【番外編】ITちゃんマジうさぎ飛び:ねとらぼ(2/2 ページ)
俺とニッチ
シ そんなとこですかね。コミケ前で忙しいんですよ。
担 いろいろあったし、なんか気の利いた話でもしようかと思ったけど、まあめんどくさいし年末だし、これが最後かもしれないしで、例によって同人誌とかのバカ話でもしましょうかね。
シ いやー今年ねー、なんかねー、サークルも一般も参加者がすごい増えてるんですよ、自ジャンル。
担 へー。なんで?
シ 知らない。しかも若い人たちみんなうまいの。もう俺ダメですすいませんみたいな。
担 よくはてなブックマークとかで絵の描き方スレみたいなの上がってるじゃないですか。ああいうのって役に立つものなんですか。
シ 人それぞれとしか言えないけど、俺は全然。ただねえ、俺さ、ほんと絵が描けなくてさー。小中高と一貫して描けなかったんだけど、この趣味始めてから分かったのは、絵には「描き方」があるってことだったなあ。
担 確かに学校の「美術」って「絵の描き方」を教えてくれなかったような。「自分の好きなように表現しよう」みたいな。お手本偏重から自由な表現へっていう、戦後教育の流れみたいなもんなんですかね。いや全く知りませんけど。
シ 美術の先生方は絵が好きでほっといても絵が描けたような人がなるものなんだろうから、「絵が描けない」ということがどういうことかよく分かってなかったフシはあったかなあと。個人的には「絵には描き方がある」というのは大きな発見だった。だって、それに従って鍛錬を積めば絵の才能がなくても絵のようなものを描ける可能性がある、ということなんだから。これはすごい。天賦の才の領分だと思っていたものが、方法論と慣熟の問題になるんだから。
担 「才能ない」ってあきらめちゃう人、多いもんね。
シ もちろん才能は不要って話じゃ全くないんですけど、ある程度なら自分に合った「方法」とトレーニングでどうにかなるってことなわけで、ほんと先生にそういうこと教えてほしかったです(涙。いや、俺が興味なくて先生の言葉から学べなかっただけの可能性も大いにあるんだけど。
担 どんなトレーニングしたんですか。
シ いやー、いろいろ言っておきながら教本に載ってるようなことは実は全然したことがないんですが、1つすごく印象に残ってるのは、「所さんの目がテン!」で、絵が苦手な子ども向けに、絵の先生が「描きたいものを逆さまに見て描きなさい」って指導したこと。絵が描けない子に「さあそこの木を描いて」っていうと、目で見た「木」じゃなくて、頭の中にある「木の記号」を描いちゃうんですよ。逆さまに見ることで「もの自体」を見ることができるようになる。
担 へー。
シ まあ漫画は記号を描けば十分という説もあるけど。それはともかく「ものを見たまま描く」ができれば、人間だってポーズ集とか見ながらそのまま写すように描けるようになるし、なるほどなあと。そういう「目」、というか脳を作るまでが大変でした。
担 ほかには?
シ 時間もなかったんで、練習を重ねるっていうより、イラストなり漫画なり、1本を必ず完成させることで積み上げていった感じ。例えば漫画であれば、自分の力量じゃあ描けそうにないけど描かなきゃ進めないポーズとか、苦手なんであんまり描かない表情とか、完成させるためには描かなきゃならんですからねえ。
担 そりゃそうですね。
シ ひたすらラフを描き続けるっていう手もあると思うんだけど、個人的にラフだと怠けちゃってさー。ラフっていいんですよ。ラフである限り未完成だから、自分の実力を可能性のまま、確定させないままでほうっておけるんですよ。そして完成させたものをみて実力不足に打ちのめされることもない。でも完成品だと自分の実力がどの程度なのか分かる。それに、完成させることの中には、当然ながら作品作りの全てが含まれているからねえ。
担 そもそも趣味なんだから、ほっとくと自分がやりやすいことしかやらなくなるってのはあるよね。キャラのバストアップしか描かないとか。
シ そうそう。楽しけりゃいいと思うんだけど、自分の理想がどこにあるのかってところをはっきりさせて、その上で1本1本完成させていくのが俺にとっては最大の練習だったです。しかも締め切り日を設定した上で。要するに、深く考えないでとにかく本作ってイベント参加した。
担 そんなこんなでよく続いてますねえと。何年やってるんだっけ。
シ 最近は年とっても続けてる人が多いです。そのうちコミケにジャンル「創作(老年)」とかできますよって話。
担 結構めんどくさいことも多いと思うんですけど、どうやったら長続きするもんですかね。
シ 人それぞれとしか思えないけど、1つ言えるのは、何らかの形で「売れる」と続けやすいと思う。うちも、かなり最初の段階で「最低限売れるとうれしい冊数」を設定して、そのために何が必要かを考えたよ。そこまで持っていけば後は楽しく続いていくんじゃないかって。
担 何が必要ですかね。
シ さあ。同人はとにかく「人によって違う」としか言えないんだよね。まあ、うちなんかさ、始めたのがかなり年取ってからってのがあって。あ、何歳からであっても始めるのに遅いということはないです。断言します。だってある程度までは方法と慣熟の問題だから、やる気と時間を投入すればある程度は描けるようになる、はず、です。
担 でも年取ると使える時間が厳しくなるよねー。
シ そうなんだよね。それでねー、ずっとずっと心がけてたのは「恥を捨てる」こと。年取ってから何かを始める場合、これが一番難しいかもしれないと思ったよ。
担 かなり恥ずかしいよね、実際。
シ 最初のころは相方と絵入りお手紙で文通してたもん。絵をスキャンして、メールで(赤面。「恥を捨てるぜ!」とか唱えながら描いてた。「これをやめた場合の未来」と「続けた場合の未来」を交互に考えたりとかしながら。で、ある程度恥を捨てると楽しくなってくるもんですよ、ほんとに。
担 知人が見てないところでやるってのはアリかもね。
シ 恥を捨てて、そして作ったものをどんどん外に出そうと。作品は他人が触れることで初めて完成する。描き手の自分の中に価値そのものがあるわけではないのです。自分がクソだと思っても他人にとってはクソ以外の何ものかであったというようなことはたくさん経験しました。
担 「ITちゃん」とかね。ほんとね。
シ そうそう。続けるためには「売れる」といいねっていうのはそういう意味でもあってさ。もちろん「売れる」ってことに対していろんな考え方があっていい。1万冊売るシャッター前サークルに憧れたっていいし、自分を待ってくれている世界で5人のために何かを作り続けるサークルだっていい。そういうことが両方、同じ価値でありえるのって、すごいことだと思うのね。広い意味で、インターネットには感謝してます。
担 まさしくニッチだね!
シ ニッチかわいいよニッチ!
担 あとは?
シ 1人じゃ無理だったなーと心の底から思ってます。
担 相棒と書いてディンゴ!
シ ディンゴのニッチかわいいよニッチ!
担 大切な心を届けたい!
シ 俺の同人誌買って!(心の叫び
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