インディーゲーム開発者400人が集い、叫び、飲み、涙した「INDIE STREAM」とは何だったのか日々是遊戯

東京ゲームショウ最終日、品川のSCEビルでもう1つのイベントが行われた。国内外のインディーゲーム開発者400人が集まった「INDIE STREAM」の様子をリポートする。

» 2013年09月25日 16時29分 公開
[池谷勇人,ねとらぼ]

 「Minecraft」の爆発的ヒット以降、世界的にも大きな注目を集めているインディーゲーム。しかし残念ながら国内では「東方Project」などの一部ジャンルを除いて、実際のところそこまでは注目されていないというのが実情だ。

 だが、東京ゲームショウ最終日(9月22日)の夜に開催された「INDIE STREAM」に参加して、そんな状況が少しだけ変わるかもしれないと思った。400人ものインディーゲーム関係者が集まったあの夜の熱狂を、ほんの少しでも読者のみなさんにお伝えしておきたい。

画像 会場となったSCEの社員食堂。とにかくものすごい熱気と人の密度だった


「会場:SCEの社員食堂」になった理由

 「INDIE STREAM」は、インディーゲーム開発集団・NIGOROの楢村匠さん、nyamyamの東江亮さんが発起人となって企画した、インディーゲーム開発者による交流会イベントだ。

画像 発起人の東江さん(左)と楢村さん(右)

 当初はゲームショウの打ち上げを兼ねた単なる飲み会程度のものを予定していたが、そこへインディーゲーム配信サイト「PLAYISM」が乗っかり、さらにソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が「うちが場所を提供しましょう」と名乗り出た。SCEはもともと「僕は森世界の神になる」のPlayStation Mobile移植などでPLAYISMと付き合いがあったし、PlayStation 4ではインディーゲームを積極的に支援していくことを公言している。SCEにとっても今回のイベントの話は“渡りに船”だったのだろう。

画像 このへんはまだ空いてたほう

画像 参加者は開発者、メディア、ゲームメーカー関係者までさまざま

画像 会場のあちこちでは名刺交換が盛んに行われていた

 そんなわけで、気付けば参加者数は400人規模にふくれあがり、会場にはSCEの社員食堂(デカい!)が使われることになった。あまりに参加者が多すぎて会場内では知り合いを探すのも大変だったが、見れば「東方Project」のZUNさん、「Mighty No.9」の稲船敬二さん、「モンケン」の黒川文雄さん、「Project Phoenix」の由良浩明さんなどなど、まさに国内のインディークリエイターそろい踏みといった顔ぶれ。後で参加者のツイートを追ってみたら、なんとホリエモン(堀江貴文さん)まで来ていたらしい。ホリエモンってインディーゲーム関係者だっけ……というのはさておき、とにかくそれだけ大きなパーティだったということだ。

画像 ビールも飲み放題

画像 もちろん食べ物も。ただ、人数が多すぎてすぐ品切れになってしまっていた

画像 食べた人いわく「うますぎてビックリした」というお寿司(筆者は写真撮影に夢中で食べ損ねた……)




サイト「INDIE STREAM」の立ち上げ

 さて、交流会自体も大いに盛り上がったのだが、宴もたけなわというところで、発起人の楢村さん、東江さんからもう1つ大きな発表があった。

画像 「INDIE STREAM」について説明する東江さん

画像 「INDIE STREAM」のロゴ

 それは、インディーゲーム開発者たちを結ぶコミュニティサイトを新たに立ち上げるということ。サイト名は今回のイベントと同じ「INDIE STREAM」。楢村さんと東江さんが知り合っていろいろと情報交換をしていくなかで、「こういうつながりをもっと多くのインディー開発者と持てたらいいよね」という話になったのが発端だった。

「たぶんこのままでは、何年経っても『ファミ通インディー』は出ないと思うんです。だったら自分たちで動こうと思ったのがはじまり」(楢村さん)

 「モンケン」や「Mighty No.9」などが話題になったとは言え、国産インディーゲームの地位はまだまだ低い。日本のゲームユーザーで「LA-MULANA」や「TENGAMI」の名前を知っている人はごく少数だろう。

 しかし、それぞれが横のつながりを持ち、助け合えばもっといろいろなことができるようになるのでは――というのがINDIE STREAMの狙いだ。サイトに掲載された序文から少し引用しよう。

