YouTubeにファン970万人、空港には出待ちも……田舎の中学生が“YouTubeセレブ”になるまで

ハワイ生まれのライアン・ヒガさんは23歳。7年前に暇つぶしにはじめた動画投稿でYouTubeのスターになった。

» 2013年08月13日 10時00分 公開
[宮本真希,ねとらぼ]

 7年前の2006年――中学生のライアン・ヒガさんはハワイの田舎町で暇を持て余していた。せめてもの気晴らしに動画でも撮ってみよう。そんな軽い気持ちで始めたのがYouTubeでの活動だった。インターネットやビデオカメラのことはよく知らなかったが、ほかにやることがなかったのだ。

 今年23歳になったヒガさんはあの頃想像もしなかった未来にいる。彼のYouTubeチャンネル「nigahiga」の登録者数は970万人で堂々の世界第7位。YouTubeの動画を通じて得た収益で生計を立て、3人のスタッフを雇っている。彼のTwitterアカウント「@TheRealRyanHiga」のフォロワーは105万人だ。

画像 ライアン・ヒガさん。日系人である彼は「和食がすごい好き」なんだとか。英語版Wikipedia「YouTubeセレブリスト」にも載っている

 7月にYouTubeクリエイター向けの交流イベントに参加するため、スタッフとともに初来日した。到着したのは深夜だったが、空港にはファンが数人待っていたという。ヒガさんの人気は英語圏だけでなく世界に広がっている。一体この7年に何が起きたのだろう。“YouTubeセレブ”の素顔を直撃した。

1日16時間 アイデアを考え続けるストイックな日々

 ヒガさんはYouTubeにコメディ動画やビデオブログを投稿している。忍者やギャングスターを演じるHow to beシリーズ、iPodやGoogle Glassなどのガジェットになりきる人間◯◯シリーズ、ファンからの要望に応えるDear Ryanシリーズなどが有名だ。初期は口パクのパロディ動画が中心だったが“寸劇”をやるようになってから人気が出た。

 例えば2007年の「How to be Ninja」は「フォー!」と奇声を上げながらピカチュウっぽいぬいぐるみに飛び蹴りしたり、ボールに頭突きしたりとテンション高めな内容。これって忍者というよりカンフーでは……という突っ込みはさておき、現在までに3600万回以上再生されている。すごすぎる。

 同じシリーズの「How to be a Youtube Celebrity」は11年に投稿され、再生回数は1100万回以上。内容のバカっぽさ(※ほめ言葉です)はNinjaとそれほど変わらないが、一部ナレーションが付いていたり、演技が自然になっていたりと全体的なクオリティーは数年で格段に上がっている。

 面白動画だけではない。「Draw My Life」は自身の半生をイラストで振り返ったもの。幼いころいじめにあっていたことなどを明かし、そんな経験から人を笑わせたいと思った――というストーリーを語っている。東日本大震災の際には義援金を募るビデオ「Honk For Japan!」を公開し900万回再生された。

 YouTubeにはクリエイター向けのパートナープログラムがあり、参加すると動画ページに表示される広告を通じて収益を得ることができる。もちろんヒガさんもこのプログラムを通じて稼いでいる。何か別の仕事と掛け持ちしているわけではなく、YouTubeでの活動がフルタイムの仕事だ。

 動画のアイデアは日々の生活から生まれるという。自室に16時間こもりひたすらアイデアを書き出す。それを1週間に4〜5日は繰り返しているのだそうだ。残りの時間は撮影や動画の編集で消えていく。まさにYouTubeに全力投球。かなりストイックな毎日だ。それでも「ずっと楽しんでやってきたから今でも自分をプロだとは思っていない」と語るヒガさん。インターネットや動画に関して素人だった頃から試行錯誤を重ね、学んでいく過程そのものが楽しく、だからこそ続けてこられたという。

「よもや他人が見てくれるなんて思いもしなかった」

 中学生の頃、友人や家族のためにVHSのカムコーダで撮っていたのは、映画「呪怨」のパロディなど些細なものだった。しかしテープをいちいち手渡すのが面倒くさい。だからYouTubeに目をつけたという。ヒガさんにとってYouTubeはファイル転送のデバイスに過ぎず「よもや他人が見てくれるなんて思いもしなかった」。

 根っから人を楽しませることが好きだというヒガさんにとってYouTubeでの活動は性に合っていたのかもしれない。学校ではシャイな方で人前でうまく話せなかったり怖じ気づいたりしていたが、動画がたくさんの人に見られることを怖いと思ったことはない。自分がこだわって作ったモノを知ってもらうことは「何も問題なかった」と振り返る。

画像 「人を楽しませることが好き。ほかのことはどうでもいいんです」

 ご存知の通り、YouTubeは巨大なプラットフォームだ。1分あたり約100時間分の動画がアップロードされている。そんな中から自分の作品を見つけてもらうのは至難の業だ。当然ながらほとんどは注目されることなく埋もれてしまう。ヒガさんの場合、動画を見つけてもらう工夫を特にしたわけではなく、口コミで人気が広がったという。

