インディーゲーム開発者400人が集い、叫び、飲み、涙した「INDIE STREAM」とは何だったのか:日々是遊戯
東京ゲームショウ最終日、品川のSCEビルでもう1つのイベントが行われた。国内外のインディーゲーム開発者400人が集まった「INDIE STREAM」の様子をリポートする。
「Minecraft」の爆発的ヒット以降、世界的にも大きな注目を集めているインディーゲーム。しかし残念ながら国内では「東方Project」などの一部ジャンルを除いて、実際のところそこまでは注目されていないというのが実情だ。
だが、東京ゲームショウ最終日(9月22日)の夜に開催された「INDIE STREAM」に参加して、そんな状況が少しだけ変わるかもしれないと思った。400人ものインディーゲーム関係者が集まったあの夜の熱狂を、ほんの少しでも読者のみなさんにお伝えしておきたい。
「会場:SCEの社員食堂」になった理由
「INDIE STREAM」は、インディーゲーム開発集団・NIGOROの楢村匠さん、nyamyamの東江亮さんが発起人となって企画した、インディーゲーム開発者による交流会イベントだ。
当初はゲームショウの打ち上げを兼ねた単なる飲み会程度のものを予定していたが、そこへインディーゲーム配信サイト「PLAYISM」が乗っかり、さらにソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が「うちが場所を提供しましょう」と名乗り出た。SCEはもともと「僕は森世界の神になる」のPlayStation Mobile移植などでPLAYISMと付き合いがあったし、PlayStation 4ではインディーゲームを積極的に支援していくことを公言している。SCEにとっても今回のイベントの話は“渡りに船”だったのだろう。
そんなわけで、気付けば参加者数は400人規模にふくれあがり、会場にはSCEの社員食堂(デカい!)が使われることになった。あまりに参加者が多すぎて会場内では知り合いを探すのも大変だったが、見れば「東方Project」のZUNさん、「Mighty No.9」の稲船敬二さん、「モンケン」の黒川文雄さん、「Project Phoenix」の由良浩明さんなどなど、まさに国内のインディークリエイターそろい踏みといった顔ぶれ。後で参加者のツイートを追ってみたら、なんとホリエモン(堀江貴文さん)まで来ていたらしい。ホリエモンってインディーゲーム関係者だっけ……というのはさておき、とにかくそれだけ大きなパーティだったということだ。
サイト「INDIE STREAM」の立ち上げ
さて、交流会自体も大いに盛り上がったのだが、宴もたけなわというところで、発起人の楢村さん、東江さんからもう1つ大きな発表があった。
それは、インディーゲーム開発者たちを結ぶコミュニティサイトを新たに立ち上げるということ。サイト名は今回のイベントと同じ「INDIE STREAM」。楢村さんと東江さんが知り合っていろいろと情報交換をしていくなかで、「こういうつながりをもっと多くのインディー開発者と持てたらいいよね」という話になったのが発端だった。
「たぶんこのままでは、何年経っても『ファミ通インディー』は出ないと思うんです。だったら自分たちで動こうと思ったのがはじまり」(楢村さん)
「モンケン」や「Mighty No.9」などが話題になったとは言え、国産インディーゲームの地位はまだまだ低い。日本のゲームユーザーで「LA-MULANA」や「TENGAMI」の名前を知っている人はごく少数だろう。
しかし、それぞれが横のつながりを持ち、助け合えばもっといろいろなことができるようになるのでは――というのがINDIE STREAMの狙いだ。サイトに掲載された序文から少し引用しよう。
ここは、創造の自由を願うインディーデベロッパーが集うための場所。
インディーデベロッパーには、予算や人員に限りがあります。
しかし、世界中のデベロッパーが協力し合えば、
世界中に情報を発信することも、世界中の情報を集めることも、
インディーゲームが活躍する場を世界中に拡げることも、きっとできます。
現在はまだ登録フォームがあるのみだが、今後は登録者向けの交流機能を用意するほか、メディア向けに資料や素材の配布なども行っていく。これが軌道に乗れば、きっとインディーゲームの存在感は今より大きなものになるはずだ。
INDIE STREAMの可能性
サイトはまだ立ち上がったばかりだが、すでに「INDIE STREAM」の効果は表れはじめている。その一例として発表されたのが、NIGOROの看板タイトル「LA-MULANA」のPlayStation Vita移植だ。
「LA-MULANA」はこれまでWiiウェア、PC(PLAYISM+Steam)向けに配信されてきたが、これにPlayStation Vitaが新たに加わることになる。これは、NIGOROからPLAYISMへ、PLAYISMからSCEへ――という「横のつながり」ができたから実現できたことだ。まだ詳細未定ながら、PLAYISMで配信中の「TorqueL(トルクル)」も、今後完成版をPS4で出すことを検討中という。
PLAYISMやSCEのネットワークができたことで、今後は個人制作のインディーゲームであっても、海外展開やコンシューマー展開を検討できるようになった。海外では「Minecraft」「Terraria」といったヒットタイトルはもはやあちこちのプラットフォームから引っ張りだこの状態だが、ようやく国内もそうした状況に近づきはじめたとも言える。もちろん「青田買い」や「囲い込み」につながる懸念もあるにはあるが(Xboxプラットフォームには出しにくくなるんじゃないか? とか)、そこはとりあえず今後の活動を見て判断していくべきだろう。
ゲームショウ出展で見えた「弱さ」
今年の東京ゲームショウでは、史上はじめて「インディーズゲームコーナー」が設けられた。ようやくCESAもインディーゲームに注目しはじめたか! と最初は関心したのだが、実際に行ってみるとちょっと様子が違った。
インディーゲームコーナーがあったのは、メインホールではなく、ファミリーコーナーなどがある「9ホール」。建物もメインホールとは別で、いったん入り口から出て、外の通路を経由しないと行くことができない。ファミリーコーナーへ行くお客がインディーゲームにそこまで関心があるとも思えず、どうしてこんな配置にしたのか、なんとなく「CESAがインディーを煙たがって遠ざけた」ようにも見えてしまった。
場所の問題もあるのだろうが、ブースも盛況とは言いがたかった。実況プレイヤーを招いたステージイベント「インディーゲームフェス2013」の方は確かに盛り上がっていたが、ほとんどは実況プレイヤー目当てのお客で、ステージが終わると大半のお客はそのままエスカレーターを上がってメインホールへ戻っていってしまう。やはり国内ではまだまだ「インディーゲームの立場は弱い」ということをあらためて痛感した。
でも、それを目の当たりにしていたからこそ、INDIE STREAM会場の熱気にはぐっとくるものがあった。楢村さんや東江さんのプレゼンの間、会場からは何度も歓声や口笛が飛んだ。参加していたインディーゲーム関係者の中にも、同じ思いの人がきっと大勢いたのだろう。
INDIE STREAMはまだ動き出したばかりだし、本当にうまく回るのかどうかはまだ分からない。でも、後から振り返った時に「あの夜は伝説だったよね」と笑えるように、今はこの新しい流れを少しでも応援していきたい。
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