インタビュー

コスプレ界の知られざる“カメラ小僧たちの階級社会” エッセイマンガ『野良カメコのピラミッド』作者インタビュー(1)

「認知のないカメコはただのモブだ!」

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 コスプレイベントに現れるカメラ小僧、通称「カメコ」の喜怒哀楽を描いた実録エッセイマンガ『野良カメコのピラミッド』(著者:だよねさん)。美しい有名レイヤーに認知されるため、けなげな努力を重ねているカメコの実情を、オブラートに包むことなく描いた怪作です。

 自身も“野良カメコ”と自称するだよねさんに、作品の誕生秘話と見どころをインタビューしました。

漫画「野良カメコのピラミッド」とは?

 週末のコスプレイベントには必ず参加するだよねは、独身のアラフォーカメコ。有名レイヤーと交流することもできず、時には自分の前で撮影待機列が打ち切られ、囲み撮影ではライバルカメコにはじき出される不遇の底辺カメコです。

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 夢はコスプレイヤーと結婚すること。今日も一人機材を磨きながら「カメラがあれば……僕だって希望が持てるんだ。冴えない女子高の教師が教え子と結婚するようなあの……希望が!!」とメガネを輝かせています。

 本書では、作者自身の実体験を元にコスプレ界で光が当たらないカメコの世界にスポットを当てています。

著者プロフィール:だよね(Twitter:@dayonesoudayone

漫画家・イラストレーター。一般企業のサラリーマンとして働く傍ら、カメコとして10年以上活動し、Twitterを中心に作品を投稿。コスプレイヤーも、カメコも共感する「コスプレあるある」を描き続けています。

第3話

第4話

その他のエピソードの試し読み、購入先などはKADOKAWAのWebサイトにて

コミケで同人誌を買うだけのオタクから、気が付いたらカメコに

―― コスプレ界のみならずカメコ界でも大変有名なだよねさん。カメコ(カメラ小僧)のキャリアはどれくらいなんですか?

 ……恥ずかしいです(笑)。カメコ歴は10年ぐらいですね。でもその前から「コミックマーケット」(以下、コミケ)に通っていて、オタク歴自体は結構長いんですよ。

 カメコになるまでは同人誌をただ買って帰るだけだったんです。今の自分ではありえませんがコスプレ広場は素通り(笑)。コスプレ広場があるのは知っていたんですが、当時はほとんど興味がなくて……。

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―― 貪欲にコスプレイヤーを追う今のだよねさんから考えると、意外過ぎますね(笑)

 そうなんです(笑)。早朝、会場であるビッグサイトに到着して薄い本を買いあさって、13時超えてお台場にいたことはなかったと思います。

 当時から写真は好きだったんですけど、コスプレイヤーを撮ることはなくて、友達と一緒と風景写真とか“平和”なやつばっかりで。

―― どんなきっかけでコスプレ界に没頭するようになったんですか?

 実はきっかけを覚えていないんです……。ただ中学の頃からよく漫画は描いていまして、描画する際の参考資料として写真を撮ることは多くありました。当時はスマホもなかった時代なので、コンパクトデジカメを買って。

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 その後、一眼レフに買い換えた頃からコスプレを撮ったデータがPCに残っています。今回の取材のために古いデータを見直していたら、当時流行っていた『ラブプラス』『Fate』『一騎当千』、それと『劇場版 エヴァンゲリオン』あたりの写真が出てきて懐かしかったなぁ。

―― 自分の記憶より、写真の記録のほうが鮮明ってわけですね(笑)

 「東京ゲームショウ」で死ぬほどコンパニオンを撮影したデータも見つかって、「ああ、この頃一気にカメコ熱が上がってる」って思いましたよ(笑)。

 その後、屋外ポートレート撮影会に行くようになって、女性を撮る楽しさを知ったんです。しかし当時はむやみやたらに連写することが多かったので、だんだんPCのデータ容量がなくなるほど写真データが増えていって……。

 そんな理由でいつからか連写するのは辞めて、的確な写真を撮るという撮影の道に進んでいきました。

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―― PCの空き容量不足でカメコとして一皮むけたというわけですか……

 はい。コミケに行っても囲み撮影(編集部注:1人のコスプレイヤーを大勢のカメコで囲む撮影スタイル)で枚数を抑えて、粘着するのも控えて。現場で学んだことも多いですね。

「人間味あふれるカメコの世界にどんどん魅かれていったんです」

 会場に通うと、コスプレイヤーさん以外にも、いろいろなキャラクターを持ったカメコさんたちがいて、みな装備や撮影スタイルが違うことに気が付きます。性格がまともな人もいれば、ぶっ飛んでいる人も(笑)。中にはコスプレイヤーと付き合うことを目標に数百万円の機材で勝負する勇者も。

 そんな人間味あふれるカメコの世界にどんどん魅かれていったんです。

―― 本書はそんなカメコさんたちにスポットを当てた(おそらく)本邦初の怪作です。書き始めたきっかけは?

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 5、6年くらい前、自分のカメコ活動に関する2コマ漫画を描いてTwitterにアップしたんです。カメコあるあるネタですね。

 例えば街中で偶然私服のコスプレイヤーさんに会ってめっちゃうれしくなってたのに華麗にスルーされたとか、カメコ界で30代はまだまだ若手、40代で一人前、50代、60代は全然現役という流れがあるんですが、結局はおっさんだらけということだったり。

―― 悲喜こもごもの世界なんですね……

 その反応がよかったので週1、2回ペースで上げていたら時の超有名レイヤー・御伽ねこむさんが「面白い!」とリツイートしてくれて、一気にフォロワーが増えました。カメコにとってレイヤーさんの反応は最高のご褒美なので、これはうれしかった。

 そしてカメコにまつわるネタはまだまだあったので、どんどんTwitterに投下していたら、「コミックとして出しませんか?」とKADOKAWAさんからご依頼がありまして。

 ただ私は本業は会社員なので、仕事帰りや昼休みなど空き時間に漫画を描き進め、約2年かけて1冊のコミックになったという流れなんです。

(続く)

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