 「人によっては自分で売り込んでマーケティングしてる人もいるけど、私はそうではなくただ好きなコンテンツを出して共感してもらえれば良しという感じだった。YouTube側にフィーチャーされて人気が出る人もいるけどそれもなかった(笑)。だから本当にラッキーだったんだと思うんです」

 YouTubeだけで食べていくことを決意したのは大学2年の頃だ。高校を卒業する頃にはすでに手応えを感じていたが、両親に「YouTubeを仕事にする」とは言い出せず、いったんはラスベガスの大学に進学した。専攻は放射線医学。「でも全然興味が持てなくて……」。結局勉強もYouTubeでの活動もはかどらなくなり、学校は辞めてしまった。

 「両親はショックを受けてがっかりした様子だった。でもYouTubeには将来性があると説得して、自分が100%やりたいことなんだと知ってもらったんです」。現在は友人3人を雇って動画を制作している。「自分の声や動画についてはうるさい」というヒガさんのこだわりを理解して、支えてくれるメンバーで、今回も一緒に来日した。

日本で撮影したのは、「NARUTO-ナルト-」を実写化した動画。ファンの要望に応えて制作した
撮影の裏側もヒガさんのサブチャンネルで公開されている

 今後はテレビや映画の世界に進出するという野望を抱いている。目標は単なる監督や俳優ではなく、すべての役割を自分でこなせるようなアーティストだ。もちろんYouTubeでの活動も続けていく。「コンテンツを発表する場はこれからもYouTubeでありたい。YouTubeは出発点であり私にすべてを与えてくれた場所だから」――。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/05/news022.jpg 「クレオパトラみたい」と言われ傷ついた55歳女性→カット&パーマで大変身! 「本当にびっくり」「素敵なマダムに」
  2. /nl/articles/2410/05/news040.jpg 伝説の不倫ドラマ「金曜日の妻たちへ」放送から41年、キャストの現在→75歳近影が「とても見えません」と話題
  3. /nl/articles/2410/02/news116.jpg 余りがちなクリアファイル、“じゃないほう”の使い方で食器棚がまさかのスッキリ 「目からウロコ」「思いつかなかった!」と反響
  4. /nl/articles/2410/05/news023.jpg 七五三で刀を持っていた少年→20年後には…… “まさかの進化”に「好きなもの突き進んでかっこいい!」
  5. /nl/articles/2410/05/news018.jpg 野良猫が窓越しに「保護してください」と圧をかけ続け…… ひしひし感じる強い意志と表情に「かわいすぎるw」「視線がすごい」
  6. /nl/articles/2410/05/news012.jpg 「あのお客さんに幸あれっ!」 小銭の出し方が完璧な“神客”にレジ店員感激 会計がスムーズになる配慮が参考になる
  7. /nl/articles/2410/04/news048.jpg 「こういうの好き」 割れたコップの破片を並べたら…… “まさかの発想”で息を飲むアート作品に 「すごいセンス良い」「前向きな考え」
  8. /nl/articles/2410/04/news040.jpg 50代女性「モンチッチみたいにしてほしい」→美容師がプロのワザを見せ…… 別人級の変身に「めっちゃお洒落」「すごい!」
  9. /nl/articles/2410/04/news025.jpg 「これが免許証の写真???」 コスプレイヤーが公開した“信じられない”免許証が話題 コスプレ姿との比較に「両方とも可愛いすぎる」
  10. /nl/articles/2410/05/news032.jpg 大型犬が18年間、ドアを開け続けた結果……そうはならんやろな驚きの末路に「どうしたらこんな風になるのよ」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. ネットで大絶賛「ブラウニー」にカビ発生 業務スーパーに7万箱出荷…… 運営会社が謝罪
  2. 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
  3. トラックがあおり運転し車線をふさいで停車…… SNSで拡散の動画、運転手の所属会社が謝罪
  4. 「ヤヴァすぎる!!」黒木啓司、超高級外車の納車を報告 新車価格は5000万円超 2023年にはフェラーリを2台購入
  5. そうはならんやろ “ドクロの絵”を芸術的に描いたら…… “まさかのオチ”に「傑作」の声【海外】
  6. 「ウソだろ?」 ハードオフに3万円で売っていた“衝撃の商品”に思わず二度見 「ヤバいことになってる」
  7. 「結局こういう弁当が一番旨い」 夫が妻に作った弁当に「最強すぎる!」「絶対美味しいビジュアル」
  8. “メンバー全員の契約違反”をライブ後に発表 異例の脱退騒動背景を公式が釈明「繋がり行為などではなく」
  9. 「言われる感覚全く分からない」 宮崎麗果、“第5子抱いた服装”に非難飛び……夫・黒木啓司は「俺が言われてるのかな?」
  10. 大沢たかお、広大プールを独り泳ぐ“バキバキ姿”が絵になり過ぎ 盛り上がる筋肉の上半身に「50代とは思えない」「彫刻みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声