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オンラインクレーンゲーム「トレバ」、従業員が証言 「景品獲得されぬよう裏操作した」「1000回やっても獲れない」(1/4 ページ)

【動画】複数の関係者が「トレバ」の実情を告発しました。

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 「景品が獲得されないよう、日常的に裏操作していました」「1000回以上プレイされても1回も景品が獲れない台はいまだにあります」「アームパワーを勝手に上げた台を従業員自身がプレイして景品を不正獲得していました」――。サイバーステップが運営するオンラインクレーンゲーム「トレバ」について、現役従業員など複数の関係者がねとらぼ編集部に内情を告発。「詐欺だと言われても仕方がない」「原因はパワハラ」など、運営の実態を語りました。

「トレバ」の従業員がプレイ中の台のアームを触る瞬間(Courtesy of Toreba Prize Watcher Plus/Toreba Prize Watcher Plus

「トレバ」に持ち上がった疑惑

 ポイントを購入することにより、実在するクレーンゲーム機をオンライン上で遠隔操作できるオンラインクレーンゲーム。筐体数約1800台を誇る「トレバ」は業界最大手で、海外でも人気のサービスとなっています。

 ねとらぼ編集部では2020年11月23日に「オンラインクレーンゲーム『トレバ』、景品獲得されそうになると“スタッフが裏操作”していたと発覚 被害者と運営会社を取材」との記事を掲載。「景品の大幅な配送遅延」「ずさんな在庫管理」「テストプレイが不十分な台の解放」「不具合発生時のポイント返還拒否」「GET判定のあいまいさ」「景品が獲られぬように連続プレイ中の台をスタッフが遠隔操作で設定を変更している」など複数の疑惑について、被害プレイヤーとサイバーステップ、双方の主張を取り上げました。

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 また記事内にて広く情報提供を呼び掛けたところ、「プレイ中に従業員が乱入してアームを触られた」「194回プレイしたが景品が落ちず、問合わせしたところ、一方的に34万9200TPを返還された」など、36件もの情報提供が寄せられました。

トレバプレイヤーからねとらぼ編集部に寄せられた情報
アームが降りた状態のまま稼働している筐体(Courtesy of Toreba Prize Watcher Plus/Toreba Prize Watcher Plus
ユーザーがプレイ中なのにアームを手で持ち上げる従業員(Courtesy of Toreba Prize Watcher Plus/Toreba Prize Watcher Plus

 またこうした情報提供に加え、今回の取材では現役従業員をはじめ複数の関係者とコンタクトを取ることができました。

「景品が獲得されないよう、日常的に裏操作していました」――元営業所勤務Aさんの証言

 まずお話を伺ったのは、元従業員のAさん。サイバーステップへ入社後、「営業所」と呼ばれる倉庫で勤務していたと言います。

――Aさんが担当されていたお仕事について教えてください。

Aさん「トレバ」は三郷、三郷中央、草加、草加東、谷和原、柏と6つの拠点に約1800台の筐体を設置しているのですが、私はその中の1つで筐体の設定などを行っていました。

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「トレバ」のマスコットキャラクター「トレタ」と「タイガ」

――筐体の設定というのはどんな作業なのでしょうか。

Aさん景品をどうやって獲得してもらうのかを考えてアームのパワーや下降制限を設定したり、景品を置く位置を調整したりしていました。都市伝説的に広まっている「たこ焼きキャッチャーの当たり穴から風が出ている」とか「確率機能を使っている(※)」とかいうのはなかったです。

トレバで使っている筐体の設定画面(情報提供者の身元を保護するため画像の一部にモザイク処理を施しています)

 入社当初は、自分が作った筐体の設定がオンラインで配信されて、お客さまも楽しんでプレイしてくださってという状況が本当に楽しくて、やりがいを感じていました。しかし次第に「原価率を下げろ」「とにかく獲れにくい台を作れ」と厳しい指示を受けるようになっていきました。

(※)確率機能……何回目にアームパワーが強くなるといった設定のこと。「トレバ」は自社開発のオリジナル台を採用しており、確率機能自体は搭載されているものの、使用が禁じられているという。

――「トレバ」の「原価率」について詳しく教えてください。

Aさん原価率は「景品の仕入れ価格÷売上×100」で計算され、「トレバ」の場合は大体20%前後が目標とされていました。しかし、この原価率というのは、あくまでも“有料プレイ”を行ったお客さまが対象になるので、無料プレイ分(※)も合わせて計上すると獲得確率は数パーセント、ひどい台だと1%を切っているというものもザラにありました。

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 とにかく「獲れない台」を作ることを強要される中、仕事としてなんとかこなしていましたが、今考えると詐欺だと言われても仕方がないような設定の台も多かったと思います。

(※)トレバではログインボーナス的に無料プレイチケットを配布している。基本は1日1枚でキャンペーン時は5枚など、配布枚数は日によって異なる。

――「とにかく『獲れない台』を作ることを強要される」とのことですが、具体的にはどういった指示が行われていたのですか。

Aさん「トレバ」は、サイバーステップの売上の大部分を占めているので、事業部の総責任者である幹部から「原価率を下げること」と「売上を上げること」について厳しい指示が毎日出されています。

 この幹部というのが本当に威圧的で……とにかくその幹部がいるだけで営業所がピリピリしますし、「トレバ」がここまでおかしくなったのは、正直幹部のパワハラが原因だと考えている従業員は多いと思います。

――「ここまでおかしくなった」というのは。

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Aさん「獲れそうに見えて実は獲れないという台」が激増していることです。現場のスタッフは「原価率」と「売上」について厳しく指示を受けているため、景品補充を行う度に“巡回スタッフ”がアームパワーを下げたり、下降制限を付けたり、アームの離し位置を変更したりと変更を加えまくるので、時間経過とともにどんどん私たち“筐体設定担当”が作った設定とは全く異なる状態、つまり、獲れない台が増えていくんです。

