“Ingress紳士”に夜の国立競技場前で出会った話 世界最高レベルのエージェントに聞くその極意:Google発、世界規模の陣取り合戦(1/3 ページ)
夜の国立競技場前。Ingressをプレイしていた筆者は見知らぬ男性に声をかけられた。その名はirmareさん。なんと世界最高レベルのIngress紳士だったのだ。
Googleの位置情報ゲーム「Ingress」(紹介記事)が話題になっている。2013年12月に正式版がリリースされ、今年7月にiOS版が公開されたことから注目度が急上昇した。どんなゲームなのかと言うと、要は現実を舞台にした“世界規模の陣取り合戦”で、青と緑の2陣営に分かれて競い合っている。
最大の特徴は、プレイヤー(エージェント)が実際に動かないと始まらないこと。ゲームなのに家でぽちぽち進めることはできず、現実の地図と連動した仮想空間に存在する「ポータル」(3カ所つなげると陣地になる)を求めて、外に出なければいけない。運営はNiantic Labs。「Google Earth」を作ったジョン・ハンケさんが立ち上げた社内ベンチャーで、日本人では川島優志さん(@mask303)が一員に加わっている。
筆者はIngressを先月始めた。序盤の難易度がやや高く、開始数日は右も左も分からなかったが、ちょうどそのころ、オフィス帰りにプレイしていた際にあるエージェントに声をかけられた。「やってますね……!」――夜の国立競技場前でのことだ。そして、AP(AccessPoints≒経験値)稼ぎを手伝ってもらい、5分と経たず別れたものの、このゲームの可能性を感じることができた。
後日、その“Ingress紳士”に同じ場所で再び出会った。彼の名はirmareさん。実は、βテスト時代からプレイしていた世界最高レベルのエージェント(「ソードアート・オンライン」で言うキリトさん)だったのだ。
irmareさんは東京在住の40代会社員。家庭用ゲームのプレイ歴はPlayStation 2で止まっていて、スマートフォンアプリもほとんど触らないという。そんな彼がIT系のニュースサイトでIngressを知り、2013年1月にプレイし始め、今年7月におそらく日本初となるレベル16(MAX)に到達。現在も活動を続けている。どうしてIngressにハマったのか、ゲームの魅力は何なのか――irmareさんに聞いてみた。
世界最高レベルのエージェントに直撃インタビュー!
――現在のステータスを教えてください。
レベル16、累積APは6300万ほどで、実績メダルはリチャージャーとガーディアンがブラック(黒→プラチナ→金銀銅の順)になっています。陣営は緑(エンライテンド)。これはストーリー背景から選びました。
――どのようにプレイを進めてきたんですか。
昨年1月に始めて、1〜2カ月でレベル8になりました(Ingressではレベル8到達までが第2チュートリアルと言われている)。当時は日本語での情報がほぼなく、英語は決して堪能ではないのですが、大分スムーズに進みました。それからしばらく大人しくしていて、「Elite V」(世界のトップ5人を決めるイベント)の開催を知ったことをきっかけに本腰を入れました。その頃、他のエージェントの情報(APやメダル)が確認できるようになったのです。上位エージェントの状況を調べて、どれくらいまで上げればいいのか感覚をつかんで臨みました。
――それからはどんな風にプレイしたんですか。
まずはAPのアップ。世界に出るために、少なくとも都内のトップクラスにならなければなりません。次にメダル。出来る限りゴールドにしようと。エクスプローラー(金は2000カ所のユニークポータルを訪れる必要がある)のために東京散策も行いました。
――やがてレベル16に。
そうですね。Elite Vは残念ながら選ばれなかったのですが、敵からの攻撃に応戦していたらAPが上昇し、レベルキャップ開放時点(今年5月)で14になっていました。15から16に上げるために終盤1カ月間追い込みをかけて今年7月に到達しました。終盤はレベルアップ時に大量のAP(15→16は1→8までの約13倍)が必要になるので、単位時間あたりに稼ぐ方法を考えるようになります。
自分は最低活動単位を1時間として、あとはポータル数を基準に考えています。例えば「80個密集していると多い」「100個あるとうれしい」という感じです。いざやる時はそれを全部まわります。もちろん4周します(ポータルは5分間隔で4回ハックでき、上限になると4時間アクセスできなくなる)。
Ingress紳士のプレイスタイル
――プレイ時間はどのくらいなのでしょうか。
毎日1〜3時間、基本は通勤時です。晴れの日は自転車、雨の日は電車と徒歩でまわっています。そのため、帰りは遅くなりがち。自分のフィールドが青になっていると忙しくなります(笑)。それでも終電では必ず帰るようにしていて、自転車で深夜2時帰宅といったケースもありましたが、今年に入ってからはないですね。休日も特に変わりません。ただし、エクスプローラーは1日がかりになります。
――本業に影響が出たことは……。
それはなかったです。どちらかと言うとリフレッシュします。
――レベル16到達時はやはり達成感がありましたか。
はい。ゲーム上の強さはレベル8と大差ないのですが、やはりありましたね。正確な人数は分かりませんが、「Ingress United AP Elite」(上位のエージェントが集まるグループ)によると、8月末時点でのレベル16は世界に11人、日本に1人です。到達のポイントは、生活のルートに密集地帯(ファーム)があったこと、勤務先周辺のポータルを育ててきたこと、あとは三角形作りの技術と体力だと思います。
――ポータル申請はどれくらいですか。
承認を得られたのは223カ所。申請数は約1000件です。たまたま歩いた先でみつけた「いけるんじゃないか」と思ったものを片っ端からやってます。勤務先の一帯はそうやって出来上がりました。近くにポータル職人がいて協力して築きました。
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