野外4つのスクリーンで映画を同時上映 日本初の“映画フェス”「夜空と交差する森の映画祭」へ行ってきた(2/3 ページ)

» 2014年10月27日 10時45分 公開
[黒木 貴啓,ねとらぼ]

木々、虫の声――自然が映画の新しい演出に

 そもそも野外で映画を観るのが初めてだった筆者。家や劇場とどう違うのだろうと気になり、一度観たことある「ハンガー・ゲーム」(監督:ゲイリー・ロス)をMAIN STAGEで鑑賞してみた。16歳の少年・少女24人が山林で殺し合いのゲームを強いられるという残酷なサバイバルアクションだ。


画像 「ハンガー・ゲーム」が上映されたMAIN STAGE

 劇中のゲームに最初の夜が訪れ、主人公の少女が敵から襲われないよう木の枝へ登り始めた。座った位置からはスクリーン以外に本物の木が何本も視界に入る。スクリーンも夜、森の映画祭も夜11時ごろ、スピーカーから虫の声、こっち側でもずっとコオロギといった秋の虫の音が響く。枝の上で息を潜める少女とこちらの境界線が一気にぼやけたようだった。


画像 RIVER SIDE STAGEでは川の流れる音が絶え間ない

 「映画に自然の風景が出てくると、野外で観ている分リアルに感じます」――RIVER SIDE STAGEで会った男性・女性(どちらも23歳)の感想だ。

「例えば今観た『HOME』(監督:佐々木洸介)では、主人公の女の子とお父さんが思い出の高台から街を見渡すラストシーン。女の子が外で主人公が寒そうにしている様子が、この会場で風を感じているとより心に響いてきました。映画って必ずといっていいほど外でのシーンが出てくるので、野外映画ではその都度臨場感を楽しめると思います」


画像 RIVER SIDE STAGEは座る場所が斜面なので、FOREST STAGEと同じく寝転んで観るスタイルが人気だった

 確かに野外のシーンは外の雰囲気と相まっていちいち良かったなぁと共感。作品には本来入っていない会場の風景や音が、劇中の自然とたまたま結びついて、より気分を盛り上げてくれる。野外映画の大きな醍醐味を知った。



フェス形式がもたらすもの

 複数スクリーンで同時上映という“フェス形式”については、参加者各々がお気に入りの鑑賞スタイルを選んで映画を楽しんでいるようだった。

 FOREST STAGEはスクリーンが前に傾いていて、シートに寝そべることでちょうどいい角度で映像が観られる。横になっていた20代前半の男女3人組は、「寝転びながら心地いい風を感じて、みんなでお酒を飲んで、川や虫の音と一緒に映画の音を聴く。この環境が気持ちいいです。映画館じゃなかなかむり」と微笑んでいた。眠たくなる午前2時以降は大人気。1枚のシートに50人くらいが寝転んでくつろいでいた。


画像 お客さんゴロゴロしまくりのFOREST STAGE

画像 ハンモックが何個もあるのもくつろぎ空間として最高だった

 いつもととことん違う雰囲気で映画を楽しみたいという人はTHE ROCK STAGEに集まっていた。コの字のようにくぼんだ岩畳にスクリーンを設置。「洞窟から天井だけとっぱらったような、岩に囲われた空間で観るのは新鮮味がありました」(21歳/女性)「みんなが自然と岩の段差に順に並んでいる雰囲気がおもしろいです」(23歳/女性)と、それぞれ長瀞ならではの環境を味わっていた様子。


画像 岩畳のTHE ROCK STAGE。ステージ名は閉鎖的な刑務所島を舞台とする映画「THE ROCK」から名付けられたとのこと

 隣のステージの音が漏れてくるのもフェス形式ならではだ。FOREST STAGEで上映の合間の休憩時間、MAIN STAGEの「時をかける少女」(監督:谷口正晃)の音が耳に飛び込む。主演の仲里依紗さんの叫び声や光線銃のような効果音に、こんなに賑やかな映画とは知らなかったので今度レンタルしてみようかな、と興味がわいてきた。こうした映画との出会い方って新鮮。


画像 道脇のイルミネーションが、ステージ移動を楽しくさせる

 このほか、グロテスクなシーンを観て参加客同士が身を寄せ合う姿、座っている草土の感触、フードコートからただようおいしそうな香り――野外で、複数のスクリーンでというフェス形式がもたらす五感の刺激は実に多様だった。これらが目の前の映画と結びついて、この時この場限りの特別な鑑賞体験として記憶に焼きつく。そんな瞬間にあふれていたのがこの映画フェスであり、「夜空と交差する森の映画祭」だった。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  2. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  3. /nl/articles/2412/12/news089.jpg フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. /nl/articles/2412/14/news081.jpg 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  5. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/14/news038.jpg 「釣れすぎ注意」 消波ブロック際に“カツオを巻いた仕掛け”を落としたら…… 驚きの結果に「これはオモロい!!」「こんなにとは」
  8. /nl/articles/2412/14/news063.jpg 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  9. /nl/articles/2412/14/news002.jpg 【今日の難読漢字】「男衾」←何と読む?
  10. /nl/articles/2412/15/news024.jpg おじいちゃん「昔はモテた」→孫は信じていなかったが…… “今では想像できない”当時の姿が140万再生「映画スターのよう」【米】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」