インタビュー
» 2011年06月10日 08時00分 公開

Aileはなぜプレイ動画に「激怒」したのか? 「徹底交戦」ににじむゲームメーカーの怒り (1/3)

自社タイトルのプレイ動画が「ニコニコ動画」にアップロードされていたとして、プレイ動画への「徹底交戦」を表明していた、Aile(エール)代表・みやび氏。果たしてプレイ動画は「悪」なのか? 渦中のみやび氏に直接お話をうかがった。

[池谷勇人,ITmedia]

 自分でプレイしたゲームの映像を、キャプチャして動画サイトなどに投稿する「プレイ動画」。ニコニコ動画やYouTubeでも人気のカテゴリだが、本来ゲームの動画をインターネットなどに投稿するのは著作権法違反。現状では「黙認」しているメーカーも多い一方で、以前から一部のメーカーやクリエイターからは、しばしばこれを問題視する声もあがっていた。

 そんなプレイ動画に先日、真正面から異を唱えたのが、美少女ゲームソフトメーカー「Aile」代表の、みやび氏(@miyabi_aile)こと渡辺雅宣氏だ。こちらの記事でもお伝したとおり、みやび氏は自社タイトルの動画がニコニコ動画にアップロードされたことに対し、Twitterで「正規購入ユーザーのゲームを楽しむ権利を貶める、愚弄する行為には徹底交戦します。」、「私の内部にあるROE(交戦規定)ではすでに交戦が認められている状況になります。」などとツイート。ユーザー、メーカーの双方に大きな波紋を投げかけた。

正規購入ユーザーのゲームを楽しむ権利を貶める、愚弄する行為には徹底交戦します。不退転の決意というものを思い知って頂きますよ。いまさら削除しても無駄です。悪しからず!less than a minute ago via Twitter for iPhone Favorite Retweet Reply


 果たして、みやび氏は何を考え「徹底交戦」に踏み切ったのだろうか? 一連のツイートの意図や、ニコニコ動画が抱える問題点まで、「プレイ動画」をとりまく周辺の事情についてお話をうかがった。メーカー側がプレイ動画について公式の場でインタビューに答えるというのはおそらく初であり、今後の「プレイ動画」文化を考えていくうえでも非常に興味深い内容になったのではと思う。

コメントの9割は「交戦に賛成」

―― Twitterでの「徹底交戦」表明には、かなりの反響があったみたいですね。

みやび氏 いろいろなところで取り上げられましたからね。Twitterの発言が痛いとかも言われましたが、過去ミリオタとしてツイートしていた部分を知っていれば、軍事専門用語って分かるのですが、一部を都合よく抽出しているので、そこだけ見れば確かに痛いヤツでしょうね。例えば「交戦」を指して「抗戦」と間違えていると言う方がいますが、今回の場合、私は「抗う立場」ではないので「交戦」と表記したのです。その後、メールやTwitterでも多くのコメントをいただきましたけれど、9:1で賛成もしくは応援意見の方が多かったです。

―― 反対意見は1割だけ?

みやび氏 反対というより、ネガティブというか、攻撃的な文章ですね。はっきり言ってしまうと、そういう声ってどれも非論理的なものばかりなんですよ。一方的に「おまえはニコニコを潰す気か」とか、「俺たちにも表現の自由がある」などと書かれても、それは論理として成り立ってない。そのようなコメントには、申し訳ないですが返信はしていません。

―― なるほどと思うようなものはなかったと。

みやび氏 なかったですね。例えば「広告になってるんだからいいじゃないか」みたいなコメントもありましたけれど、だったらまず「広告になっていることを証明して見せてください」とその根拠の提出を求めました。自分では冷静な文章を送ってるつもりでも、結局論理的に破綻してるから、僕が理詰めで返すと、みんな返信がない。対応するべきものと判断して、そちらに返信メールをお送りしても、それに対してコメントが帰ってきたのは、ただの1度もなかったですね。

「なんとかしてほしい」というメールが来た

―― 今回、一連のツイートの中で、動画をアップロードする行為について、「割れ(ソフトウェアなどの違法ダウンロード)よりも厄介な行為」だと言われていますよね。

みやび氏 「割れ」ってある程度PCの知識がないとできないじゃないですか。マジコンなんかにしたって、友達から教えてもらったという人は多いと思うのですけれど、1人でやるとなるとそれなりに敷居が高い。その点ニコニコ動画って、ユーザーが小中学生とかでも、メールアドレスとパスワードさえ登録すれば入れちゃうじゃないですか。

