コラム

「ハーレーもBMWも、電動車なら中免で乗れる」 日本の二輪免許制度のうれしい謎(1/3 ページ)

電動バイク時代の日本は、もしかして天国か。【更新】

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【更新】2019年12月に法改正。新たに「20kW超」の区分ができ、定格出力1kW~20kWまでの電動バイクは普通二輪免許、20kWを超える電動バイクは「大型二輪免許」が必要です。


 ハーレーダビッドソンが同社初の電動バイク「LiveWire」(関連記事)を発表したり、台湾のバイクメーカーであるキムコも“電動なのに爆音を奏でる(!?)”というスーパースポーツスタイルの電動バイク「SuperNEX」(関連記事)を開発したり。じわじわと電動バイクの波も近づいてきています。


ハーレー・ダビッドソン初の電動バイク「LiveWire」

“電動なのに6速MTで爆音を奏でる(!?)”というブッ飛んだ遊びの発想が込められた電動スポーツバイク「SuperNEX」

 もちろん、原付スタイルの街乗りモデルや業務用などの小型電動車は以前から既にありました。しかし趣味度がより高く、よりパワフルなスポーツモデルが登場し始めてきたとなれば気になってくるのが「やっぱり、こんなぶっ飛びマシンを駆るには大型二輪の免許が必要かな?」です。

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 ……それが、違うのです。2019年現在の日本の運転免許制度ではむしろ、電動ならモンスターマシンも身近な存在になるかもしれません。

原付免許で乗れる電動スクーター「notte」。価格は14万7000円から。一般的な原付スクーターと同等かむしろ安価(左) 反則レベルにかわいいデザインの電動バイク「モトチンプ」。こちらはお値段ちょっとお高め(右)

電動バイクは、出力1kW超で全て「軽二輪」として扱われる

 まず、エンジンを搭載するバイクの免許区分を整理しておきましょう。

 日本の二輪車免許は、50ccまでの「原動機付自転車免許」(原付免許=乗れるのは原付一種区分のスクーターなど)、原付二種(~125cc)まで乗れる「普通自動二輪免許(小型限定)」、400ccまで乗れる「普通自動二輪免許」(かつての“中免”です)、400ccを超えるどんなバイクにも乗れる「大型二輪免許」(AT限定は650ccまで/かつての“限定解除”です)があります。普通自動車免許を所持していれば50ccまでの原動機付自転車にも乗れます。大枠は「エンジンの排気量」で区分されています。

 では、エンジンがない、つまり排気量という概念のない電動バイクはどうなるのでしょう。実は日本の法律下(道路運送車両法)では電動の大型バイクが定義されていません(2019年現在)。搭載するモーターの定格出力が0.6kW以下ならば「原付一種(~50cc)」、0.6kW~1kWならば「原付二種(~125cc)」、1kWを超えたら「軽二輪(エンジン車では250ccまで)」として扱われます。軽二輪/250cc以上のバイクを運転できる普通自動二輪免許(旧世代のいわゆる中免)を持っていれば、全ての電動バイクに乗れるということになります。また、軽二輪扱いなので車検もありません。いわゆる「ニーハン車」と同じ感覚になるのです。

 例えばBMWの電動ビッグスクーター「C evolution」は、650ccのエンジンを搭載したビッグスクーター「C650」がベースです。C650は大型二輪免許(AT限定含む)が必要で、車検もありますが、C evolutionは軽二輪扱いなので普通二輪免許(中免)で乗れます。なんだか不思議なことが起こります。

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BMWの電動スクーター「C evoluton」(156万2000円から)は、650ccのビッグスクーター「C650」がベース。でも、100%電動車なので普通二輪免許で乗れる。出力は35kW(48馬力)

BMWのビッグスクーター「C650 Sport」(120万5800円~)。排気量647cc/44kW(60馬力)の直列2気筒エンジンを搭載する

海外は「出力」で区分/日本のライダーは恵まれているかも

 海外では電動バイクの免許はどのような扱いになっているのでしょう。

 例えばEU圏の二輪免許は、125cc以下かつ11kW以下のA1ライセンス、11kW超~35kW以下のA2ライセンス、それ以上のAライセンスという3段階に分かれています。日本の普通二輪免許と大型二輪免許に近いA2ライセンスとAライセンスは、元から排気量ではなく「出力」で区切られています。そのため電動バイクだからといって矛盾が生じることはないようです。

 普通二輪免許(中免)を持っているならば、電動バイクはよりどりみどり──。普通自動車免許で125ccまでのバイクに乗れたり、おまけで二輪免許も付いてきたりする他国の免許事情に対して「日本の免許制度はバイクに厳しすぎる。緩和せよ」という声がありますが、出力の大きな電動バイクにおいては事情が逆のようです。これ、ライダーだけでなく、バイク業界としても市場を盛り上げるチャンスなのかもしれません。

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