ニュース
» 2014年01月07日 11時17分 公開

プロ棋士がコンピュータ将棋に10倍返し! 船江五段が雪辱を果たした「電王戦リベンジマッチ」を振り返る

ツツカナ? 強いよね。だけど、俺は負けないよ。

[たろちん,ねとらぼ]

 昨年4月に開催され、現役プロ棋士がコンピュータ将棋ソフトに大きく負け越して話題になった「第2回将棋電王戦」。今年開催される第3回に先駆けて、船江恒平五段が将棋ソフト「ツツカナ」に再戦を挑む「電王戦リベンジマッチ」が12月31日に開催されました。

 前回、ツツカナにあと一歩のところで逆転負けを喫した船江五段。何度人間が優勢を築いても決して動揺せずに喰らいついてくるコンピュータ将棋の強さを、多くの人に印象付けた対局でした。敗れはしたものの船江五段はその後もツツカナを研究パートナーとして活用しており、「ツツカナと新婚生活をしているようなもの」と語るほどの相思相愛ぶりは棋士と将棋ソフトの新しい関係性として話題に。プロが2度も同じソフトに負けてしまえば格付けがはっきりしてしまうというリスクはありますが、「ツツカナともう一度指してみたい」との想いから今回のリベンジマッチに名乗りを上げました。


画像 船江五段はチャレンジャーとして自ら「玉将」を持った


プロの意識を変えた電王戦

 対局・解説会場となったのは、この日を最後に移転が決まっている原宿・ニコニコ本社。会場には200人近いファンが詰めかけ、会場の外にまで人があふれるほどの盛り上がりを見せました。


画像 ニコニコ本社に1日だけ作られた対局室

 解説陣は前回と同じ鈴木大介八段と聞き手の藤田綾女流初段に加え、ともに電王戦を戦い終局後の涙が話題を呼んだ塚田泰明九段が登場。第2回電王戦の結果はプロ棋士達のコンピュータ将棋に対する意識も大きく変えたようで、「電王戦をきっかけに、自分の指した将棋をソフトで分析して研究するようになった」というエピソードも披露されました。


前回の指し手をなぞる展開に

 序盤は30手を過ぎるまで前回とまったく同じ指し手で進むという展開に。人間が同じ手を指してもツツカナはランダムで指し手を変えることがあるのですが、この日はたまたま前回と同様の進行が続いたそうでまさに「リベンジマッチ」にふさわしい局面に進んでいきました。また、時間の使い方は対照的で、常に1手を数分考えるツツカナに対し、船江五段は序盤をノータイムで進めソフトの得意な中盤〜終盤に持ち時間を残す作戦。十分にコンピュータ将棋対策を立ててきた様子をうかがわせます。


画像 得意の自虐ネタで笑いを誘う鈴木八段

 ちなみに解説の鈴木八段は前回の電王戦後、船江五段と改めて指し手を検討したそう。船江五段が鈴木八段の考えた手を聞いて「いい手ですねー」と言ったというまさにその局面が登場すると、「ここで船江君が僕の言った手を指すかどうかで僕たちの友情が試されます」と盛大にフラグを立てます。案の定、船江五段があっさりと違う手を指すと、鈴木八段は「なんて奴だ!」と声をあげ会場の笑いを誘っていました。


豪華ゲストも多数


画像 紅ちゃんの登場に沸くコメント

 電王戦恒例の「素敵なゲスト」には中学生美少女棋士として人気の竹俣紅女流2級などが登場し、コメントは大盛り上がり。また、電話コーナーの「ティロフォンショッキング」には、「リベンジマッチ」という棋士には珍しいカタカナでの題字を書いた船江五段の師匠・井上慶太九段などが出演しました。ちなみになぜ「ティロフォン」なのかというと、ニコ生で頻繁に流れる将棋アプリのCMで西尾明六段が奏でる速弾きギターに合わせた「ティロティロティロティロ」という弾幕からとられたようです。なお、公式の曲名も「ティロティロ」になってしまったもよう。


画像 ニコ生将棋のコメントでは定跡の「ティロティロ」がついに公式化


完璧な指し回し

 先に前回の進行と違う手を指したのはツツカナ。この攻めには無理があり、解説陣は船江五段有利の見解を示します。ただし、わずかな気の緩みであっという間に逆転されてしまうツツカナの恐ろしさはすでに経験済み。昼食休憩後には早くも船江五段が待っていた勝負所となり、節約していた持ち時間を一気に投入して長考に入ります。


画像 対局者の昼食は鮒忠の「金龍膳」3150円

 局面が二転三転した前回とは違い、気力体力の充実した状態で読みを入れる船江五段は、完璧な指し回しでツツカナに逆転の隙を与えません。逆にツツカナの攻めが緩んだ瞬間を見逃さず、最後は“詰め将棋の名手”の面目躍如でツツカナの王を鮮やかな即詰みに討ち取り、85手で勝ち。「10倍返しで勝ちたい」という対局前の宣言通り、完璧な勝利を収めました。


画像 倍返し達成の瞬間

 終局後の感想では「楽しく指せました」と笑顔を見せた船江五段。事前対策の立てやすさなど船江五段に有利な条件はありましたが、それでも練習での成績は「五分五分」だったというところにツツカナの強さが感じられます。


