そしてゲームクリエイター・飯田和敏は「カネ乙!」と言った――「アナグラのうた」を作った男たち:アナグラ座談会(3/3 ページ)
―― 確かに、悪用されたら怖い。
飯田 そうしたら、「いや、そうじゃないんです」と。そういう一面は確かにあるかもしれない、でも私が実現しようとしている社会では、ビッグ・ブラザーが等身大なんです。巨大な何かに監視されているんじゃなくて、同じ大きさのもの同士が、相互に対峙しあっている社会。だから気に入らなかったらいつでも抜けられるんです――っていうことをおっしゃって。それを聞いたときに、ああ、こんな感じの悪いゲームクリエイターに対して、こんなに丁寧に信念を説明してくれる柴崎先生のことは、ぼくはトラストできるなって思った。
―― 信頼が生まれたと。
飯田 うん。そのときに分かったんですよ。空間情報科学を進めていくにあたって大事なのは、相手をトラストすることだって。
「これはキターッ! って思った。我々新次元開いちゃったぞって思った」
(そろそろ締めようと思っていたところに、犬飼さんが禿さんを連れてやってくる)
犬飼 禿さん連れてきたよ。
飯田 ああ、いいところで。今回アナグラの設計を担当していただいた、禿さん。
―― はじめまして、よろしくおねがいします。
禿 よろしくおねがいします。
犬飼 アナグラのカベをデコボコにしたりとか、ここにこれを置こうとか、そういうところを決めてくださったのが禿さん。
飯田 禿さんに来てもらったとき、ぼくらは美しいものしかトラストできないから、美しいものを作ってください、ってお願いしたんです。
―― 飯田さんたちと仕事をしてみて、刺激を受けたことはありましたか。
禿 それはもう。あの空間って、カベや装置の形がまずあって、さらにそこに映像が投影されてますよね。作る側としては、映像と形が同時進行でできあがっていくのが刺激的でした。
飯田 あとオシャレ戦争が勃発してましたよね。
―― なんですかそれ、聞きたい(笑)。
飯田 呼んでくるよ、オシャレ番長を。
(納口さんを呼びにいっちゃう飯田さん)
禿 簡潔に言うと、ぼくはこの展示って、あまりオシャレじゃない方がいいと思ってたんですよ。せっかくゲームの人と仕事してるんだから、スカしたコンセプチュアルアートみたいなものじゃなく、もっとゲームっぽい感じを入れた方がいいと思ってた。でも納口さんから見たら、それでもまだ超オシャレだったらしいんです。
(ここで飯田さん、納口さんを連れて戻ってくる)
納口 超シャレオツですよ。オシャレとかじゃない!
―― オシャレ番長って納口さんだったんですか。
犬飼 禿さんはあれをオシャレだとは思ってないんですよ。
禿 思ってないですよ。こっけいな、ヘンテコなものだと思ってる。
飯田 納口さんはあそこで、何を描こうとしたの?
納口 あそこはね、1000年後のお台場なんですよ。ぼくの頭の中では、1000年後のお台場には人間は一人も残っていなくて。アナグラの映像には鳥とか魚とか出てきますけど、あれはみんなお台場にいる生き物なんです。
飯田 それで、アウトプットとして納口さんの設定の中で出てきたものと、禿さんの設計の中で出てきたものが、微妙にやっぱりズレがあるわけですよ。禿さんの造作について納口さんは、ちょっとこれはオシャレすぎないかって。1000年間放置されてるラボがこんなにオシャレなはずない、って文句を言ってきたんですよ。さすが中央線(沿線住まい)だよね。
―― (笑)
納口 ぼくからすると、禿さんはもともとオシャレだから。例えばオシャレな人が、あえてナントカ釣り具店の帽子とかかぶっちゃうオシャレ感ってあるじゃないですか。あれもまたオシャレなんですよ。
飯田 根本的に、納口さん以外はみんなオシャレなんですよ。
禿 それで戦争は戦争のまま終わったんですけど、結局はなんか、コントラストで両方のいいところが際だって見えるような形になりましたよね。
―― 最終的にはどっちも折れなかったんですか。
飯田 コラボしてましたよね。例えばナガメっていう装置(※8)は、外見的には、カベからひさしが出てるだけなんですよ。でも、そこに鳥の巣がプロジェクションで投影されてて。
犬飼 ひさしがこうあったら、きっとそこに鳥が巣を作るだろうって発想だよね。
飯田 ひさしの影と、わざわざ描いてある影がクロスして、どれが影で、どれが映像なのかわかんなくてってて。これはキターッ! って思った。われわれ新次元開いちゃったぞって思った。
禿 ファンデーションですよ。建築に対するファンデーション。
飯田 影を描くってのがものすごく面白かった。本来釘を打つべきところに打たないで、かわりにプロジェクターで影を投影して立体感を出してる。あれ、つまりオシャレ?