設定を変更するたびに残されるというログ。調整が繰り返されると、設定担当者の意図しない動きの台が増えていくという(編集部で再現した画像/本記事では情報提供者の身元を保護するため一部再現画像を使用しています)

――サイバーステップは先の取材で、「手で簡易的に景品の動作を想定・確認した後、実際にクレーンを操作し、景品を獲得するまでを一連の流れとし、テストを行っております」と回答していましたが、設定変更のたびにアームを操作して獲得確認をしているのでしょうか。

Aさん「数十回に1回しか獲得できない設定」にしているのに、1台につき数十回もテストプレイをしていたら仕事になりません。ですから、そんなことをやっている従業員はほとんどいないでしょう。

 そもそも、筐体設定担当の従業員ですら獲得まで確認している場合はほとんどないと思います。というのも、アルバイトが長時間テストプレイをしていた場合、社員は「時間の無駄だからそれ以上やらなくていい。ある程度の動きが確認できればいいよ」と指示を出していましたから。

 また、従業員も熟練度が増してくると、「この景品だったらアームパワーはこれぐらいで、下降制限はこれぐらい」といった形で、景品を見た瞬間に頭にパラメーターの数字が浮かぶんです。ですから、それを参考に設定し、数回アームを使ったチェックで景品が動くかを確認して終了です。ねとらぼの記事が出てからは、「テストプレイの徹底」といった指示が出ていますが、先ほど話したような理由から、実際にはやっていない従業員がほとんどだと思います。

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――では、実際には「獲得できるかどうか分からない状態」で台開放を行い、かつ、時間経過によって筐体設定時よりも設定がどんどん変化していくのに、ユーザーには「景品が獲得できる」と言い切っていたということですか。

Aさんまさにその通りです。獲得できることを確認をしていないから、最終局面でアームが届かないといったことが頻発しているのです。

――ユーザーのプレイ中にアームパワーを調整するなど裏で操作したことはありますか。

Aさん私自身、アームパワーを裏で操作する不正を行っていました。私がいた営業所はとにかく「原価率を下げなくてはならない」という考え方でしたし、自分の担当台で原価率が上がると大変なことになるため、お客さまに景品を獲られたくない一心でアルバイトも社員も日常的にこうした不正を行っていました。

――「プレイ中にアームパワーを変更してはならない」といったマニュアルなどは存在しないのでしょうか。

Aさん私の在職中は本当に何もかもがずさんでしたから、マニュアルはおそらく存在していないと思います。営業所によって判断が違う、従業員によってGET判定が違うといったこともよく起きていました。

 例えば、ねとらぼの記事で紹介されていた「景品は落下しているけれどもタグだけが橋渡しに挟まった景品が獲得にならなかった」という事例についても、私の認識では「獲得」です。獲得判定者がレギュレーションを把握していなかったのかもしれません。

――「一部従業員が筐体のアームパワーなどを勝手に上げてから、勤務中に自分のアカウントで『トレバ』をプレイし、景品を不正に取得していた」という情報提供も寄せられているのですが、そういう話は聞いたことがありますか。

Aさんそれは事実です。営業所によっては私物の持ち込みが容易なところもあったので起きた事件だと聞いています。これは結局会社にもバレたようで、当該の従業員は厳しい処分を受けましたが、個人的にはバレたのは氷山の一角だろうと思っています。

 この他にも、営業所に筐体ディスプレイ用で届いた景品が盗まれるという事件もたびたび起きていました。ディスプレイ景品の中にはお客さまに発送する分の在庫も含まれているので、発生するたびに当然大問題になっていましたが。

――従業員が景品を不正入手すると、原価率がその分上がってしまうわけですから、ユーザーはそのあおりを受けていた可能性もあるということでしょうか。Aさんはどうしてサイバーステップを退社されたのですか。

Aさん「獲れない台」を作ることを強要されることとパワハラに限界を感じたからです。

 毎日毎日「原価率を下げましょう」「獲られにくい台を作りましょう」と言われる中、自分がいくら良心的な設定にしたとしても、結局は時間経過とともに調整担当者が“獲れない台”にしてしまいます。そんな状態だともちろんお客さまもプレイしてくださらないので、不人気台になって景品は大量に売れ残ります。だから別の人気の景品を入れて新たに設定をし直すのですが、調整が入るとまた獲れなくなって不人気台になって――とそのループなんですよね。

 ただでさえシリコンスプレーやアルコールシートで滑り止めを効かせたり、重り(アクリルロック)なども入れて獲れにくくしたりしているのに、これ以上、獲れない設定を作るのはもう無理だろうと思いました。

 成績を上げても従業員には何の見返りもなく、ただ会社が売上をアップさせるだけ。それでいて、もしも従業員が目標を達成できないと厳しく叱責されるという環境で、サイバーステップに貢献する意味を感じられなくなったというのが退職の理由です。

――最後に一言あればお願いします。

Aさんねとらぼで記事が出た内容については、「『トレバ』で働いている人ならあの記事を見て驚く人はいないだろうな」と思いました。

 従業員サイドとしては、もう少しまともに景品が獲れるような、詐欺的ではないような設定に改めることだったり、パワハラ体制を会社が正しく認識することだったりが重要なのではないかと感じています。


「1000回以上プレイされても1回も景品が獲れない台はいまだにあります」 現役従業員Bさんの証言

 続いてお話を伺ったのは、現役従業員のBさん。Aさんが勤務していた営業所とは別の営業所で現在も勤務しています。

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