもとに、吐く息は2%長く、吸う息は1%長くなるように、リアルタイムにトーンが作られます。ベンジャミン氏によれば、生理学的に人は息を吸うときフルパワーになりますが、息を吐いているときに神経活動は低下するといいます。ゆっくり息を吐くことによって、神経活動を下げていくことができる、リラックス状態にできるわけです。

2Breathe Technology 再生される音に合わせるだけで理想的な呼吸に導かれるのがポイントだと話すベンジャミン・ガビッシュ氏

 「ただそれは個人差がありますので、それぞれの人に合わせた形で、インタラクティブに設定できるようなデバイスを開発しました。そこがこのデバイスの秘訣です。流れてくるガイド音に従うだけで理想的な呼吸に導かれますので、ユーザーは何も考えなくていい。何も決めなくていい。ただ音楽に従っていくだけでいいのです。音楽を聴きながらダンスをするのと同じ。音楽に合わせるというのは自然にできることですよね」(ベンジャミン氏)

 人は覚醒時に平均して1分間に12〜18回の呼吸をしているといいます。これがガイド音によって、1分間に6〜7回まで低下させることができます。しかし、まどろみ始めるとガイド音に従うことは難しくなり、速く浅い呼吸に戻ります。ここでいつ眠りに入ったのかが判断できるわけです。確実に入眠したことを確かめるために、2breatheはその後10分間作動を続け、10分後にデバイスはシャットダウンします。

 「Bluetoothも接続がシャットオフされますので、バッテリーも持ちがよくて、充電もしないで6カ月から1年間、毎日使うことができますよ」(エレズ氏)

しっかり眠れれば、睡眠をトラッキングしたいと思わない

 2breatheには、セッションレポートと睡眠レポートはありますが、眠りのサイクルや質までトラッキングすることはありません。質がどう変化したかを知りたいときは、睡眠をトラッキングできる活動量計やアプリの併用を勧めています。

 「みんなそもそもなんでモニタリングしたいのか? なかなか眠れないからです。なんでもモニターしたいというユーザーはいらっしゃいますけれども、一番の問題は“眠れない”ということ。眠れたか、翌朝目覚めはよかったのかということのほうが重要なわけです。ですので、考え方をシンプルにしました。眠れないという問題を解決すると、それほど睡眠をモニターしたいとは思わなくなります(笑) 」(エレズ氏)

 「日本ではもっと睡眠の問題について話すべきです。呼吸法に対する意識はもともと高いのですから、睡眠をちゃんととると、メンタルの機能や認知機能が高まるということが広く認識されれば、睡眠もよくなるし、生活の質もよくなるのではないかと思いますよ」(ベンジャミン氏)

 ゆっくり呼吸することで、体をリラックスさせ、同時に余計な考えからも解放させることで、眠りに導く2breathe。毎晩スムーズに眠れずに悩んでいるという方は、試す価値がありそうです。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」