納口 え、ぼくがってことですか?(笑)
飯田 そうだよ、それをやったんだよ。
納口 いやいやいや(笑)。
犬飼 アナグラ内の映像って、菱形の「ビットちゃん」っていうものが集まってできてるんですけど、あれをあのカタチにしたのは禿さんですよ。禿さんがデコボコのスクリーンの方が面白いんじゃないかって言い出して、それを見たぼくらが、このデコボコってゲームのドットじゃないかって。そこから菱形のビットちゃんが生まれた。
飯田 そうだったね。造型と概念がころがりながら、カタチになっていった。
犬飼 最初は目のついたキャラクターだったよね。
飯田 納口さんすぐ擬人化しちゃうんだよ。自分の息子が喜んでくれるから(笑)。
納口 ははは(笑)。
飯田 すぐユルいキャラを描いて、みんなから総攻撃を受けてた。こんなのオシャレじゃないよって。
「またお台場でこういうミーティングを定期的にやっていきたいよね」
(科学館側から、そろそろ締めてくださいのサイン)
―― あ、そろそろ終わりだそうです。
飯田 ああ、もう。ええと、話は尽きないんだけど、またお台場でこういうミーティングを定期的にやっていきたいよね。それはITmediaさんに対してだけじゃなくて、もっと多くの人に向けたものとして。そろそろDOMMUNE(※9)も疲れただろうし。
禿 基本的にみんな終わりたくないと思ってるんですよね。
飯田 そう、夏休みが終わっちゃう(的な)。
―― 「ディシプリン」の時もそんなこと言ってましたね(笑)。
飯田 中村さんの音楽も、せっかくカタチになったんだから生演奏とかしてみたいし。あの会場だって、10個のサラウンドシステムがある音響環境ってそんなにないんだよ。映画館よりもすごい。犬飼さんなんか、昨日までスピーカーのインピーダンスいじってた。
犬飼 まだやってますよ。
飯田 だからまあ、これから5年間、まだまだよろしくおねがいしますということで。
犬飼 これで情報共有をパワーに変えていきましょう。
―― ありがとうございました。
関連記事
日々是遊戯:ゲームクリエイター・飯田和敏氏が演出を手がけた、日本科学未来館の新展示「アナグラのうた」を体験してきました
日本科学未来館の新常設展示「アナグラのうた」の内覧会が行われた。あの飯田和敏氏が手がけているということで、気になって出かけてみました。日々是遊戯:奇才・飯田和敏の次回作は「アナグラのうた」。プラットフォームはまさかの……
「巨人のドシン」や「ディシプリン」などで知られる飯田和敏氏が、日本科学未来館の展示プロジェクトに関わっていることが判明。その内容とは……?いつでもどこでもあらゆる音で心を癒す――「なぎ -nagi-」がiPhoneアプリになった
災害復興を祈願したサウンド・リラクゼーションソフト「なぎ -nagi-」は、その名のとおり取り込んだ音の波をおだやかな波(なぎ)へと変えていく。日々是遊戯:あらゆる音をサイン波に溶かし、傷ついた心をおだやかに癒してくれるゲーム「なぎ -nagi-」
ゲームサウンドクリエイターの中村隆之氏、「ディシプリン*帝国の誕生」の飯田和敏氏、eスポーツプロデューサーの犬飼博士氏が、災害復興を祈願したゲームソフトを無料で公開しています。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小1息子「からあげって書いてある」→視線の先には…… 爆笑の珍回答が540万再生「かわいいから正解にしちゃおう」「オチwww」
かわいすぎる卓球女子の最新ショットが730万回表示の大反響 「だれや……この透明感あふれる卓球天使は」「AIじゃん」
18÷0=? 小3の算数プリントが不可解な出題で物議「割れませんよね?」「“答えなし”では?」