画像 「103」の愛称で親しまれる一丸さんの穏やかなキャラクターも光っていました

 ツツカナ開発者の一丸貴則さんが、記者会見後に慣れない正座で足がしびれてしまった場面では、会場も一丸さん達も爆笑。相思相愛の両者らしく、最後は和やかな雰囲気での終了となりました。


 この日のために禁酒をして臨んだ船江五段。勝利の美酒で一年を締めくくることができたようです。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/1605/20/news111.jpg 絶対にプラスチックのカップで「焼きプリン」を作るという執念 森永「焼きプリン」の製法特許がすごいと話題
  2. /nl/articles/2312/09/news033.jpg 13年外につながれボロボロのおばあちゃんワンコを保護 人間を信じ始める姿に涙「今まで苦労した分以上の幸せな余生を送れますように」
  3. /nl/articles/2312/10/news011.jpg 犬同伴OKのビュッフェに柴犬と行ったら…… 全く別の楽しみ方をしてしまう姿に「かわいいいいい」「気持ちよさそう」
  4. /nl/articles/2312/10/news019.jpg 入院で2週間不在だったママを待ち続けた猫、再会の瞬間…… 涙を誘う喜びあふれる“お返事”に「深い絆に涙が」「嬉しさがひしひしと」
  5. /nl/articles/2312/10/news018.jpg 同居猫のおしりを嗅いで「テメェ屁こいたなぁ!!!!!??(怒)」と理不尽ギレする猫の姿に抱腹絶倒「夜中に爆笑させないで」「名作」
  6. /nl/articles/2312/10/news061.jpg 遠藤憲一、保護犬を家族に迎える 「保護時には栄養失調と足に怪我を」悲しい過去も、ウキウキお散歩ショットにほっこり
  7. /nl/articles/2312/08/news013.jpg 愛猫が息を引き取る直前「ありがとう、楽しかったよ」と声を掛けたら…… 家族みんなが久々に集った夜の奇跡に涙
  8. /nl/articles/2312/09/news081.jpg 短編ホラーゲーム「8番出口」で“開発者も知らない異変”が発生し笑いと恐怖 「マジでホラー」「本物の『怪異』だ」
  9. /nl/articles/2312/10/news033.jpg 捨てられて真っ黒だった元野良猫が、家猫になった今では…… 真っ白で幸せいっぱいの暮らしに「ほんときれいな美猫さんに」「胸が熱くなる」
  10. /nl/articles/2312/08/news180.jpg ミス東大の水着グラビアデビューに「東大まで行って」と失望の声 本人&現役グラドルも加わるネット論争に
先週の総合アクセスTOP10
  1. オール巨人、30年モノな“伝説の1台”に自負「ここまでキレイな車はない」 国産愛車の雄姿に称賛の声「気品がある」「凄くエレガント」
  2. 「明らかに写真と違う」 東京クリスマスマーケットのフードメニューが物議…… 購入者は落胆「悲しかった」
  3. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  4. 田中みな実、“共演した姉”の存在に反響「居るとは聞いていたけど」「激似やなぁ」 すらっとしたたたずまいに「品のあるお方」
  5. 藤本美貴、“全然かわいくない値段”のテスラにグレードアップ スマホ一つでの注文に「震えちゃ〜う!」
  6. マックで「プレーンなバーガーください」と頼んだら……? 出てきた“予想外の一品”に驚き「知らなかった」
  7. 伊藤沙莉、“激痩せ報道”の真相暴露→広瀬アリスの株が上がってしまう 「辱めったらない」告白に「アリスちゃん、ええ人や〜」
  8. 「あなたは日本人?」突然送られてきた不審なLINE、“まさかの撃退方法”に反響 「センス良い」「返しが秀逸」
  9. “鬼ダイエット”で激やせの「Perfume」あ〜ちゃん、念願の姿に「着れる日が来るなんて」と大喜び
  10. 900万再生のワンコに「電車で笑ってしまった」「つられてめちゃくちゃ笑っちゃうw」 “突然魔王になった犬”に腹を抱える人続出
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「酷すぎる」「不快」 SMAPを連想させるジャンバリ.TVのCMに賛否両論
  2. 会話できる子猫に飼い主が「飲み会行っていい?」と聞くと…… まさかの返しに大反響「ぜったい人間語分かってる」
  3. 実は2台持ち! 伊藤かずえ、シーマじゃない“もう一台の愛車”に驚きの声「知りませんでした」 1年点検時に本人「全然違う光景」
  4. 大好物のエビを見せたらイカが豹変! 姿を変えて興奮する姿に「怖い」「ポケモンかと思った」
  5. 渋谷駅「どん兵衛」専門店が閉店 店内で見つかった書き置きに「店側の本音が漏れている」とTwitter民なごむ
  6. 西城秀樹さんの20歳長男、「デビュー直前」ショットが注目の的 “めちゃくちゃカッコいい”声と姿が「お父さんの若い頃そっくり」「秀樹が喋ってるみたい」
  7. “危険なもの”が体に巻き付いた野良猫、保護を試みると……? 思わずため息が出る結末に「助けようとしてくれてありがとう」【米】
  8. 「やばい電車で見てしまった」「おなか痛い、爆笑です」 カメがまさかの乗り物で猫を追いかける姿が予想外の面白さ
  9. おつまみの貝ひもを食べてたら…… まさかのお宝発見に「良いことありそう」「すごーい!」の声
  10. 「3カ月で1億円」の加藤紗里、オーナー務める銀座クラブの開店をお祝い “大蛇タトゥー”&金髪での着物姿に「極妻感が否めない」