ここは、創造の自由を願うインディーデベロッパーが集うための場所。

インディーデベロッパーには、予算や人員に限りがあります。

しかし、世界中のデベロッパーが協力し合えば、

世界中に情報を発信することも、世界中の情報を集めることも、

インディーゲームが活躍する場を世界中に拡げることも、きっとできます。

 現在はまだ登録フォームがあるのみだが、今後は登録者向けの交流機能を用意するほか、メディア向けに資料や素材の配布なども行っていく。これが軌道に乗れば、きっとインディーゲームの存在感は今より大きなものになるはずだ。

画像 「INDIE STREAM」のイメージ

画像 サイトでは現在参加者の登録を受付中


INDIE STREAMの可能性

 サイトはまだ立ち上がったばかりだが、すでに「INDIE STREAM」の効果は表れはじめている。その一例として発表されたのが、NIGOROの看板タイトル「LA-MULANA」のPlayStation Vita移植だ。

画像 PS Vita版「LA-MULANA」を見せる楢村さん

 「LA-MULANA」はこれまでWiiウェア、PC(PLAYISM+Steam)向けに配信されてきたが、これにPlayStation Vitaが新たに加わることになる。これは、NIGOROからPLAYISMへ、PLAYISMからSCEへ――という「横のつながり」ができたから実現できたことだ。まだ詳細未定ながら、PLAYISMで配信中の「TorqueL(トルクル)」も、今後完成版をPS4で出すことを検討中という。

画像 メゾン・ド・魔王」のSteam配信も併せて発表に

画像 さらにPS3、PS Vita向けに「マシナリウム」も配信決定

画像 TorqueL」はなんとPS4に!(まだ詳細は未定)

 PLAYISMやSCEのネットワークができたことで、今後は個人制作のインディーゲームであっても、海外展開やコンシューマー展開を検討できるようになった。海外では「Minecraft」「Terraria」といったヒットタイトルはもはやあちこちのプラットフォームから引っ張りだこの状態だが、ようやく国内もそうした状況に近づきはじめたとも言える。もちろん「青田買い」や「囲い込み」につながる懸念もあるにはあるが(Xboxプラットフォームには出しにくくなるんじゃないか? とか)、そこはとりあえず今後の活動を見て判断していくべきだろう。


ゲームショウ出展で見えた「弱さ」

 今年の東京ゲームショウでは、史上はじめて「インディーズゲームコーナー」が設けられた。ようやくCESAもインディーゲームに注目しはじめたか! と最初は関心したのだが、実際に行ってみるとちょっと様子が違った。

 インディーゲームコーナーがあったのは、メインホールではなく、ファミリーコーナーなどがある「9ホール」。建物もメインホールとは別で、いったん入り口から出て、外の通路を経由しないと行くことができない。ファミリーコーナーへ行くお客がインディーゲームにそこまで関心があるとも思えず、どうしてこんな配置にしたのか、なんとなく「CESAがインディーを煙たがって遠ざけた」ようにも見えてしまった。

画像 一般公開日のインディーズゲームコーナーは、ファミリーコーナーやコスプレコーナーと同じ9ホールに配置(ビジネスデーはメインホールだったのに……)

画像 左の建物がインディーズゲームコーナーのある9ホール。メインの1〜8ホールとはそもそも建物が違う

 場所の問題もあるのだろうが、ブースも盛況とは言いがたかった。実況プレイヤーを招いたステージイベント「インディーゲームフェス2013」の方は確かに盛り上がっていたが、ほとんどは実況プレイヤー目当てのお客で、ステージが終わると大半のお客はそのままエスカレーターを上がってメインホールへ戻っていってしまう。やはり国内ではまだまだ「インディーゲームの立場は弱い」ということをあらためて痛感した。

画像 一般公開日のインディーズゲームコーナーの様子。全体的に人はまばらで、やや盛り上がりに欠けた

画像 ステージイベントは大盛況だったが、これをインディーゲームの盛り上がりと見ていいのかはちょっと疑問

画像 上から見ると盛況ぶりがよく分かる。この1割でもインディーズゲームコーナーに流れてくれれば……

 でも、それを目の当たりにしていたからこそ、INDIE STREAM会場の熱気にはぐっとくるものがあった。楢村さんや東江さんのプレゼンの間、会場からは何度も歓声や口笛が飛んだ。参加していたインディーゲーム関係者の中にも、同じ思いの人がきっと大勢いたのだろう。

 INDIE STREAMはまだ動き出したばかりだし、本当にうまく回るのかどうかはまだ分からない。でも、後から振り返った時に「あの夜は伝説だったよね」と笑えるように、今はこの新しい流れを少しでも応援していきたい。

画像 会場内は終始大盛り上がりだった。「あの夜、あの場所にいたんだぜ」って、あとあと自慢できるといいなあ(願望)









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