0歳赤ちゃんと2歳兄、“世界一かわいい兄弟げんか”がはじまったワケは…… 必死な兄の姿に「笑っちゃった」「たまらんです」
現存するの……!? 実家で見つけたティッシュ → 書かれていた“まさかの文字”に驚がく レアすぎる品に「すごっ」「もう27年か」
「美しすぎる文章」 90歳の祖母から届く小説のような手紙に反響 「素敵なおばあさま」「こんな文が書きたい」
44歳・遠野なぎこ「エヘッ お手て繋いでテクテク」 友人と連日外食→距離感問うSNSコメントにピシャリ「即ブロックしますからね」
「そうはならんやろ」 洗濯機で洗ってしまった“まさかのお菓子” → 衝撃の光景に6万いいね 「やばすぎw」「驚きの白さ」
大切なランプを壊してしまった妻 片付ける夫に「どうしてイライラしないの?」と聞くと…… 25万いいねを集めた回答がすてき【海外】
学校に行かせてもらえない娘の“絶望的状況”に「まさにトラップ」「家で自習ですね」 行く手を遮る正体に同情の声続々
- 18÷0=? 小3の算数プリントが不可解な出題で物議「割れませんよね?」「“答えなし”では?」
- 「これはさすがに……」 キャッシュレス推進“ピクトグラム”コンクールに疑問の声相次ぐ…… 主催者の見解は
- 和菓子屋の店主、バイトに難題“はさみ菊”を切らせてみたら…… 282万表示を集めた衝撃のセンスに「すごすぎんか」「天才!?」
- 「やばすぎ」 ブックオフに10万円で売られていた“衝撃の商品”に仰天 「これもう文化財」「お宝すぎる」
- 都知事選掲示板に“ほぼ全裸”ポスターが掲出で騒動に→アイドルが懸念示す 「300万円を考えると安いものなんでしょう」「真面目に頑張りたい人が可哀想」
- いつも遊びに来る野良猫がケガ→治療するもひどく威嚇され…… 「嫌われた」と思った翌日の光景に「涙が出ました」
- あずきバーに砲弾を撃ち込む様子が“そんなわけなさ過ぎる結果”で爆笑 ツッコミが不可避の投稿はどのように生まれたのか聞いてみた
- 「別人かよ」「泣けた」 “オタク”と言われ続けた男性が…… “激変イメチェン”に「こんなに変われるなんて」と称賛の声
- 定年退職の日、妻に感謝のライン→返ってきた“言葉”が193万表示 「不覚にもウルッとした」「自分も精進します」と反響多数
- 0歳赤ちゃん、寝ていたはずがベビーモニターに異常発生!→ママが駆け付けるとまさかの…… 爆笑の光景に「かわいすぎるっっ」「朝から癒やしをありがとう」
- 「今までなんで使わなかったのか」 ワークマンの「アルミ帽子」が暑さ対策に最強だった 「めっちゃ涼しー」
- 「現場を知らなすぎ」 政府広報が投稿「令和の給食」写真に批判続出…… 識者が指摘した“学校給食の問題点”
- 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 同情せざるを得ない衝撃の光景に「私でも笑ってしまう」「こんなん見たら仕事できない」
- 「思わず笑った」 ハードオフに4万4000円で売られていた“まさかのフィギュア”に仰天 「玄関に置いときたい」
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「二度と酒飲まん」 酔った勢いで通販で購入 → 後日届いた“予想外”の商品に「これ売ってるんだwww」
- 幼稚園の「名札」を社会人が大量購入→その理由は…… 斜め上のキュートな活用術に「超ナイスアイデア」「こういうの大好きだ!」
- 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
- JR東のネット銀行「JRE BANK」、申し込み殺到でメール遅延、初日分の申込受付を終了
- サーティワンが“よくばりフェス”の「カップの品切れ」謝罪…… 連日大人気で「予想を大幅に上回る販売」