―― 手軽さ、敷居の低さが問題であると。

みやび氏 あとはモラルの問題ですよね。若年層が、例えば「タダで見れて当たり前」だと思ったまま成長してしまったら、著作権という概念自体が壊れてしまいます。

―― 気になったのは、多くのゲームメーカーが「黙認」、もしくは「動画の削除」で済ませている中、あえて「徹底交戦」に踏み切ったのはなぜですか。

みやび氏 ウチとしても、デモや体験版の動画が投稿されていたのは知っていたんです。ただその時は、あえて騒ぎを起こす必要もない、つまりは「黙認」でいいだろうという判断でした。

―― 体験版の動画をアップするのだって、厳密に言えば著作権法違反ですからね。

みやび氏 厳密も何も、デモや視聴用の曲、それにCG1枚であっても、権利者の許諾無くアップすれば著作権法違反です。そして製品版となると問題はそこに留まりません。体験版なら誰でもタダで遊べますし、ミラーサイトの皆様にご協力をいただいてダウンロード・プレイが可能となっています。でも製品版を遊んでいるユーザー様は、ちゃんとお金を払って買ってくれた人たちなんです。例えばあなたが、1万円出した新作を遊んでいる横で、ニコニコ動画で「タダで見ている」人がいたら、どう思いますか?

―― 「買えよオマエら!」って言うと思います。

みやび氏 発売後、私のところにそういうメールが実際に来たんです。「なんとかしてください。正規に購入しているのにこのような行為は許せません」と。

―― 正規購入者からしたら、そういう人たちは「敵」ですからね。ネットでもよく「割れユーザー」が正規購入者のことを「購入厨」って呼んだりしてますが……。

みやび氏 だからこそ、正規に買ってくれた人の権利を守るのも、権利保持者の義務なんじゃないかと考えました。

―― つまり、決め手になったのは「著作権侵害」よりも、正規ユーザーの権利が侵害されたかどうか?

みやび氏 そうです。だからここで、「著作権」ってどういうものか調べて欲しいと。

正義の使者ではなく、あくまで「忠告」

―― 問題提起のためでもあったと。

みやび氏 たぶん、定期的に僕みたいな人間が現れないと、いつまでたっても歯止めが効かないと思うんです。「なにも裁判にしなくても、消せばいいだけの話じゃん」って言う人が必ず出てくるし、現在もそのようなメールが来ることもあります。それで済むと思っている時点でもう危ないんですよ。見せしめとは言いませんが、「こういう風になっちゃうんだよ」っていう実例がないと、彼らは「怖い」とさえ思わないでしょう。

―― 今までの対応が比較的穏便でしたからね。

みやび氏 今回は製品版というのが決め手でしたけど、体験版やデモムービーを上げている人も、ホントは危ないんですよ。権利者側から言えば、もうリーチしているところに当たり牌が出されて、あとはロンするかしないかだけのことになります。僕は正義の使者として言ってるわけはなくて、「そういう危険性をはらんでるんだよ」と伝えたい。これは「警告」ではなくて「忠告」なんですよ。投稿する際に注意事項が表示されるはずですが、きちんと読んでいるか振り返ってもらいたいんです。

―― 先ほども挙がってましたが、「宣伝になるからいいじゃないか」という意見についてはどうですか?

みやび氏 そもそもAileとして動画共有サイトへのアップ、宣伝活動をお願いしたこと自体ありません。「宣伝してやってるのに、何様のつもりだ」とか「新規メーカーのくせに大手のつもりか」くらいのことを言ってくる人がいますけど。

―― 実際のところ、宣伝効果ってあると思いますか?

みやび氏 僕はまったくないと思っています。ただ、他のメーカーさんがどうかと言われると、そこは答えようがない。あくまでウチとしての意見です。

―― 逆に被害の方が大きいと。

みやび氏 RPGやノベルゲームのように、一本道のゲームは特にそうでしょうね。ただ、宣伝効果のあるなしにしても「思います」というだけで、僕の方にも根拠はないんですよ。数字として出てこない部分なので。それこそアンケートで「ニコニコを見て買いました」って書いてくる人がいっぱい来るなら分かりますけど、今のところ1人だけですよ。

―― 1人いた!(笑)

みやび氏 はい、いました。今回の件が取り上げられて「それで知って買いました」という人が1人。アンケートにも応えてくれました。「身の程知らずの新規メーカーの糞ゲーと言われてましたが、結構楽しめました」とのことです。

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